レコードの針を落すとびっくりするほど明るい「FAIRY TALES」が流れてきます。あのかつてのナベサダのカルフォルニアシャワーを思わせるウェストコーストの明朗さとでも言いましょうか。そんな感じ。ジョーサンプルのキーボードが流れるようなキータッチで実に心地良い。
2曲目の「MARCLLA'S DREAM」は一転してスタティック。ジョーサンプルが演出する夜明けのアスファルトジャングル、冷たい感触のコンクリートのブルース。イメージとして大藪晴彦の世界が浮かびます。東宝のハードボイルド路線、「野獣の復活」、「野獣都市」、「復讐のテクニック」が彷彿とし、さながら孤独なスナイパーを思わせるウィルトン・フェルダーの、静寂を破る一発の銃弾にも似たソプラノサックスの硬質な音色が聴く者の感性を抉ります。
「BAYOU BOTTOMS」は螺旋のメロディーとでもいいましょうか、ウイルトン・フェルダーのタンギングトーンに手招きされながらめくるめくクルセイダーズの新世界へ導かれます。
今回のアルバム、ジョーサンプルがすごくリキが入ってる感じ。「MERRY-GO-ROUND」の朝まだき、霧の立ち込める舗道を走るマラソンマンのイメージ。ジョーサンプルのキーボードはまるで色とりどりのビー玉が鍵盤の上を転がるように軽やかで、華麗。スティックスフーパーの刻むリズムもすこぶる快調。
B面「COSMIC REIGN」、オリエンタルムード漂う出だし、ブルースリーの雄叫びよろしくウィルトンフェルダーのサックス冴え渡り、これぞクルセイダーズ風カンフーアクションです。
カーテンコールは「SNOWFLAKE」。ウイルトンフェルダー、ジョーサンプル、スティックスフーパーのプレイはあくまでも軽やか。このアルバム、夜明けとか朝のイメージを浮かべたのは、ほかでもないこのあとに続くクルセイダーズ第二黄金期のかすかな予兆が何がしか感じ取れたためでしょうか。
|