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第1部
1
何かの気配
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「きのうバーチャルで、スゴイ歌手発見したんだ」
「シュール。お前のスゴイはあてにならないからなあ」
「いや、絶対だよ。今にきっと有名になるよ、あれは」
「名前何ていうんだ。検索してみるよ、ま、期待はしていないけどね」
朝が来て、緑一面の風景の中に自然を優先したかたちで存在する未成年者生活区で会話がはずむ。
「それより、俺最近ヘンなんだよ」
「はは、お前のヘンはいつもだよ。もしかしたらこのスゴイ歌手もヘンなやつかい」
「いや、そういうことじゃなくて・・うーん、ま、いいか。・・・俺これから授業なんだ。システムが新しくなったんで内容けっこういけるんだ。前のコンピュータ先生よりはかなり思考レベルが高いぜ」
「そうか、俺のもそう言えば今日から変わるんだった。でも昔は人間が人間を教育していたんだよな、野蛮だったよな」
「そんなことどうでもいいんだよ、とにかく俺行かなくちゃ」
シュールは友達と別れて小走りに十メートルほど行ったとき頭上で何かの気配を感じた。
「・・ん」又かと思いすぐに上空に目をやった。
空が歪んでいて、見上げたのと同時に元に戻ったように見えた。
「またかよ、やっぱりおかしいよ、何か変だよ」
不安がシュールの胸いっぱいに広がった。
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