huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye
 
別范安成

                        宋・(南)斉・梁 沈約


生平少年日,
分手易前期。
及爾同衰暮,
非復別離時。
勿言一樽酒,
明日難重持。
夢中不識路,
何以慰相思。





*******************
               范安成(はんあんせい)と別る

生平(せいへい)  少年の日,
手を分かつも  (あらかじ)め期し(やす)かりき。
(なんぢ)と  衰暮(すゐ ぼ )を同じうす,
()た  別離の時には非ず。
言ふ(なか)れ  一樽(いっそん)の酒と,
明日(みゃうにち)  (かさ)ねて持つこと(かた)し。
夢中  路を()らざれば,
何を(もっ)てか  相思(さう し )(なぐさ)めん。


             ******************

◎ 私感訳註:

※沈約:〔しんやく;Shen3 Yue1 姓としての「沈」は〔しん;Shen3●〕
(蛇足になるが、動詞「しずむ」は〔ちん;chen2○〕)〕(南北朝時代の)南朝・梁の詩人、文学者、歴史家。441年〜513年。呉興郡・武康(現・浙江省徳清)の人。字は休文。早く父親を失って、貧困の中で刻苦勉励、群書に通暁した。宋・斉に仕えたのち、梁の武帝に仕えた。詩文をよくし、声律を追求した永明体の創始者の一人とされ、『四声譜』がある。

※別范安成:范安成(=安成の内史である范岫)と別れる。 *作者・沈約が范岫のために送別の宴を張り、送別の思いを詩に託した。老齢となった者同士の、今生(こんじょう)の別れとなる、別離の時の感慨。『昭明文選』にある。 ・范安成:安成の内史である范岫(はんFan4 しう(現しゅう)Xiu4)のこと。名は岫。字は懋賓(ぼう(ばう?)ひんMao4bin1)。安成の内史であったので范安成と呼ばれる。作者の親友。

※生平少年日:生まれてこのかた、若い時には。 ・生平:ふだん。平生。平常。また、一生。生涯。終生。 ・少年日:若い時。

※分手易前期:(若い時期には)別れても、たやすく再会をしていた。 ・分手:別れる。手を分かつ。 ・易:たやすく。 ・前期:あらかじめ決めた再会の時期。前もって再会の日を約して会う。(例えば「二年後の三月三日の正午に…で会おう」と日を約すること)。あらかじめ期する。あらかじめ定めた期限。 ・易前期:容易に再会すること。後世、晩唐・李商隱の『無題』に「相見時難別亦難,東風無力百花殘。春蠶到死絲方盡,蝋炬成灰涙始乾。曉鏡但愁雲鬢改,夜吟應覺月光寒。蓬山此去無多路,鳥殷勤爲探看。」と使い、南唐後主・李Uは『浪淘沙』で「簾外雨潺潺,春意闌珊。羅衾不耐五更寒。夢裏不知身是客,一餉貪歡。   獨自莫憑欄,無限江山。
別時容易見時難。流水落花春去也,天上人間。」と使う。

※及爾同衰暮:おまえも(わたしと)ともに年をとって衰えた(今となっては)。 ・及爾:なんじと。 ・及:と。ともに。および。 ・爾:なんじ(なんぢ)。おまえ。 ・同:同じくする。動詞。 ・衰暮:〔すゐぼ;shuai1mu4○●〕年とって衰える。年とって衰える時。

※非復別離時:(以前の若い時期の)別離の時とは、まったく異なってくる。=次の再会の時期は、果たして確実なものかどうか。 ・非復-:(以前の時とは)まったく異なる。 ・復:また。ここでの用法は、リズムを整えるために使われている。東晋・陶淵明の作品にもこの用例が多い。南宋・陸游の『沈園二首』其一に「城上斜陽畫角哀,沈園
非復舊池臺。傷心橋下春波香C曾是驚鴻照影來。」とある。

※勿言一樽酒:お銚子一本(だけ)の酒と言わないで(ほしい)。 ・勿言-:(…と)言うなかれ。「言うなかれ」は「一樽酒」にかかる。 ・勿:禁止の辞。動詞の前に附く。 ・一樽酒:一杯(だけ)の酒。徳利(お銚子)一本だけの分量の酒。 ・樽:〔そん;zun1○〕酒器。徳利(お銚子)。たる。=尊、吹B

