擬古 | ||
河野鐵兜 |
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生子當如玉, 娶妻當如花。 丈夫天下志, 四十未成家。 |
子を生まば當 に玉の如くなるべく,
妻を娶 らば當 に花 の如くなるべし。
丈夫 天下の志,
四十 未 だ家 を成さず。
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◎ 私感註釈
※河野鉄兜:江戸時代末期の詩人、医者。文政八年(1825年)〜慶応三年(1867年)。
※擬古:前代のことを述べて現代を諷刺し、または、新体を用いて内容は昔の精神を歌ったもの。≒古意。作者が生きた時代(江戸後記〜末期)を考えれば、この詩は「国事に奔走するのも好いが、それは若い時の話で、人間、『家を成す』ということも大事だぞ。お前さまも平均寿命まで生きてきたのだ。子供というものは可愛いものだ。ここは一つ視野を広めて…」と詠いたいのではないのか。一つの人の生きる道を説いている。
※生子当如玉:子供を持つなら、玉のような子であるべきであり。 ・生子:子を生む。 ・当:まさに…べし。当然…である。…はずである。 ・如玉:玉のような子。
※娶妻当如花:妻を娶(めと)るのならば、花(陰麗華)のような(女性を選ぶ)べきである。 *『後漢書』(中華書局)122ページ:後漢書卷十上 皇后紀第十上四〇五頁第六行:「仕宦當作執金吾,娶妻當得陰麗華。」(この句は原典(=後漢書:中華書局)に当たっています)にある。 ・娶妻:妻を娶(めと)る。 ・如花:花のよう。「如花」は「如華」(=如陰麗華)を謂う。
※丈夫天下志:一人前の男は、世の中を治めようという志(を持つべきだが)。 ・丈夫:〔ぢゃうふ;zhang4fu1●○〕一人前の男。 1丈(2メートル)ある男。周の1丈=8尺。1尺=22.5cm。 ∴1丈=2.00m。 ・天下志:世の中を治めようという志。
※四十未成家:四十になっても、いまだに家庭を持たないでいる。 ・未:まだ。いまだ。 ・成家:家庭を持つ。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「花家」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○●○○●,
●○○○○。(韻)
●○○●●,
●●●○○。(韻)
令和3.8.31 9. 1完 9.10補 |
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