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       十六字令
                
竇娥冤

                           伊勢丘人

冤。
白雪飄飄六月天。
誰幇我,
只落泪漣漣。






******

十六字令 竇娥冤
          
 

(ゑん)
白雪 飄飄
(へうへう)たり  六月の天。
(たれ)か 我を幇(たす)くる,
(た)だ 落す  泪(なみだ) 漣漣(れんれん)たるを。

*****************

◎ 私感註釈

※伊勢丘人:1943年生。備後福山在住。

※十六字令:詞牌の一。填詞中最短の詞牌

※竇娥冤:『竇娥冤』〔とうがゑん;Dou4E2 yuan1●○○〕は、関漢卿によって書かれた元曲の一で、冤罪を主題とした悲劇。 ・竇娥:〔とうが;Dou4E2●○〕姓名。元代の女性。 ・冤:冤罪事件。無実の罪を着せられる。罪がないのに罰せられる。ぬれぎぬ。ここでは、竇娥に言い寄った男の父親の死亡事件で、その犯人と疑われたこと。伊勢丘人著『中国美女列伝・竇娥』に依る。

※白雪飄飄六月天:(竇娥の思いに天が応えて)白い雪が旧暦六月といった真夏の空にふわふわと漂った。 ・白雪:雪は冬に降るものだが、天が竇娥の冤罪による死に感応して、真夏にも拘わらず、雪を降らせ、その屍体を包んだことを謂う。竇娥は、処刑される前に、自分が無実である証しとして、死ぬと三つの奇跡を起こすと言った。その一つが雪を降らせることだった。 ・飄飄:〔へうへう;piao1piao1○○〕ふわふわと浮くさま。(雲等が)風に吹かれて、空中に舞うさま。さまようさま。そよそよと吹くさま。翻るさま。 ・六月:旧暦六月で、太陽暦の七、八月に該り、真夏。 *「飛雪六月」で冤罪を謂う。 *1957年の反右派闘争で冤罪で右派とされ、二十数年後、平反(名誉回復)された人々を描いた書に『六月雪・記憶中的反右派運動』牛漢・鄭九平主編 経済日報出版社がある。「冤罪」ということを伝える書題。 ・天:空。竇娥は処刑される前に天と地に尋ねている。

※誰幇我:いったい誰がわたし・竇娥を助けようというのか。 ・誰:いったい誰が。反語的表現。 ・幇:援助する。助ける。 ・我:ここでは、竇娥のことになる。

※只落泪漣漣:ただ、涙だけが止めどもなく流れてくる。 *竇娥は刑場へ連れて行かれる時、「地也,不分好歹何爲地。天也,錯勘賢愚枉做天!,只落得兩涙漣漣。」とうたう。ここは竇娥の心情になっての表現。 ・只:ただ…だけが。 ・落:(涙を)こぼす。 ・泪:涙。 ・漣漣:〔れんれん;lian2lian2○○〕さめざめと泣くさま。涙をこぼすさま。




◎ 構成について

十六字令。単調。十六字。平声一韻到底。韻式は「AAA」。。『十六字令』は、『歸字謠』、『蒼梧謠』ともいう。この『歸字謠』は、『歸自謠』や『歸國謠』とは異なる。韻脚は「冤天漣」で、詞韻第七部平声。

(韻)。
○○●○(韻)。
○○●,
●●○○
(韻)。
平成19.2.11
      2.12



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