沈園二首其一
　　　　　　　　　　　　
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　南宋　陸游

城上斜陽畫角哀， 沈園非復舊池臺。 傷心橋下春波�香C 曾是驚鴻照影來。

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　　　　　　　　　沈園しんゑん二首 其の一
　　　　　　　　　　　
城上じゃうじゃうの斜陽　　畫角ぐゎかく 哀かなし，
沈園しんゑん　復また 舊きう池臺 ち だいに 非ず。
傷心す　　橋下けう か 　春波しゅん ぱ の�香C
曾かつて是これ　驚鴻きゃうこうの　　影を照うつして來きたりしを。

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◎私感訳注：

※沈園二首其一：沈園（しんえん）（で前妻との偶然の出逢いから四十年が経（た）ち、前妻も亡くなり、我が身も衰えたが、その折の慕情は今なお続いているという愛の歌）。　*陸游は『春游』「沈家園裏花如錦，半是當年識放翁。也信美人終作土，不堪幽夢太怱怱。」でも、当時のことを思い起こしている。　・沈園：山陰の会稽（現・浙江省紹興市）にある沈（しん）氏の庭園。前妻と偶然に出逢ったところ。青年陸游の有名な逸話だが、彼は妻唐琬を愛して睦まじく過ごしていたが、妻・唐琬と、しゅうとめに当たる陸游の母との折り合いが悪く、妻と別離させられた。その別れた妻とある日、偶然に、この詩で詠んでいる沈園で出会った。別れた後、激情已むことなく、沈園の壁に詞の『釵頭鳳』「紅酥手，黄縢酒，滿城春色宮牆柳。東風惡，歡情薄。一懷愁緒，幾年離索。錯，錯，錯。　　　春如舊，人空痩，涙痕紅鮫透。桃花落，閑池閣，山盟雖在，錦書難托，莫，莫，莫！」を書いたという因縁の場所。現在は陸游関聯の観光名所となっている。蛇足になるが、姓としての「沈」は〔しん；Shen3●〕であり、動詞「しずむ」は〔ちん；chen2○〕となる。

※城上斜陽畫角哀：城郭の上で、夕陽の中、（いつも通りの）夕の時を告げる角笛のもの悲しげ（な音色が聞こえてくるが）。　・城上：城市の方から。城郭の上。ここは、後者の意。前者の用例に晩唐・温庭筠の『更漏子』に「背江樓、 臨海月。

嗚咽。 堤柳動、 島煙昏。 兩行征雁分。　　　京口路。歸帆渡。正是芳菲欲度。銀燭盡、玉繩低。一聲村落鷄。」がある。後者の用例に唐・柳宗元の『登柳州城樓寄漳汀封連四州』「

高樓接大荒，海天愁思正茫茫。 驚風亂颭芙蓉水，密雨邪侵薛茘牆。嶺樹重遮千里目，江流曲似九迴腸。共來百越文身地，猶是音書滯一�ｸ。」がある。 　・斜陽：西に傾いた太陽。夕日。　・畫角：美しく彩った角笛。朝夕の時を告げる。北宋・蘇軾の『淮上早發』に「淡月

，小風吹水碧鱗開。此生定向江湖老，默數淮中十往來。」とあり、阮閲の『眼兒媚』に「樓上黄昏杏花寒，斜月小闌干。一雙燕子，兩行征雁，

聲殘。綺窗人在東風裏，灑涙對春閑。也應似舊，盈盈秋水，淡淡春山。」とあり、南宋・張元幹の『賀新�ｶ』送胡邦衡待制赴新州「夢繞�~州路。悵秋風、連營

，故宮離黍。底事崑崙傾砥柱，九地黄流亂注。聚萬落、千村狐兔。天意從來高難問，況人情、老易悲難訴。更南浦，送君去。　　　涼生岸柳催殘暑。耿斜河、疏星淡月，斷雲微度。萬里江山知何處，囘首對牀夜語。雁不到、書成誰與？目盡��天懷今古，肯兒曹、恩怨相爾汝。舉大白，聽、金縷。」とある。

