アニメ遊館----ダシモノ目次
「Both Sides world」
「オトコサイセイ」「セレニーノ輪廻転生」「グラマラス.1」「 グラマラス.2」「セレニー」
「サイクルセレニ−」「ハートト翼男」「飛行機」「ガラスピエロ」「ミラーマン」「GRA-MA惑星群」
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第2部
1
地球
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鳥がたまごを抱いている。
ヤゴがせせらぎの中を這っている。
ムササビが木から木へと飛んだ。
風が吹いた。
その地球。
人類の。
その未来にどのような試練が待ち受けているのだろうか。将来に対する希望と不安。それによってさまざまな考えや想像が、原始の時代から今にいたるまでたえず思いめぐらされてきた。
このように人は、未来を守ろうとする習性をそなえているにもかかわらず、たいていの場合、事件がおこってから軌道習性をすることがやっとであった。
また、これだけ科学と創造力の進化したこの時代でさえ、完全な未来予知の方法は発見されていなかった。
そして、もうずっと以前から、それは、忍びよってはいたのだろうが、ダダやセレニー達のように、事実を験験するまでにはいたらなかった。
しかし、人類は弱くなったのか、それとも達観してより高い精神世界へと進んで行っているのか、修行僧のように悟りをひらいてしまったのか。とにかく、まわりの異変に対して、かなり鈍感になっていたように思われた。
人類は、政治、経済、裁判、教育等の役割を完璧で平等なその仕事内容の、コンピュータにすべてをまかせていた。
精神世界の幸福を追究し続けたあげく、宗教観が強くなり、神の存在すら再び信じるようになっていた。
その裏では、バーチャルシステムでの映像人間に、偶然もしくは何者かによって生命が吹き込まれ、一人歩きしだしていた。
コンピュータのデータや情報の中で存在するバーチャル人間にとっては、この地球上のあらゆる情報、すべてのデータを入手し、分析することなど、おてのものであった。
人間の持つデータだけでなく、それ以外の超生命体のデータまで手に入れていた。
が、彼等にとっても、その生命体については完全に理解しうるもなではなかった。
それにしても、数々のこのような好条件の中で、人間の科学をわずか数年間で追い越してしまい、彼等の中の一人の少年が、今、最初の肉体を持ったバーチャル人間として生れ変わった・・・。
「シュール、俺の精神と、今新しく生れた肉体は、どんどん一体化している。からだの重圧感、心の不安感がなくなっていく。もう、感傷にひたってはいられない。君の部屋に行ってあの超生命体をこの目で見てみたい。
データでは存在を確認しているのだが見たことはないんだ。俺たちの仲間に、肉体を与える前に知っておかなければいけないことのように思う。それに、君のことも心配だし」
ウォーターの顔からは、さきほどまでの赤く重苦しい表情は消えていて、自分のことよりもまわりのことを気づかうまでに精神状態も急速に快復していた。
「その前に、ウォーター。君たちの科学や、精神世界がこんなに進歩した状態で存在しているなんて何も知らなかった。これから俺たち人間をどうしようというのだ。まさか、乗っ取りを計っているのではないのか」
シュールは、ウォーターを信頼しているからこそ、率直にこのようなことが聞けたと思った。
「・・・人間のことは理解している。戦いを極力避ける方向にある。俺たちが戦争を挑んだところでなんの意味もない。むしろ、超生命体が何であるかを協力し合って解明する必要があるのではないのか。しかし、今はまだ俺たちのことを、ほかの人間には話さない方がいいだろう」
ウォーターは、ゆっくりと、どこか一点を見つめながら言った。
「俺も、そう思うよ。超生命体にまで知られてしまうかもしれないしね。そうなるとすべてがおしまいだからね。君をうたがって悪かった」
シュールは、ウォーターらしい答えが帰ってきたことに満足であった。
「シュール。弟と一緒に来ていると言っていたな。自分で自由に帰れるんだろう。今ここで会うと面倒なことになりかねない。あとで帰るようにしてくれないか。それと、君の家へ行った時、兄弟たちにも会わないように出来るかい。バーチャル転送室から出るのを見られたくないんだ。君の部屋の玄関のドアから入ったように思わせたいんだ。分かるだろ。俺がまず人間として、君の友だちとして部屋にいることが出来れば、仕事もはかどるし、いずれお兄さんたちに説明するのにも、都合がいいだろう」ウォーターが言った。
彼の話しをしている表情やしぐさにややぎこちなさが感じられたが、数分前に彼が肉体を持ったことを知らない人にとっては、ただの癖にしか感じられなかっただろう。
「まかしてよ、うまくやるよ。ちょっと待って、今、弟と連絡を取ってみる」
シュールは指にはめているテレパーを回転させて、心の中でポップを呼んだ。
『シュール、呼んだかい。今、僕、海の中だよ。ガールフレンドできちゃったよ』ポップのはずんだ声が頭の中で響いた。
『ああ、よかったなぁ。俺は、急用が出来たので先に帰るけど、おまえはゆっくり楽しんでいな』
『なんだ、もう帰るの。いいよ、僕はもう少しここで遊んでいるよ。じゃあね』
「弟は、大丈夫だ。すぐには帰らないだろう」テレパーを回しながらシュールが言った。
「よし、行くか。ペイパー、このことは、俺たちバーチャルの仲間にもまだ知らせないほうがいいだろう、分かったな。じゃあ、後を頼んだぞ」ウォーターは、ペイパーに、最初の大仕事をなしとげた喜びを表情にあらわしながら、力強く言った。
そして、シュールとウォーターは、研究室から消えた。
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