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松下問童子,
言師採藥去。
只在此山中,
雲深不知處。
隱者を尋ねて 遇はず
松下 童子に 問へば,
言ふ: 「師は 藥を採り去る」と。
只(た)だ 此(こ)の山中に 在らんも,
雲 深くして 處を知らず。
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◎ 私感註釈
※賈島:中唐の詩人。779年(大暦十四年)〜843年(會昌三年)。字は浪仙。范陽の人。初め、僧侶で無本と号し、後、韓愈に認められて(「推敲」)還俗、仕官した。五言律詩にすぐれる。
『古文眞寶』
※尋隱者不遇:隠者を訪ねたが、遇えなかった。『古文眞寶』は『訪道者不遇』とする。(写真:右) ・遇:〔ぐう;yu4●〕会う。であう。思いがけなく逢う。
※松下問童子:松の木の下で、召使の少年に問いかけたが。 ・松下:松の木の下。 ・問:問いかける。 ・童子:子供。ここでは、召使の少年のことになる。
※言師採藥去:(童子が)言うことには、「先生は薬を採りに行かれた」とのことである。 ・言:言葉で言い表す。声に出して物を言う。以下は童子の言の内容になる。 ・師:先生。導く人。ここでは、隠者のことになる。 ・採藥:生薬を採取する。薬草を採る。 ・去:行く。「採藥去」の表現は、「薬を採りに行く」。
※只在此山中:ただ、この山の中にいることだけは(分かるが)。 ・只在:ただ、…にだけいる(が)。 ・此:この。 ・山中:山中。
※雲深不知處:雲が深く立ち籠めているので、どこで留まっているのかわからない。 ・雲深:雲は隠逸生活を暗示する。東晉・陶淵明『和郭主簿』「藹藹堂前林,中夏貯清陰。凱風因時來,回飆開我襟。息交遊閑業,臥起弄書琴。園蔬有餘滋,舊穀猶儲今。營己良有極,過足非所欽。舂作美酒,酒熟吾自斟。弱子戲我側,學語未成音。此事真復樂,聊用忘華簪。遙遙望白白雲,懷古一何深。」 や、王維の『送別』「下馬飮君酒,問君何所之。君言不得意,歸臥南山陲。但去莫復問,白雲無盡時。」 や蘇の『汾上驚秋』「北風吹白雲, 萬里渡河汾。心緒逢搖落,秋聲不可聞。」 王之煥に「黄河遠上白雲間,一片孤城萬仞山。羌笛何須怨楊柳,春風不度玉門關。」や、晩唐・杜牧の『山行』「遠上寒山石徑斜,白雲生處有人家。停車坐愛楓林晩,霜葉紅於二月花。」、漢の武帝・劉徹の樂府『秋風辭』「秋風起兮白雲飛,草木黄落兮雁南歸。蘭有秀兮菊有芳,懷佳人兮不能忘。汎樓船兮濟汾河,中流兮揚素波。簫鼓鳴兮發櫂歌,歡樂極兮哀情多。少壯幾時兮奈老何。」 晉の陶淵明の『歸去來兮辭』の「歸去來兮,田園將蕪胡不歸。既自以心爲形役,奚惆悵而獨悲。悟已往之不諫,知來者之可追。實迷途其未遠,覺今是而昨非。舟遙遙以輕,風飄飄而吹衣。問征夫以前路,恨晨光之熹微。乃瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄傲,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以流憩,時矯首而游觀。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。歸去來兮,請息交以絶遊。世與我以相遺,復駕言兮焉求。ス親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以春及,將有事於西疇。或命巾車,或棹孤舟。既窈窕以尋壑,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。羨萬物之得時,感吾生之行休。已矣乎,寓形宇内復幾時。曷不委心任去留,胡爲遑遑欲何之。富貴非吾願,帝ク不可期。懷良辰以孤往,或植杖而耘。登東皋以舒嘯,臨C流而賦詩。聊乘化以歸盡,樂夫天命復奚疑。」 がある。
など多く俗塵を超越したものとして詠まれる。 ・不知:分からない。 ・處:居場所。ところ。普通は、左記の通りの意(去声での意)になるが、ここでは、韻脚となり、上声の意で使われているので、「いる、居る、とまっている。住む」になる。
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◎ 構成について
韻式は「(a)aa」。韻脚は「(子)去處」で、平水韻上声六語(處去)。「子」は上聲四紙。次の平仄はこの作品のもの。
○●●○●,(韻)
○○●●●。(韻)
●●●○○,
○○●○●。(韻)
2005.8.23 8.24 2009.4. 2版 |
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