日本橋作 | ||
深草元政 |
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日本橋邊日本秋, 更無一事掛心頭。 今宵新見江城月, 影滿扶桑六十州。 |
日本橋邊 日本の秋,
更に一事 の心頭 に掛 かる 無し。
今宵 新 たに見る江城 の月,
影は滿 つ扶桑 の 六十州。
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◎ 私感註釈
※深草元政:※深草元政:(釈)元政。江戸時代初期の僧侶。元和九年(1623年)〜寛文八年(1668年)。京都深草に瑞光寺を開山して、深草の元政、艸山和尚と称される。俗姓は石井。通称は吉兵衛。幼名は源八郎。
※日本橋作:日本橋での詩作。 *万治二年(1659年)の九月に母と身延山に詣で、その後に江戸へ出た時の作。或いは、寛永十二年(1635年)に江戸へ出た時の作か。
※日本橋辺日本秋:(日本の中心のお江戸の)日本橋あたりの日本(第一)の秋で。
※更無一事掛心頭:何ら心にかかる事柄などは、無い。 ・更無:なおさら…ない。全然…ない。 ・更:さらに。いっそう。そのうえ。なお。 ・心頭:こころ。南唐後主・李Uの『烏夜啼』に「無言獨上西樓,月如鈎。寂寞梧桐深院鎖C秋。 剪不斷,理還亂,是離愁。別是一般滋味在心頭。」とある。
※今宵新見江城月:今宵、新たに江戸の街の月影を見るが。 ・江城:江戸の街。本来の意は、長江の川沿いの都市。
:影満扶桑六十州:月影は日本全国・六十余州を(隈無く)照らし出している(ことだろう)。 ・扶桑:日本の異称。元は、東方海上にある扶桑木と謂う巨木を指し転じて、扶桑国・日本の意。 ・六十州:日本全国の称で、六十余りの国(=州)の意。畿内・七道の六十六国と壱岐・対馬の二国を合わせた国の数。蛇足になるが、中国は四百余州と称する。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「秋頭州」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○●●●○○。(韻)
○○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
平成23.11.9 |
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