玄冬十一月 |
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良寛 | ||
玄冬十一月, 雨雪正霏霏。 千山同一色, 萬徑人行稀。 昔遊總作夢, 草門深掩扉。 終夜燒榾柮, 靜讀古人詩。 |
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玄冬十一月
玄冬 十一月,
雨雪 正に霏霏たり。
千山 同一の色,
萬徑 人の行くこと稀なり。
昔遊 總て 夢と作り,
草門 深く 扉を掩ふ。
終夜 榾柮を 燒き,
靜かに 古人の詩を讀む。
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◎ 私感註釈
※玄冬十一月:冬の旧暦十一月(今の十二月後半)。 ・玄冬:冬の異称。冬は五行説で黒(玄)に該るため。蛇足になるが、五行説と季節との関係は、青春、朱夏(赤夏)、白秋、玄冬(K冬)。 ・十一月:旧暦。新暦の十二月後半。冬。
※雨雪正霏霏:みぞれがちょうどしとしとと降っている。 ・雨雪:〔うせつ;yu3xue3●●〕みぞれ。 ・正:ちょうど。 ・霏霏:〔ひひ;fei1fei1○○〕雨や雪などが、甚だしく降るさま。 雨などがはらはらと降るさま。霧雨がしとしとと降るさま。
※千山同一色:多くの山々は、同じ(白い)色となって。 ・千山:多くの山々。柳宗元『江雪』「千山鳥飛絶,萬徑人蹤滅。孤舟簑笠翁,獨釣寒江雪。」とある。
※萬徑人行稀:あらゆる小道は、人の行くことが稀になった。 ・萬徑:あらゆる小道。前出・柳宗元『江雪』の紫字参照。 ・人行:人の通行すること。白居易の『長恨歌』に「峨嵋山下少人行,旌旗無光日色薄。蜀江水碧蜀山,聖主朝朝暮暮情。行宮見月傷心色,夜雨聞鈴腸斷聲。」 とある。 ・稀:まれである。
※昔遊總作夢:(若かった)昔に遊歴したことは、すべて夢のように(過去のこと)となり。 ・昔遊:(若かった)昔に遊歴したこと。 ・總:すべて。総じて。 ・作夢:ここでは「夢となる」こと。また、夢を見る。ここでは、前者の意として使う。
※草門深掩扉:粗末な庵の門。自分の家の門をしっかりと閉ざして(奥深くに)いる。 ・草門:粗末な家の門。自分の家の門をいう。 ・掩扉:門を閉ざす。門をおおう。
※終夜燒榾柮:一晩中、(たき火用の)木っ端(こっぱ)を燃やして。 ・終夜:一晩中。 ・燒:燃やす。 ・榾柮:〔こつとつ;gu3duo4●●〕(たき火用の)木っ端(こっぱ)。ほた。ほだ。
※靜讀古人詩:昔のすぐれた人の詩を静かに読み味わっている。 ・古人:昔の人。いにしえの人。また、昔のすぐれた人。
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◎ 構成について
韻式は「AAAA」。韻脚は「霏稀扉詩」で、平水韻上平四支。次の平仄はこの作品のもの。平仄には、配慮していない。
●○●●●,
●●●○○。(韻)
○○○●●,
●●○○○。(韻)
●○●●●,
●○○●○。(韻)
○●○●●,
●●●○○。(韻)
平成20.1.29 2. 3 2. 4 |
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