伊勢丘人長相思題囲碁　日本漢詩選詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩 Ribengushi


長相思　　題囲碁
	伊勢丘人
聽鳥聲聽鳥聲一望千山心自平茫茫萬里情黑丁丁白丁丁三看碁枰意不平延延半劫爭

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長相思　　囲碁に題す

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　
鳥聲を聽き
鳥聲を聽く
一望　千山　　心　自づから平かなり
茫茫　萬里の情

黑くろ　　丁丁ちゃうちゃう
白しろ　　丁丁ちゃうちゃう
碁枰ごへいを三看さんかんすれば　　意こころ　平かならず
延延　半劫はんこうの爭あらそひ

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◎　私感註釈

※伊勢丘人：１943年生。備後福山在住。

※長相思：詞牌。双調小令三十六字。前後片、おのおの三平韻、一畳韻。

※聽鳥聲：鳥の鳴き声に耳をすまし。　・聽：（耳をすまして）聴く。　・鳥聲：鳥の囀り声。

※一望千山心自平：多くの山々を一目で見渡せば、自然とのんびりとなってくる。　・一望：広いながめを一目で見渡す。　・千山：多くの山々。　・自平：自然とのんびりする。

※茫茫萬里情：どこまでも尽きることがないこの思い。　・茫茫：〔ばうばう；mang2mang2○○〕広々として遙かなさま。とりとめもなくぼんやりとしているさま。草などが多く生えて、乱れているさま。

※黑丁丁：黒い碁石を打ち続け。　・丁丁：〔ちゃうちゃう；ding1ding1○○〕物を続けて打つ音。ここでは碁を打つ音をいう。蛇足になるが、木を伐（き）る音「丁丁」は〔たうたう；zheng1zheng1○○〕。

※白丁丁：白い碁石を打ち続ける。

※三看碁枰意不平：何度碁盤を見ても心は穏やかにはならないで。　・三看：何度も見る。　・碁枰：〔ご（き）へい；qi2ping2○○〕碁盤。　・意：こころ　・不平：穏やかでない。

※延延半劫爭：碁の勝負はずっと長く続いている。　・半劫爭：「半劫の争い」に説明を戴いた。「半劫の争い」というのは、「劫争い」に勝ったときに、１目だけ有利になるのです。碁では、黒を持つと、先に打つのですから、それだけ有利な筈ですから、６目半勝たなければなりません。古くは、こういう先手後手のハンディキャップはありませんでしたが、昭和時代の途中からは四目半、それから五目半となり、最近から六目半となりました。私が眼が好く碁を徹夜で打っていたころは五目半でした。半というのは、本来碁の勝負には存在しない数値ですが、引き分けを避けるための数値です。４　碁の勝負には、半目勝ちというのが、しょっちゅうあります。盤面を数えて、黒が６目勝っていたら、黒の半目負けで、７目勝っていたら黒の半目勝ちなのです」ということである。

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◎　構成について

三十六字。双調。平韻　一韻到底。韻式は「ＡＡＡ　ＡＡＡ」。赤の部分は、畳字。青の部分も、畳字にする。上片と下片は同一の詞調。

●○，
●○。（韻）。
●○○●○，（韻）
○●○（韻）。

●○，
●○。（韻）。
●○○●○，（韻）
○●○（韻）。