喫粥 | ||
龍公美 |
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白髮蒼顏老腐儒, 朝朝喫粥養殘軀。 近來疏策詩章事, 閑却花前酒一壺。 |
白髮 蒼顏 の老 腐儒 ,
朝朝 粥 を喫 して殘軀 を養ふ。
近來疎策 なり詩章 の事,
閑却 す花前 酒 一壺 。
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◎ 私感註釈
※龍公美:〔たつのきみよし〕 江戸時代後期の彦根藩藩儒。正徳五年(1715年)〜寛政四年(1792年)。本姓は武田。字は君玉。号は草廬(艸廬)、竹隠、松菊主人、呉竹翁など。京都伏見の人。荻生徂徠、太宰春台の学を慕い、宇野明霞に師事する。彦根藩藩儒となり、後に帰京して著述に専念する。詩を能くし、詩社・幽蘭社を開く。また、詩書画や和歌にも秀れていた。
※喫粥:かゆを食べる。 ・喫:食べる。 ・粥:かゆ。
※白髪蒼顔老腐儒:白髪頭に年老いて衰えたあおぐろい顔のくされ儒者(は)。 ・蒼顔:年老いて衰えたあおぐろい顔。 ・腐儒:くされ儒者。役に立たない学者。
※朝朝喫粥養残躯:毎朝、かゆを食べて、年老いて衰えた老後のわずかばかりの身命を養っている。 ・朝朝:毎朝。 ・残躯:年老いて衰えたからだ。老後のわずかばかりの身命。残生。余生。伊達政宗の『醉餘口號』に「馬上少年過,世平白髮多。殘躯天所赦,不樂是如何。」とある。
※近来疎策詩章事:近ごろは、詩にも親しみが少なく(なって)。 ・近来:近ごろ。最近。 ・疎策:親しみが少ない。よそよそしい。 ・詩章:詩。詩篇。
※閑却花前酒一壺:花見酒も、なおざりになっている。 ・閑却:すてておく。なおざりにする。 ・花前:花の咲いているところ。北宋・歐陽脩の『別滁』に「花光濃爛柳輕明,酌酒花前送我行。我亦且如常日醉,莫ヘ弦管作離聲。」とあり、明・唐寅の『花下酌酒歌』に「九十春光一擲梭,花前酌酒唱高歌。枝上花開能幾日,世上人生能幾何。好花難種不長開,少年易過不重來。人生不向花前醉,花笑人生也是呆。」とある。隋・薛道衡の『人日思歸』に「入春纔七日,離家已二年。人歸落雁後,思發在花前(この用例は)。」とある。なお、隋・薛道衡の『人日思歸』に「入春纔七日,離家已二年。人歸落雁後,思發在花前。」は、ここでの用法とは異なる。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「儒躯壷」で、平水韻上平七虞(儒躯壷)。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●●○,(韻)
○○●●●○○。(韻)
●○○●○○●,
○●○○●●○。(韻)
平成27.11.7 11.8 |
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