酒闌客散小堂空, 旋捲疎簾受晩風。 坐久忽驚涼影動, 一痕新月在梧桐。 |
閑興
酒 闌 き客 散じて小堂 空 しく,
旋 ちに疎簾 を捲 きて晩風 を受く。
坐 すこと久 しくして忽 ち驚く涼影 の動くを,
一痕 の新月梧桐 に在 り。
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◎ 私感訳註:
※文徴明:明の書家、画家。1470年〜1559年初めの名は壁。字は徴明だったが、後に字で通用するようになったので、字を徴仲、号を衡山とした。長洲(現・江蘇省呉県)の人。文を呉寛に、書を李応禎に、画を沈(しん)周に学んだ。「呉中の四才子」の中心で「明の四家」の一。
※閑興:のんびりとしたおもむき。 *これは六首の中、其の四。
※酒闌客散小堂空:酒宴が終わりに近くなり、客が引き揚げて、部屋はがらんとし。 ・酒闌:酒宴が終わりに近くなる。「闌」:〔らん;lan2○〕盛りがすぎる。半ば過ぎ。尽きようとする。おそい。衰えていく。また、まっさかり。たけなわ。ここは、前者の意。南唐後主・李Uの『阮カ歸』呈鄭王十二弟に「東風吹水日銜山,春來長是閑。落花狼籍酒闌珊,笙歌醉夢間。 珮聲悄,晩妝殘,憑誰整翠鬟。留戀光景惜朱顏, 黄昏獨倚欄」とあり、両宋・李C照の『好事近』に「風定落花深,簾外擁紅堆雪。長記海棠開後,正是傷春時節。 酒闌歌罷玉尊空,缸暗明滅。魂夢不堪幽怨,更一聲啼鴂。」とある。 ・客散:客が引き揚げる。 ・小堂:部屋。
※旋捲疎簾受晩風:直ちに目のあらいすだれを巻き上げて、夕暮れ遅く吹き出した風を入れた。 ・旋:直ちに。その後。忽ち。ついで。また。かえって。やや。すこし。 ・疎簾:目のあらいすだれ。 ・晩風:夕暮れ遅く吹き出した風。清末・秋瑾の『菊』に「鐵骨霜姿有傲衷,不逢彭澤志徒雄。夭桃枉自多含嫉,爭奈黄花耐晩風。」とある。
※坐久忽驚涼影動:すわっていた(時間が)長かったので、月の光での樹木の陰影(=かげぼうし)が動いて…(一筋の細い月がアオギリ(の繁っているところ)にある)…ことに急に驚いた。 ・坐:すわる。動詞。 ・久:(時間が)長い。ひさしい。 ・忽:突然。急に。たちまち。 ・涼影:月の光(や日の光)でできた、樹木の枝葉の陰影。
※一痕新月在梧桐:一筋の細い月がアオギリ(の繁っているところ)にある。 ・一痕:一筋の痕跡。欠けた月を形容する。 ・新月:朔(さく)を過ぎた頃の細い月。 ・在:…にある。【〔在〕+場所】。 蛇足になるが、「有」は「…がある」意。【〔有〕+事物】。 ・梧桐:〔ごとう;wu2tong2○○〕アオギリ。落葉喬木。庭木で秋早くに落葉するため、秋の季節の訪れを告げるものとして、また場合によっては凋落を表す語として、また葉が大きいために雨音がよく分かるので、雨の描写としても使われる。中唐・白居易の『晩秋闍潤xに「地僻門深少送迎,披衣闕ソ養幽情。秋庭不掃攜藤杖,闢・梧桐黄葉行。」とあり、晩唐〜・温庭の『更漏子』「玉爐香、紅蝋涙。偏照畫堂秋思。眉翠薄、鬢雲殘。夜長衾枕寒。 梧桐樹。三更雨。不道離情正苦。一葉葉、一聲聲。空階滴到明。」とあり、南唐後主・李Uの『采桑子』に「轆轤金井梧桐晩,幾樹驚秋。晝雨如愁,百尺蝦鬚在玉鉤。 瓊窗春斷雙蛾皺,迴首邊頭。欲寄鱗游,九曲寒波不溯流。」とあり、両宋・李清照の『聲聲慢』「尋尋覓覓,冷冷CC,凄凄慘慘戚戚。乍暖還寒時候,最難將息。三杯兩盞淡酒,怎敵他、曉來風急。雁過也,正傷心,却是舊時相識。 滿地黄花堆積,憔悴損,如今有誰堪摘。守着窗兒,獨自怎生得K。梧桐更兼細雨,到黄昏、點點滴滴。這次第,怎一個、愁字了得。」とあり、明・李攀龍の『長相思』に 「秋風C。秋月明。葉葉梧桐檻外聲。難ヘ歸夢成。 砌蛩(コオロギ)鳴。樹鳥驚。塞雁行行天際。偏傷旅客情。」とある。
◎ 構成について
2016.3.6 3.7 3.8 3.9 |