ゆっくりと空がうす明かりにつつまれてきた。
星々はその白い幕の向こう側に消えていき、地平線が現れ草木も姿をみせはじめた。
星の瞬き以外には何も見えない、たよれるものは聴覚だけの幻想の世界に、少しづつ視覚の世界が広がっていく。
今まで聞こえていた暗闇の中を通りぬける風の音は消え、生き物達のザワメキへとうつり。遥か向こうの空と大地の接線がますます明るく、その一点が破れ、眩しいばかりの光りが飛び込んできた。
白く霞み、ゆっくりとしていた空気がこの瞬間、光りと影のあるがままの世界に変わった。
青空の中に小さな雲がところどころに浮かんでいて、その青があたり一面に生い茂る植物の緑の葉をいっそうみずみずしく輝かせている。葉脈の上には冬眠から目覚めたばかりの蟻が触覚の手入れをはじめた。
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