※明日難重持:明日(=今後)、再び(杯を)持つ(機会を得る)ことは難しい(のだ)。=今日が、二人一緒に酒を飲む最後の機会なのだ。 *読み下しは「難重持」:〔重ねて持つこと難し〕、 「重難持」:〔重ねて持ち難し〕。 ・難:難しい。…しにくい。動詞だが助動詞的に用いる。 ・重持:かさねてもう一度持つ意。 ・持:直接的には酒杯を持つことであり、(共に酒を酌み交わす杯を持つ機会を)持つこと。

※夢中不識路:夢の中で、道が分からないために(お互いが会うことができないので)。 *張敏と高惠の故事に拠る。張敏と高惠とは、莫逆の友であったが、離れており、会うのが難しかった。そこで、張敏は夢の中で高恵の許を尋ねて行こうとするが、毎回、道に迷って途中で引き返してしまった。 ・不識:(道や場所などを)知らない。見分けがつかない。

※何以慰相思:何をもって、相手を慰めようか。(夢では会えないのだから、今、この酒を飲み干して、人生最後の歓びとしよう。) ・何以:何をもって。なんで。何故(なにゆえ)。 ・慰:なぐさめる。 ・相思:ここでは、作者・沈約と范安成(=范岫)との男同士の思い合う情。「相-」は、動作が対象に及んでくる時に使う。「…てくる」「…ていく」の意。「相互に」の意味はここではない。白居易の『勸酒』「昨與美人對尊酒,朱顏如花腰似柳。今與美人傾一杯,秋風颯颯頭上來。年光似水向東去,兩鬢不禁白日催。東鄰起樓高百尺,題照日光。」 李白に『把酒問月』「天有月來幾時,我今停杯一問之。人攀明月不可得,月行卻與人。皎如飛鏡臨丹闕,拷喧ナ盡C輝發。但見宵從海上來,寧知曉向雲陝刀B白兔搗藥秋復春,娥孤棲與誰鄰。今人不見古時月,今月曾經照古人。古人今人若流水,共看明月皆如此。唯願當歌對酒時,月光長照金樽裏。」や、陶潜の『飮酒二十首』其一「衰榮無定在,彼此更共之。邵生瓜田中,寧似東陵時。寒暑有代謝,人道毎如茲。達人解其會,逝將不復疑。忽與一觴酒,日夕歡。」 、陶淵明の『雜詩十二首』其七の「日月不肯遲,四時催迫。寒風拂枯條,落葉掩長陌。弱質與運頽,玄鬢早已白。素標插人頭,前途漸就窄。家爲逆旅舍,我如當去客。去去欲何之,南山有舊宅。」や張説の『蜀道後期』「客心爭日月,來往預期程。秋風不,先至洛陽城。」杜甫の『州歌十絶句』其五に「西一萬家,江北江南春冬花。背飛鶴子遺瓊蕊,趁鳧雛入蒋牙。」とある。李U『柳枝詞』「風情漸老見春羞,到處消魂感舊遊。多謝長條似,強垂煙穗拂人頭。」、唐〜・韋莊の『江上別李秀才』に「前年相送灞陵春,今日天涯各避秦。莫向尊前惜沈醉,與君倶是異ク人。」とあり、范仲淹の『蘇幕遮』「碧雲天,黄葉地,秋色連波,波上寒煙翠。山映斜陽天接水,芳草無情,更在斜陽外。   黯ク魂,追旅思,夜夜除非,好夢留人睡。明月樓高休獨倚,酒入愁腸,化作思涙。」とあり、唐末・韋莊の『浣溪沙』「夜夜思更漏殘 など、下図のように一方の動作がもう一方の対象に及んでいく時に使われている。
B
もっとも、李白の『古風』「龍虎相啖食,兵戈逮狂秦」、『遠別離』の「九疑聯綿相似,重瞳孤墳竟何是。」や『長相思』「相思,在長安」や王維の「入鳥不相亂,見獸相親。」などは、下図のような相互の働きがある。
B
勿論、これらとは別に言葉のリズムを整える働きのために使っていることも詩では重要な要素に挙げられる。





◎ 構成について

韻式は「AAAA」。韻脚は「期時持思」で、平水韻上平四支。次の平仄はこの作品のもの。

○○●○●,
●●●○○。(韻)
●●○○●,
○●●○○。(韻)
●○●○●,
○●○○○。(韻)
●○●●●,
○●●○○。(韻)

2012.7.19
     7.20
     7.21
     7.22



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