服部南郭東都四時歌　日本漢詩選詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩


東都四時歌

	服部南郭
花下誰家妓，東山醉未歸。落花不相待，偏傍紅顏飛。

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東都(とうと )四時(しいじ )の歌　

花下(くゎか)　　誰(た)が家の妓(ぎ)ぞ，
東山(とうざん)　　醉(ゑ)ひて未(いま)だ歸らず。
落花　　相(あ)ひ待たず，
偏(ひと)へに　　紅顏に傍(そ)ひて飛ぶ。

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◎　私感註釈

※服部南郭：江戸中期の古文辞学派の儒者、詩人。天和三年（１６８３年）～寶暦九年（１７５９年）。京都の人。名は元喬。字は子遷。南郭は号。柳沢吉保に仕え、荻生徂徠に師事して古文辞を学んだ。

※東都四時歌：江戸の四季の歌。この詩は、その春を詠ったもの。李白の『東山吟』をベースにして、世の無常、はかなさを詠う。　・東都：江戸。また、洛陽や開封など。ここは、前者の意。　・四時：〔しいじ；si4shi2●○〕四季。春・夏・秋・冬の四つの季節。

※花下誰家妓：　・誰家：どこ。だれ。何人(なんびと)。　・妓：接待の女性。うたいめ。盛唐・李白の『東山吟』に「攜妓東土山，悵然悲謝安。我妓今朝如花月，他妓古墳荒草寒。白雞夢後三百歳，灑酒澆君同所歡。酣來自作青海舞，秋風吹落紫綺冠。彼亦一時，此亦一時，浩浩洪流之詠何必奇。」とある。

※東山酔未帰：　・東山：東叡山寛永寺のことで、上野を指す。前出・李白の『東山吟』に「攜妓東土山，悵然悲謝安。我妓今朝如花月，他妓古墳荒草寒。」とある。　・酔未帰：酔っぱらって、まだ帰らない、の意。

※落花不相待：　・不相待：待ってくれない、の意。

※偏傍紅顔飛：　・偏：ひとえに。　・傍：〔はう（ばう）；bang4、bang1●〕よりそう。動詞＝●。なお、かたわら〔〔はう（ばう）；pang2○〕　・紅顔：若者。少年少女。美少年。

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◎　構成について

韻式は、「ＡＡ」。韻脚は「歸飛」で、平水韻上平五微。この作品の平仄は、次の通り。

○●○○●，
○○●●○。（韻）
●○●○●，
●●○○○。（韻）