竹 | ||
藤森天山 |
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幽徑千竿竹, 相依積雪時。 低頭君莫笑, 高節不曾移。 |
竹
幽徑 千竿 の竹,
相 ひ依 る 積雪の時。
低頭と 君 笑ふ莫 かれ,
高節は曾 て移さず。
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◎ 私感註釈
※藤森天山:=藤森弘庵。幕末の小野藩士、土浦藩士。 寛政十一年(1799年)〜文久二年(1862年)。字は淳風。天山と号した。江戸に生まれる。藩主・一柳末周に時勢について建言するが容れられず、致仕する。江戸で私塾を開く。嘉永六年(1853年)ペリー来航に際して『海防備論』を著し、また『芻言』を執筆して水戸藩の徳川斉昭に建白。安政四年(1857年)上洛して梁川星巌や頼三樹三郎、梅田雲浜、月性らと交流して帰府。勤皇活動を行うも、安政五年(1858年)安政の大獄に連座して追放刑となる。著書には民政書や海防書をはじめ数多くを残し、唐宋文や漢詩に優れた才能を発揮した。
※竹:たけ。 *一本で真っ直ぐに筋が通っており、腹に含むところが無い等の、我が国の竹に対する見方を踏まえて題としている。
※幽径千竿竹:静かな小道の千本の竹の茂みでは。 ・幽径:〔いうけい;you1jing4○●〕静かな小道。奥深い小道。≒竹逕(ちっけい;ちくけい):竹藪の中の小道。 ・竿:〔かん;gan1○〕さお。なお、「稈」〔かん;gan3●〕は、(竹や稲の)くき。 ・千竿:千本のくきの意。「稈」字を使わないで「竿」字を使ったのは、この句の第四字目は○(平字)を使うべきところのため。 ・千竿竹:竹の茂み、竹藪、の意として使う。
※相依積雪時:(竹は)積雪の冬の時期には、寄り合って(耐えて)いる。 ・相依:寄り合う。もたれ合う。
※低頭君莫笑:「(竹は)頭を下げて、卑賎なさまだ」と、あなたは笑わないでほしい。 ・低頭:頭を下げる。 ・莫:…なかれ。…をするな。禁止の表現。
※高節不曽移:(竹の)高い節操は、今までに変わったことがない。 ・高節:高い節操。節操を守る立派な行い。 ・不曽-:〔かつて…ず;bu4ceng2…●○〕今までに…したことがない。 ・移:うつる。変わる。変化する。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「時移」で、平水韻上平四支。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●,
○○●●○。(韻)
○○○●●,
○●●○○。(韻)
令和3.10.16 |
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