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泉州道中 | ||
藤井竹外 |
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喚取籃輿便換舟, 浪華南去是平疇。 西風吹白木棉國, 一路穿花到紀州。 |
籃輿 を喚取 して便 ち舟に換 へ,
浪華 南に去れば 是れ平疇 。
西風 吹きて白し木棉 の國,
一路 花を穿 ちて紀州 に到る。
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◎ 私感註釈
※藤井竹外:江戸末期の漢詩人。高槻藩の家臣。文化四年(1807年)~慶応二年(1866年)名は啓。字は士開。摂津国(大阪府)の人。頼山陽に学ぶ。
※泉州道中:和泉の国での旅の途上。 ・泉州:和泉国のこと。現・大阪府西南一帯。 ・道中:旅の途上。
※喚取籃輿便換舟:駕籠(かご)を換えさせて、そこで、舟旅にしてもらって。 ・喚取:喚んで受け取る。かえて受け取る。換取。 ・籃輿:〔らんよ;lan2yu2○○〕かご。 ・便:すなわち。 ・換舟:舟に換える。
※浪華南去是平疇:なにわ(現・大阪)を南へ行くと、平らかな畑だ。 ・浪華:なには、なにわ。=浪花。 =浪速(なみはや)/難波(なみはや)。 =おおさか(大坂/大阪)。 ・南去:南へ行く。(淀川(大川))天満橋⇒阿倍野⇒平野⇒堺⇒和泉⇒紀州(和歌山)。日本・祇園南海の『關山月』に「秦嶺西去關塞深,秦雲遙隔望鄕心。不見長安惟見月,鳳城何處照鳴砧。」とある。 ・是:…は…である。これ…なり。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・平疇:〔へいちう;ping2chou2○○〕平らかな畑。ただし、この詩が大阪(府)を北から南へ抜けて、和泉の国を通って、南国の和歌山県に行くという行程だと、途中の平疇(へいちゅう)とは、大阪市の南東に位置する古代からの要衝・「平野」(ひらの)ではなかろうか。 ・疇:〔ちう;chou2○〕うね。はたけ。耕地。
※西風吹白木棉國:西風(秋風)が、海の方から白(い花)に吹きつけてくる木綿(もめん)の名産地(では)。 ・西風:にしかぜ。秋風。海の方から吹いてくる風でもある。 ・吹白:風が白い花に吹きつけ、また、白い色が吹きつけられるかのように見えるさま。白い色を噴き出すを謂う。ここは、前者の意。中唐・白居易は『初貶官過望秦嶺』「草草辭家憂後事,遲遲去國問前途。望秦嶺上迴頭立,無限秋風吹白鬚。」とあり、元・劉因は『白雁行』で「北風初起易水寒,北風再起吹江干。北風三吹白雁來,寒氣直薄朱崖山。乾坤噫氣三百年,一風掃地無留殘。萬里江湖想瀟灑,佇看春水雁來還。」
とある。 ・木棉國:木綿(もめん)で有名な地方。和泉(いづみ)の国のこと。木綿は、泉州で製織された綿織物で、室町時代に始まり、江戸時代に綿を手紡・手織したものが和泉木綿として有名になったことに基づく。 ・木棉=木綿(もめん)。 ・棉:〔めん;mian2○〕わた。
※一路穿花到紀州:ひたすら、(木綿の)花を押し分けて進み、紀州(和歌山)に到った。 ・一路:ひたすら。寄り道せずまっすぐに進む。また、ひとすじに続く道。 ・穿花:花を押し分けて進む。 ・到:(…に)いたる。目的語をとる。 ・紀州:現・和歌山県。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「舟疇州」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○○●●○●,
●●○○●●○。(韻)
令和3.9.5 9.6 |
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