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送梁六自洞庭山作 | |
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唐・張説 |
巴陵一望洞庭秋,
日見孤峰水上浮。
聞道神仙不可接,
心隨湖水共悠悠。
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梁六を洞庭の山より送りて作る
巴陵 に 一望す 洞庭の秋,
日に見る 孤峰の水上 に浮かぶを。
聞道 らく 神仙 接す可 からずと,
心は湖水 に隨 ひて 共に悠悠 。
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◎ 私感註釈
※張説:〔ちゃうえつ;Zhang1 Yue4〕盛唐初めの人。667年(乾封二年)~730年(養老十八年)。玄宗の時代、中書令となり、燕国公に封ぜられる。後、左遷された。この詩は、左遷の心情を詠い込んだものか。
※送梁六自洞庭山作:梁知微を洞庭の山より見送って、(この詩を)作る。 ・送:見送る。送別する。 ・梁六:梁知微のこと。「六」は排行で、梁家の六男の意。嗣聖年間の初め頃に進士となり、潭州の刺史に任じられた。作者との贈答の詩がある。 ・洞庭山:君山のこと。ただし、詩の内容から考えれば「洞庭に臨む山」の意となろう。君山は、岳陽市の南西15キロメートルの洞庭湖の中にある小島。洞府山とも称した。岳陽楼の対岸(西側)にある小山。上の地図中央。その名の由来は「湘君の墓所」の意で、屈原は、舜の妃の「娥皇」「女英」のことを『九歌』で、「湘君」「湘夫人」とうたった。『楚辭・九歌・湘夫人』に「帝子降兮北渚,目眇眇兮愁予。嫋嫋兮秋風,洞庭波兮木葉下。」とあり、南宋・戴復古は『柳梢靑・岳陽樓』で「袖劍飛吟,洞庭靑草,秋水深深。萬頃波光,岳陽樓上,一快披襟。 不須攜酒登臨。問有酒、何人共斟?變盡人間,君山一點,自古如今。」
と詠う。
大きな地図で見る岳陽楼前より岳陽門と洞庭湖を望む。
大陸旅游倶楽部三國志篇より賜る
※巴陵一望洞庭秋:岳陽から洞庭湖の秋のさまを一目で見渡せば。 ・巴陵:〔はりょう;Ba1ling2○○〕現・湖南省岳陽市。また、山の名。ここは、前者の意。漢昌郡、巴陵県、巴州、岳州。『中国歴史地図集』第五冊 隋・唐・五代十国時期(中国地図出版社)57-58ページ「唐 江南西道」、『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期63-64ページ「南宋 荊湖南路荊湖北路 京西南路」の洞庭湖東畔に、岳州、巴陵とある。なお、そこには岳陽樓がある。唐・賈至の『岳陽樓重宴別王八員外貶長沙』「江路東連千里潮,青雲北望紫微遙。莫道巴陵湖水闊,長沙南畔更蕭條。」
や、唐・杜甫の『登岳陽樓』の「昔聞洞庭水,今上岳陽樓。呉楚東南
,乾坤日夜浮。親朋無一字,老病有孤舟。戎馬關山北,憑軒涕泗流。」
や、南宋・陳與義の『登岳陽樓』「洞庭之東江水西,簾旌不動夕陽遲。登臨呉蜀橫分地,徙倚湖山欲暮時。萬里來遊還望遠,三年多難更憑危。白頭吊古風霜裏,老木蒼波無限悲。」
があり、また、北宋の范仲淹(范希文)の『岳陽樓記』
がある。 ・洞庭:洞庭湖のこと。
※日見孤峰水上浮:毎日見えている一つだけ離れてある君山の峰は、漂っているかように見える。 ・日見:毎日見えている。見飽きている感じを表す。 ・孤峰:一つだけ離れてある峰。ここでは君山を謂う。 ・浮:漂っているように見えるさまを謂う。
※聞道神仙不可接:聞くところによれば、神仙界の仙人(湘君や湘夫人)には、触れることができないという(ので)。 ・聞道:聞くところによれば。聞くならく。伝聞表現。 ・神仙:人間界から抜け出て、不老長生の世界に遊ぶ者。仙人。君山に祀られている湘君や湘夫人をも指す。 ・不可接:触れることができない。初唐・陳子昂は『登幽州臺歌』で「前不見古人,後不見來者。念天地之悠悠,獨愴然而涕下。」と詠う。
※心随湖水共悠悠:心は湖水(の波の動きに)したがって、ずっと憂えている。 ・心:ここでは、作者の心。 ・悠悠:〔いういう;you1you1○○〕うれえるさま。遠くはるかなさま。限りないさま。長く久しいさま。また、行くさま。ひまのあるさま。*この詩は「悠悠」の意味の深さを活用して、『詩經・王風』の『黍離』に「彼黍離離,彼稷之苗。行邁靡靡,中心搖搖。知我者,謂我心憂,不知我者,謂我何求。悠悠蒼天,此何人哉。」とあり、『詩經』・周南』の『關雎』に「關關雎鳩,在河之洲。窈窕淑女,君子好逑。 參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。 參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。」
とあり、『古詩十九首之十一』に「廻車駕言邁,悠悠渉長道。四顧何茫茫,東風搖百草。所遇無故物,焉得不速老。盛衰各有時,立身苦不早。人生非金石,豈能長壽考。奄忽隨物化,榮名以爲寶。」
とあり、盛唐・高適の『宋中』に「梁王昔全盛,賓客復多才。悠悠一千年,陳迹惟高臺。寂寞向秋草,悲風千里來。」
とあり、崔顥(さいかう:Cui1Hao4)の七律『黄鶴樓』に「昔人已乘白雲去,此地空餘黄鶴樓。黄鶴一去不復返,白雲千載空悠悠。晴川歴歴漢陽樹,芳草萋萋鸚鵡州。日暮鄕關何處是,煙波江上使人愁。」
とある。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「秋浮悠」で、平水韻下平十一尤。この作品の平仄は、次の通り。
○○●◎●○○,(韻)
●●○○●●○。(韻)
○●○○●●●,
○○○●●○○。(韻)
2012.10.29 10.30 |
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