摩詰再誕, 樂天化身。 胸儲邱壑, 腹藏經綸。 偉哉大聖, 詩畫入神。 古往今來, 天下一人。 ![]() |
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田能村竹田 墓碑の頌
摩詰(まきつ)の 再誕,
樂天の 化身。
胸に 邱壑(きうがく)を 儲(たくは)へ,
腹に 經綸(けいりん)を 藏す。
偉なる 哉(かな) 大聖(たいせい),
詩畫(しぐゎ) 神(しん)に 入る。
古往 今來(こわうこんらい),
天下 一人(いちじん)。
◎ 私感註釈 *****************
※田能村竹田墓碑:大阪・夕陽丘(写真:下)の浄春寺内にある墓碑の頌。数メートルにもなる仰ぎ見る墓碑の裏面にある頌は、佐藤海城による。夏の日の夕刻、同寺境内は、地名が表す通り、一面に夕陽を受けて、静まっていた。
※摩詰再誕:田能村竹田は、盛唐の詩人王維の再来であり。 ・摩詰:王維の字。王維は篤い仏教徒。「摩詰」は名と合わせて、「維摩詰」にな
る。「維摩詰」とは『維摩経』に登場する主人公の名(ビマラキールティ VimalakLrti 毘摩羅詰利帝)のこと。彼は、古代インドの毘舎離城に住んだとされる大富豪で、学識に富み、在家のまま菩薩の道を行じて、釈迦の弟子としてその教化を助けたといわれる。ここで、王維といわないで王摩詰と字でいったことは当然でもあるが、ここでは、「摩詰」という語の持っている宗教的な響きに重点が置かれている。この聯では、王維と白居易の二人の詩人の名を挙げているが、共に篤い仏教信者であり、これらの名前を挙げることで、仏教への思いも伝えている。
夕陽丘(地図の下辺=西側)
。 ・再誕:(一度死んだものが、姿を変えて)再び生まれること。生まれ変わり。≒再生。
※樂天化身:(仏教徒である)中唐の詩人白居易の化身である。 ・樂天:白居易の字。白居易は篤い仏教徒。 ・化身:菩薩や神、高僧が人などの姿で現われたもの。仏の三身(法身、応身、化身)の一つで、仏が衆生を救うために、それぞれに応じて人や鬼などの姿で現われたもの。仏教用語。
※胸儲邱壑:心の中には、勤皇の志を秘めていて。 ・胸:心の中で。胸中に。 ・儲:〔ちょ;chu2○〕たくわえる。もうける。 ・邱壑:〔きうがく;qiu1he4○●〕丘や谷間。志士は草莽の間に屍を曝すことを恐れないことを暗示する語。勤皇の志があり、そのために命を捨てる覚悟があるということ。勇士、壮士であるということをいう。「孟子巻六・縢文公・下」にある「志士不忘在溝壑,勇士不忘喪其元。(「元」:かうべ。頭、首)」ということをいっている。「填溝壑」敵に殺されて、自分の屍体をドブにうち捨てられ、野の果ての谷あいに棄てられること。しかし、ここでは、戦闘の結果、敵に殺され、自分の屍体をドブにうち捨てられることがあっても、勤皇の志に則って、犠牲となり殉国の志士となる道を歩んで、犠牲となることを恐れなかった、ということになる。
※腹藏經綸:国家を治めととのえる施策を心の内に秘め隠している。. ・腹藏:心の内にひめ隠すこと.。 ・經綸:ここでは、国家を治めととのえる施策になる。国家を治めととのえること。天下を統治すること。
※偉哉大聖:偉大であることよ、大聖人(=田能村竹田)は。 ・偉哉:偉大であることよ。 ・偉:えらい。すぐれている。大きく立派である。 ・大聖:非常にすぐれた聖人。大聖人。
※詩畫入神:絵と漢詩は、神業の域に達している。 ・詩畫:〔しぐゎ;shi1hua4○●〕絵と漢詩。 ・入神:技術が非常に熟達し、人間わざとは思われない域に達すること。技術が神わざに近いこと。
※古往今來:昔から今に至るまで。 ・古往今來:〔こわうこんらい;gu3wang3jin1lai2●●○○〕昔から今に至るまで。古今。
※天下一人:天下にただひとりの人である。世間第一である。 ・天下:世間。世の中。この国全部。一国全体。国家。国中。 ・一人:ただ一人。第一人者。
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◎ 構成について
韻式は「AAAA」。韻脚は「身綸神人」で、上平十一真。次の平仄はこの作品のもの。「藏」は動詞は○、名詞は●になる。
◎●●●,
●○●○。(韻)
○○○●,
●○○○。(韻)
●○●●,
○●●○。(韻)
●●○○,
○●●○。(韻)
平成16.8.25 8.29 8.30完 8.31補 |
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