歳月歩履匆匆, 記憶漸行漸遠, 總有一些事情, 讓我們刻骨銘心, 回首悵然。 |
******
歳月
歳月の歩みは 慌ただしく,
記憶は しだいに 遠のいてゆく。
が、いつまでも 一部の出来事は,
我々の 骨身(ほねみ)に刻(きざ)みこまれていて,
ふり返れば 怨(うら)めしい。
◎ 私感註釈 *****************
※これは、『農業學大寨始末』(湖北人民出版社;宋連生著2005年)、『工業學大慶始末』(湖北人民出版社;宋連生著2005年)の裏表紙のことば。文革時代をふり返っての溜息とも謂えるものか…。大寨、大慶、はそれぞれ文革時代の農業、工業の模範単位、モデル。現在も毛沢東親筆の「農業學大寨,工業學大慶。」(「農業は大寨に学び、工業は大慶に学ぼう。)が遺されている。もと、大寨は山西省の昔陽県にある。大寨生産大隊のある大寨は、華北の一寒村であったが、貧農出身の共産党員陳永貴の指導の下、貧下中農(貧農・下層中農)が、愚公移山の革命精神を発揚し、困難を恐れず、万難を排して刻苦奮闘した結果、砂礫の岩山を見事な棚田に造り変えたという社会主義的天地創造の実話である。やがてこの事実に基づいて、文革が発動される二年前、「農業學大寨」の運動が展開され、自力更生,奮発圖強の象徴とされ、大寨は二〇世紀の愚公として称えられた。文革期、以上のような報道がなされていたのを記憶している。当然ながら、そこには、政略もあったことは、前掲書『農業學大寨始末』にも書かれているが、同時代人にとっては、辛くまた懐かしい響きのある地名なのだろう。星霜移り、革命的な党員が大寨の大企業の社長になっているが、これも滄海が変じて桑田となるの例えなのだろう。時は流れたのである……。
※歳月歩履匆匆:歳月の歩みは慌ただしく。 ・歳月:年月。としつき。文革は1966年〜1976年の間になる。 ・歩履:〔ほり;bu4lyu3●●〕歩み。歩行。行動。 ・匆匆:〔そうそう;cong1cong1○○〕慌ただしいさま。いそがしいさま。騒がしいさま。
※記憶漸行漸遠:(文革期の)記憶は、しだいに過ぎ去って、しだいに遠ざかっていく。 ・記憶:記憶。ここでは、文革期の記憶のことになる。 ・漸行漸遠:しだいに過ぎ去って、しだいに遠ざかる。 ・漸行:しだいに行く。 ・漸遠:しだいに遠ざかる。 ・漸:〔ぜん;jian4●〕しだいに。だんだんと。
※總有一些事情:いつまでも些(いささ)かの事がらは。 ・總有:いつまでも。ずっと。 ・一些:〔いつさ;yi4xie1●○〕いささかの。少しばかりの。 ・事情:事がら。
※讓我們刻骨銘心:わたしたちの骨身(ほねみ)に刻(きざ)み込まされて忘れられない。 ・讓我們:わたしたちに…させる。 *「讓我們」のスマートな口語訳が難しい。 ・讓:〔じゃう;rang4●〕…に……させる。使役表現。文語の「ヘ」や「使」などと似た働きをする。 ・我們:わたしたち。 ・刻骨銘心:骨身(ほねみ)に刻(きざ)んで忘れない。 ・刻骨:〔こくこつ;ke4gu3●●〕骨に刻(きざ)んで忘れない。 ・銘心:〔めいしん;ming2xin1○○〕深く心にとめて忘れない。
※回首悵然:ふり返って思い返せば、恨み歎かわしいことである。 ・回首:ふり返る。 ・悵然:〔ちゃうぜん;chang4ran2●○〕がっかりしたさま。失望して悲しみ恨むさま。
◎ 構成について
押韻していない。次の平仄はこの作品のもの。
●●●●○○,
●●●○●●,
●●●○●○,
●○○●●○○,
○●●○。
2005.9.10 11.16 |
メール |
トップ |