梁田蛻巌秋タ泛琵琶湖　日本漢詩選詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩


秋タ泛琵琶湖

	梁田蛻巖
湖北湖南暮色濃，停篙回首問孤松。滄波兩岸秋風起，吹送叡山雲裏鐘。

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秋タ(しうせき) 琵琶湖に泛(うか)ぶ　

湖北　湖南　　暮色(ぼしょく) 濃(こ)く，
篙(さを)を停(とど)め　回首(くゎいしゅ)して　　孤松(こしょう)を問ふ。
滄波(さうは )の兩岸に　　秋風(しうふう) 起こり，
吹き送る　　叡山(えいざん)　雲裏(うんり )の鐘を。

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◎　私感註釈

※梁田蛻巌：江戸中期の儒学者・漢詩人。寛文十二年（１６７２年）～寶暦七年（１７５７年）。江戸の人。名は邦美。字は景鸞。通称は新六。号して蛻巌。山崎闇斎に儒学を学び、新井白石・室鳩巣・三宅観瀾らと交わった。加納藩・明石藩に仕えた。

※秋タ泛琵琶湖：秋のタ暮れに、琵琶湖で舟に乗った。　・泛：〔はん；fan4●〕うかぶ。うかびただよう。　・琵琶湖：滋賀県の中央部を占める日本最大の湖。沿岸の景勝は、近江八景（「唐崎の夜雨」「三井の晩鐘」…）で有名。

※湖北湖南暮色濃：湖北の方や湖南の方は、暮色が濃くなって（きて）。

※停篙回首問孤松：（舟を動かす）棹（さお）を、（一時的に）とめ（させ）て、ふり返って「（唐崎の）一本松」は、（どこだと）尋ねた。　・停：（一時的に）とめる。　・篙：〔かう；gao1○〕さお。ふなざお。　・回首：ふり返る。　・孤松：一本松。ここでは、「唐崎の松」のことになる。近江八景の一の「唐崎の夜雨」の地の唐崎の一本松。霊松は、舒明天皇五年（６３３年）の時より、現在は三代目。滋賀県大津市唐崎の唐崎神社の琵琶湖岸にある。

※滄波両岸秋風起：青い波が、秋風のために両岸に起こって。　・滄波：青い波。

※吹送叡山雲裏鐘：（その秋風に）乗って、比叡山の方の雲の中から鐘（の音が響いて）来た。　・叡山：比叡山のこと。琵琶湖の西にある山（海抜８４８メートル）。天台宗・延暦寺がある。　・雲裏：雲の中。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡＡ」。韻脚は「濃松鐘」で、平水韻上平二冬。この作品の平仄は、次の通り。

○●○○●●○，（韻）
○○○●●○○。（韻）
○○●●○○●，
○●●○○●○。（韻）