アニメ遊館----ダシモノ目次
「Both Sides world」
「オトコサイセイ」「セレニーノ輪廻転生」「グラマラス.1」「 グラマラス.2」「セレニー」
「サイクルセレニ−」「ハートト翼男」「飛行機」「ガラスピエロ」「ミラーマン」「GRA-MA惑星群」
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第2部
4
家族
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建物を見る限りウォーターたちがいた時代の田舎の風景と同じである。
あの老人の言葉が気になった。
『ギーガんとこのせがれ、誰だそれは』
とにかくもう一度あの村に行って尋ねてみよう。今度は落ち着いて、冷静に。
「やあ、ギーじゃないか、どうした気の抜けた顔をして」
後ろから声がした。
ウォーターは人がいたことにまったく気が付かなかったので、また冷静さを失いかけたが、今度は、すぐに落ち着きをとりもどし、声のほうに目をやった。
同年代くらいの素朴な少年がそこにいた。
・・ギーって誰だ。この少年は誰だ・・・
「・・・き、君は?」ウォーターは、暗闇を手探りで物を探すように言った。
「何言ってんだよ。つまんない冗談、ハッハッハッ」その少年はなんの屈託もなく楽しそうに笑った。
たぶん、また本当のことを言っても聞いてはくれないだろう。が、ウォーターは話し相手がほしかった。友達になれたらと思った。
「・・・俺、記憶を失ったようなんだ。何も覚えてないんだ。君のことも、この村のことも、・・自分のことも」とっさに口から出ていた。もし、そのギーという本人が出てきたらどうなるか、頭にないわけではなかったが、もうひとりでいるのは耐えられなかった。
「えっ、大変だそれは。どうも冗談じゃなさそうだな。とりあえず君の家へ連れて行ってあげるよ。その顔じゃあ、なぜそうなったのかも、分かってなさそうだね。聞いても無理だろうな」心配そうに少年は言った。
「・・・・」ウォーターは黙ってしまった。
ことさら病人を装うつもりはなかったのだが、弱気になっていてほんとうに病んでいるように見えた。
少年は丘を越えて村に入り、一軒の家の前までウォーターを案内した。
「ここが、ギー、君の家だよ。想い出さないか」と、その少年は言った。
彼はギーと幼馴染みの同級生だと歩きながら話していた。「・・」ウォーターは自分は何もわからないんだという表情で無言で少年を見た。
彼はウォーターに話しかけるのをあきらめて、モニターに向かって挨拶をし中のだれかを呼び出していた。
入り口が開き家の中にふたりは入った。
ギーガの婦人、つまりギーの母親が現われその同級生が訳を話してくれ、そのあとは父親と妹が出てきて記憶喪失の俺を手厚くやさしく扱ってくれた。
ここでは親と子供が一緒にくらしていた。地球でもまだこういうところがあると何かで知ったことがあった。たぶんその地域だろうと思った。
本物のギーがあらわれて事実がばれても、そのときはそのとき。ウォーターは少しここでようすをみることにした。
ところが、数日たっても本当のギーはあらわれなかった。
しだいに、ギーの家族や村のことなどを知ることができその村に馴染んでいった。
もちろん、今いるこの世界のことをそれとなく調べたりもした。が、ここはまったくシュールたちのいる人間の世界そのもので何も変わりはなかった。ただ、あの化け物は現れなかったし、その資料もなかった。
それに、シュールたちのいるはずの家のところだけ、地図が違っていて小さな砂漠になっていた。
ごく平凡なこの家族は、ギーガーの息子としての記憶喪失の少年がいるということ以外は、何一つ変わったことがなかった。
淡々と時が流れていた。
もちろん、この家族は事実を知ることもなく、またギーという少年もなぜかいっこうに姿を見せなかった。
偶然俺が現われた日に行方不明になったのだろうと考えた。
あのとき、自分がそこにいたことでギーを捜索することにならなかった。当初はギーに対して現われないでくれと心で祈った。一年、二年、経つごとにギーガー夫妻やその娘に対する情のふれあいから、もし嘘をついていなかったら本当のギーを探し出せたかもしれないと、心の呵責に苛まれるようになっていった。
あれから三年がたっていた。
「お母さん。俺、テークの家に遊びに行ってくるよ」
ウォーターはこのギーガー婦人によって人間の母親を実感した。なんとも甘美で、たくましい愛情であろうかとおもった。
「はい、行ってらっしゃい」
婦人はいつものように、記憶喪失の息子にやさしく言った。
これから遊びに行く所はテークというウォーターの第一発見者、つまり、ギーの幼馴染みのあの素朴な少年の家である。
歩いて数分の所に彼の家はあり、間もなくテークの部屋にいた。
いつものようにたわいない話しをしていて、ふと窓を見た。
ウォーターは、目を疑った。
あの超生命体が、あの化け物が、そこの窓ごしの遠くに見えていてこちらに近づいてきていたのだ。
「テーク。あれは何だ、あの空気の歪みのような化け物は」
テークは、窓の外を見た。しかし、彼にはなにも見えていなかった。
「どうしたんだ、ギー、そんなものどこにもいないよ。疲れているんじゃないのか」テークが言った。
「そんなことないだろ。今、窓いっぱいに見えているアメーバーのようで、透明な空気が歪んだような。ほら、あれが、あれだよ、あれが見えないのか?」
すでに窓のすぐ近くまで超生命体は来ていたが、ウォーターが言い終わるか終わらないうちに消えてしまった。
ウォーターはすぐさま窓から顔を出したが、もうどこにも姿は見えなかった。
外にはいつものようにのどかな晴れた風景が広がっていた。
からだが自然に震えた。
「おまえはいったい何者だ!化け物、正体をみせろ!」
ウォーターはテークの存在も忘れて、大声で叫んでいた。テークは驚いてあとずさりしていた。
次の瞬間ウォーターは窓に飛び乗り外へ飛び出していた。
テークの呼び止める声が遠くで聞こえたような気がしたが、やがて心の中の渦にまきこまれて聞こえなくなっていた。
狂ったように外に出て、あの日と同じように家の角を曲がった。
そのとき・・・
ウォーターは、シュールの家の外の玄関に立っていた。
・・・・・
ウォーターは、話し終えた。
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