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題厓山樓 | ||
武田耕雲齋 |
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厓山妖血汙乘輿, 禮樂衣冠掃地虚。 卻怪文章經術士, 年來畢竟讀何書。 |
厓山 の妖血 乘輿 を汙 し,
禮樂 衣冠 地を掃 って虚 し。
卻 って怪しむ 文章經術 の士,
年來畢竟 何 の書を讀む。
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◎ 私感註釈
※武田耕雲斎:幕末の尊皇攘夷派の志士。水戸藩の天狗党の首領。享和三年(1803年)~慶應元年(1865年)。名は正生。字は伯道。通称は彦九郎。号は如雲、後、耕雲斎。水戸藩士。徳川斉昭の藩主擁立に尽くし改革派の重鎮として活躍、後、家老となった。天狗党の筑波山挙兵に主将となり、八百余名の同志を率いて上洛の途中、金澤藩に降伏。敦賀で斬首された。位階は贈正四位。官位は伊賀守。
※題厓山楼:厓山楼を詩題として詩を作る。 ・題-:…を詩題にして詩を作る。 ・厓山楼:下喜多の厓山楼に題したもの。詳細不明。 ・厓山:〔がいざん;Ya2shan1○○〕現・広東省新会県の南にある小島。南宋の最後の根拠地で、祥興二年(1279年)、元軍のために滅ぼされたところ。=崖山。文天祥(『正氣歌』「天地有正氣,雜然賦流形。下則爲河嶽,上則爲日星。於人曰浩然,沛乎塞蒼冥。皇路當淸夷,含和吐明庭。時窮節乃見,一一垂丹靑。…」)は、この地で兵を率いて果敢に元軍に抵抗したが敗れたところ。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期「広南東路広南西路」65-66ページ(中国地図出版社)にある。
※厓山妖血汙乗輿:(南宋の最後の戦闘場所である)厓山では、(夷狄・モンゴルの)妖しい血で(南宋の)天子の乗り物が穢された。 ・妖血:あやしい血。夷狄の血を指す。南宋から元への王朝交代は、漢民族の国家である南宋から、モンゴル民族の元に因る統治へと変わった。「妖」字を使ったのは、漢民族の中華の地に夷狄(=ここではをモンゴル人)が侵入し、その血が流れ、中華の地を穢したとの感覚に立っての使用。 ・汙:〔を;wu1◎〕けがす。=汚。 ・乗輿:天子の乗り物。
※礼楽衣冠掃地虚:(社会の秩序を整え、人々の心を和らげる)礼楽や、正しい装束を身につけた高い身分の者は、すっかりなくなっ(てしまっ)た。*漢民族の政治支配や伝統文化は絶たれてしまったということ。 ・礼楽:礼儀と音楽。礼は社会の秩序を整え、楽は人の心を和らげるものとして政治上特に重視された。 ・衣冠:衣服と冠(かんむり)。正しい装束。衣冠をつける身分のもの。官吏。貴人。なお、「冠」は〔くゎん;guan1○〕で、名詞「かんむり」。 〔くゎん;guan4●〕で、動詞「(冠を)かぶる」意。「衣冠」は〔yi1guan1○○〕。 ・掃地:地をはらう。土の上を掃き清める。きれいになくなる。すっかりなくなる。 ・虚:うつろである。むなしい。
※却怪文章経術士:逆に、不思議に思うのだが、文章や経書を研究した学徳のある者は。 ・却:…にもかかわらず。かえって。 *予想や道理、意に反するとき。 ・怪:あやしむ。 ・文章:国を治める重要な事業。経国の大業、不朽の盛事。 ・経術:経書を研究する学問。=経学。 ・士:官吏の総称。学徳のある者。おとこ。
※年来畢竟読何書:何年も前から、結局、どのような本を読んで勉強してきたのか。 *身に着けている学問は、祖国と民族の危機に際して、一体どのような働きをしたのか。 ・年来:何年も前から続いている。としごろ。長年。 ・畢竟:つまり。結局。副詞。 ・読何書:一体どのような本を読ん(で勉強し)たのか、の意。「読書」は、勉学する意。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は、「輿虚書」で、平水韻上平六魚。この作品の平仄は、次の通り。
○○○●◎○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
●●○○○●●,
○○●●●○○。(韻)
平成27.7.12 7.13 |
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