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気がつけば Fall in Love

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第13章

 そして次の日の夜―――
 父親が重力室へと廊下を急ぎ足で歩いて行くところにブルマは出くわした。
「どうかしたの、父さん」
「またベジータくんが重力装置を壊したんだよ。まったく無茶ばかりする男だ」
「それで、あいつはどこへ?」
「自分の部屋に戻ったんじゃないのか。今すぐ直せなどと無理を言いおって……。
 いいからおまえは早く寝なさい。明日は早いんだろう。花嫁が目の下にクマを作ってたら式が台無しだ」
 歩み去る父親の後姿を見送り、ブルマは自室へ戻りかけた。が、思い直してベジータの部屋へと足を向けた。彼がここへ住むようになって以来、初めてのことである。
 ノックをして「入るわよ」とドアを開けると、正面に窓、その左手に作りつけのクロゼット、一対のソファにプロテクターを乗せたテーブルが目に入った。
 機能だけをむき出しにした殺風景な部屋だ。
 ベジータは右手の壁際に寄せたベッドに前かがみに腰掛けている。シャワーを浴びたばかりなのか、逆立った髪はまだ湿っていた。
 新しいアンダースーツを身に着けているところを見ると、重力装置の修理が済み次第、またあそこにこもるつもりなのだろう。
 自動ドアがブルマの背後でゆっくり閉まる。これでもう逃げ場はない。
(やっぱりヤムチャの言う通り、あたしはちょっと向こう見ずかもね……)
 昨日の殺気立ったベジータを思い出し、後悔がちらりと胸をよぎったが、振り払うように自分を奮い立たせると、ブルマは男の方へ一歩進んだ。
「何をしに来た。おまえなどに用はない。失せろ」
 不快そうに眉根を寄せ、ベジータは鋭い視線でブルマを射抜く。
「ごあいさつね。あんたのことが心配で来たっていうのに」
「余計なことだ。いいか、それ以上オレに近づくな。何をするかわからんぞ」
 すさんだ表情のままベジータが言う。地の底から響いてくるような声だ。
 彼の体の奥深くでは、自分への怒りと絶望が血を吐きながら暗く冷たいマグマとなり、出口を求めてのたうちまわっているのだろう。
 でも、ここでひるむわけにはいかない。ブルマはそっと深呼吸してから口を開いた。
「そりゃああたしだって死にたくないし、人造人間を倒すためにあんたには強くなってもらいたいわよ。だから今まで無茶な特訓にも目をつむってきたし、協力もしてきたわ。でも、目の前であんたがむざむざ自滅していくのがわかってて、これ以上ほっとけないじゃない」
 ベジータはわずかに目を細めた。
「オレが自滅するだと……?」
「そうよ。あんたのやってることは、ただ自分で自分を痛めつけてるだけよ。まるで孫くんにかなわない自分が憎くて憎くてたまらないみたい」
「なんだと!?」
「ちょっとだけ立ち止まって周りを見回してみたら? 安らぎを感じることも時には必要だわ。愛する人や励ましあえる仲間がいれば、それだけですごいパワーが湧いてくるものよ。そう……孫くんみたいに」
「オレにはそれがないからやつに追いつけんというわけか」
 皮肉な笑みをもらしたかと思うと、彼は語気を荒げた。
「ふざけるな! 家族だの仲間だの、オレには必要ない。
 愛だと?―――安らぎだと?―――フン、笑わせやがるぜ。
 誰かとつるんで強くなるくらいなら、オレはたったひとりで死んだほうがましだ!!」


12章だ! / 次は14章だが・・・読むのか? オレはちょっと恥ずかしいぞ
(icon作成:みなみさん)

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