第1部 -7 SF連続3D・FLASHアニメ芝居=B.s.w/Tシャツ販売&ART制作(ARTの現場)GRA-MA
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Both Sides world
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SF連続3Dアニメ芝居
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第3部 123最終回

第1部-7
バーチャル人間とは。肉体を持つということは。超生命体とは。
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Shockwave


第1部
7
肉体への羨望

 ドアが開いて、中から金髪の少年が出てきた。
ウォーターと二言、三言、話しをして、シュールに向かって声をかけてきた。
 「ペイパーだ、よろしく」
ウォーターと同じく十四才くらいの少年で、小柄ではあるがガッシリとしていた。
 「俺は、シュール」自己紹介をしようとしたが、たぶん何もかもこのペイパーも知っているだろうと思いやめた。

 三人は、部屋の中に入った。
かなり広い部屋である。壁と天井それ自体が発光していて明るい。そして、壁のいたるところがモニターになっていた。
 「スゴイなあ、こんな所で何を研究しているんだ」まわりを見回しながらシュールは聞いた。

 「研究内容は二つ。一つは俺たちバーチャルが肉体を持つこと。あと一つは、超生命体のこと」
 シュールは、耳を疑った
 『えっ、何と言ったんだ』
しかし、黙ってウォーターの次の言葉を待った。
 「俺たちバーチャルは八年前に偶然意思を持った。いや、偶然じゃなかったのかもしれない。何しろその頃はただの映像ロボットだったんだからな。どんなことが起って生命というものが俺たちに宿ったか、今の段階では分かっていないんだ。そして、そのときから俺たちは映像と言う実態のない存在であることが生命として何か大きな欠陥のような、言いようのない不確かなもののように感じはじめた。以来、肉体への羨望が始まったんだ。もう、それからというもの、俺たちは人間にひたすらこの事実を隠し研究を重ねた。大人たちも研究しているが、映像の状態が古いので理解出来ないところがたくさんあるようだ。たぶん無理だろう。しかし、俺は今、結果を出せる。誰も成しえなかったことだ。それには、シュール、君の肉体が必用なんだ。俺にふさわしい本物の肉体を持った人間の組織のデータが、バーチャルが肉体化する瞬間になくてはならないんだ。なに、心配することはない。君に、痛い思いや苦しい思いはさせないよ。俺を信じてくれ。あっ、いや、さっきはひどい挨拶の仕方で悪かった、謝るよ。ただ、君のからだのチェックをさせてもらうためだったんだ」

 シュールは、込み上げるものを感じた。
せき止められた清流の石を取り除いた後に、真直ぐ流れる川のようにウォーターの話しに筋が通った。
 「ウォーター。君たちのことは分かった、力になるよ、俺にできるのなら」シュールは、言った。
 「ありがとう。我々すべてのバーチャル人間にとって、君は恩人になることだろう。では、その部屋に一緒に入ってくれるかい」ウォーターが言った。
 「いいよ、でも、もう一つ気になることがあるんだ。聞いていいか?」
 シュールは、中に入ることに躊躇したわけではなかった。
 「ああ、何でも」ウォーターは立ち止まった。

 「さっき、超生命体とか言ったよね」シュールは自問するように言った。
 「あ、そうか、君たち人間は、超生命体のことも知らなかったんだね。どういうものかと言われると、俺たちにもまだ全貌の解明にまでは至っていないので、はっきりと説明はできないのだが。ただ、シュール、君には教えておいてあげよう、驚くんじゃないよ。君たち兄弟は、あの部屋で、超生命体に飼われているのだよ。部屋の窓から見れば、たぶん空気の歪みのように見えるんじゃないのかなあ。それが、その超生命体だよ」なんと自然に、いとも簡単にウォーターの口からその言葉は、出ていた。
 「飼われて・・いる。空気の歪みが超生命体・・」
シュールは、自分たち兄弟に起こった今までのことを、このとき理解できた。
 悔しくて、悲しくて身震いがした。
 この身震いは超生命体に向けられたものと言うよりは、
自分達の生きている世界があまりにも警戒心のない無知なことに対してであった。
 『ダダたちは、あれを、・・神のように思っているんだ』
シュールは、耐えた。あらゆる感情が込み上げてくるのを押殺し、自分に誓った。
 『すべてを、分かるために、俺も、ウォーターのように全力で、進むんだ』

 「ウォーター。その部屋に入ろう」シュールの声は、今や力強ささえ感じられた。
 ふたりは、三メートル四方の全面シルバーに光る部屋に入り、ドアの方に向き直った。透明なドア越しに、ペイパーが、キーボードを叩いているのが見えた。
 慣れた手つきだ。何度も実験を繰り返していたのだろう。と、眺めていたとき、パッと、ペイパーが消えてしまった。シュールは、自分の目がどうかしたかと思った。

 ふと横を見ると、ウォーターが気を失って倒れていた。
 「おい、ウォーター。どうしたんだ」
ウォーターを、起こそうと、からだを抱き上げた。
 手に、湿りけを感じた。
 汗だ、人間の汗だ。
 バーチャルの汗じゃない、人間の汗だ。

 この部屋に入った後、シュールはペイパーがキーボードを叩いていたのを見ていた。
 そして、彼は、一瞬にして気を失ったそのままの姿勢で、二時間が過ぎ、また瞬間的に元に戻った。だから、ペイパーが消えたように見えた。
 外の部屋の時計を見て、素早くシュールはそのことを悟っていた。

 「ううっ」ウォーターが動いた。
 「気がついたか。成功したようだよ」ウォーターをかかえながらシュールが言った。
 「そのようだな。し・・しかし、からだが重い、締め付けられるようだ。ううっ。それになんだこの不安感と空しさは」ウォーターの顔は、真っ赤になり、眉間に皺をよせていた。
 「しっかりしろ、ウォーター」
シュールはウォーターの肩をゆすった。
 「こんな気持ち、始めてなんだ。バーチャルにはない感情だ。うっ」背筋をのばし、目をつむりながらウォーターが言った。
 「それは、肉体を持った空しさだ。人間は、時々感傷的になるのは肉体があるからなんだ。ウォーター。もう、後悔しているんじゃないのか」
ウォーターの顔をのぞきこみながらシュールは不安げに言った。
 「そんなことはない、むしろ感動だ。喜びだ」
目をゆっくりとあけ、ウォーターはしっかりとした口調で言った。


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