※沈園非復舊池臺：沈園（しんえん）は、（既に面影は移ろい）もはや昔の池の畔の高台ではなくなっている。　・非復-：（以前の時とは）まったく異なる。南朝・梁・沈約の『別范安成』に「生平少年日，分手易前期。及爾同衰暮，

別離時。勿言一樽酒，明日難重持。夢中不識路，何以慰相思。」とある。　・復：また。ここでの用法は、リズムを整えるために使われている。東晋・陶淵明の作品にもこの用例が多い。　・舊：昔の。　・池臺：池の畔の高台。池の中の高台。

※傷心橋下春波�香F橋の下を流れる春の川の緑色に澄んだ流れ…。ここは、聯「傷心橋下春波�香C曾是驚鴻照影來」でひとまとまり。　・傷心：心をいためること。悲しく思うこと。晩唐/前蜀・韋莊『浣溪沙』「夜夜相思更漏殘。傷心明月凭欄干。想君思我錦衾寒。咫尺畫堂深似海，憶來唯把舊書看。幾時攜手入長安。」、李白の『菩薩蠻』「平林漠漠煙如織，寒山一帶傷心碧。暝色入高樓，有人樓上愁。　　　玉階空佇立，宿鳥歸飛急，何處是歸程，長亭更短亭。」、両宋・李�C照の『聲聲慢』「尋尋覓覓，冷冷�C�C，凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候，最難將息。三杯兩盞淡酒，怎敵他、曉來風急。雁過也，正傷心，却是舊時相識。　　　滿地黄花堆積，憔悴損，如今有誰堪摘。守着窗兒，獨自怎生得�K。梧桐更兼細雨，到黄昏、點點滴滴。這次第，怎一個、愁字了得。」、後世、清末・秋瑾の『日人石井君索和即用原韻』「漫云女子不英雄，萬里乘風獨向東。詩思一帆海空闊，夢魂三島月玲瓏。銅駝已陷悲囘首，汗馬終慚未有功。如許傷心家國恨，那堪客裏度春風！」、南唐・馮延巳の『三臺令』「南浦！南浦！翠鬢離人何處？當時攜手高樓，依舊樓前水流。流水！流水！中有

雙涙。」 等と、よく使われている。　・�香F緑色に澄む。動詞。

※曾是驚鴻照影來：（春の川の澄んだ流れ）は、かつて、しなやかな美人（＝前妻・唐琬）の姿を映し出した（ことを思い出して悲しくなってきた）。（「橋下春波�香vがこの句へ続く）。　 ・曾是：かつて。以前に。南宋・陸游の『謝池春』に「壯歳從戎，

氣呑殘虜。陣雲高、狼烽夜舉。朱顏��鬢，擁雕戈西戍。笑儒冠、自來多誤。　　　功名夢斷，卻泛扁舟呉楚。漫悲歌、傷懷弔古。煙波無際，望秦關何處。歎流年、又成虚度。」　・曾：〔そう；ceng2○〕かつて（…たことがある）。以前に。　・驚鴻：〔きゃうこうjing1hong2○○〕おどろいて飛び立つおおとり。転じて、美人の体の軽くしなやかなさま。また、美人。ここは、後者の意。　・照影來：姿を映し出してきた。　・-來：（過去の経験）助辞で、（−過來）…てきたことがある。*過去の経験を表す。現代語の「−過」に近い。また、（疑問：「曾…來」）…だろう。（完了）…た。『漢語大詞典』などより。ここは、前者の意。






◎　構成について

２０１０．６．１２ 　　　　　６．１３ 　（６．１４門扉） 　　　　　６．１５ 　　　　　６．１６完 　　　　　７．２１補LQ ２０１２．７．２０

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