気がつけば Fall in Love
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第6章
「あらぁ、ベジータちゃん、どうしたの? そんなに急いで」 部屋のドアを開けたとたん、ブルマの母親であるブリーフ夫人は甘ったるい声をあげた。なれなれしくするな、と何度も言っているのだが、この女には馬耳東風だ。 険しい顔で彼は尋ねた。 「おまえの夫はどこだ」 「さあ、どこへ行ったのかしら。さっきお茶に誘おうと思ったんだけど、出かけちゃったみたいなのよ。ねえ、ベジータちゃん、あなたちょうどいいとこに来たわ。一緒にお茶しないこと?」 夫人は嬉しそうに彼の腕をとって部屋に引き入れようとする。ベジータは呆れて絶句した。 地球の女というのはみんな、あの女のように生意気か、この母親のように厚かましいやつらばかりなのか。 地球人の女を妻に迎えたカカロットのやつは、とんでもなく物好きに違いない。 夫人の腕を邪険にふりほどき、彼はさっさとその場をあとにした。あとに残された夫人はにこにこしながらその後姿を見送った。 「まぁ、照れ屋さんね」 いつ戻るかわからない博士の帰りをじりじりしながら待つ気分にはなれない。戦闘服さえ手に入ればナメック星にいた頃のように劇的なパワーアップが期待できるような気がする。スランプがベジータの焦りに拍車をかけていた。 博士がだめならあとはあの女に頼むしかない。この際ぜいたくは言ってられなかった。そのままの勢いでベジータはブルマの部屋まで行くと、ノックもせずに中へ足を踏み入れた。 一瞬、部屋の空気が止まってしまったかのように見えた。ベジータの目に飛び込んできたのは、風呂上がりの体にタオルの一枚すら引っかけていないブルマの姿だった。長湯をしたのか、鈍く光を放つ肌が薄桃色に染まり、みずみずしい少女時代のプロポーションに女盛りの脂肪が加わって、みごとな曲線を描いている。 あまりにも刺激的なその姿に彼の体が硬直してしまったのと、彼女の悲鳴が上がったのが同時だった。 「何よ何よ何よーーっ!! レディの部屋にいきなり入ってくるなんて失礼じゃないのっ」 脱ぎ捨ててあった服で体を隠して叫びながら、ブルマは空いている手で近くにあった本や工具やTVのリモコンなどを手当たり次第ベジータ目がけて投げつけた。 それらをよけながら、あわてて部屋の外へ出ようとしたベジータは、彼女が投げた雑多な物に足を取られて不覚にも尻餅をついてしまった。そこへ頭からさらにいろんな物が降ってくる。やっと声が出せるようになった彼はしどろもどろになって口走った。 「げげげげ下品なお女だ。すすすす素っ裸で……」 「なに言ってんのよっ! あたしの部屋であたしがどんなかっこしてようと勝手でしょ!! あんたこそ早く出て行きなさいよ!!」 言われるまでもない。ブルマの部屋から脱出し、廊下をかなり行ったところで、彼は深くため息をついた。 噴き出す汗と共に怒りがこみあげてくる。彼はぎりぎり歯ぎしりしながらうなった。 「あ、あの女、今にぶっ殺す……!」 あんな女に重要なことを頼もうとした自分の不明を恥じたとき、その肝心の戦闘服を女の部屋に落としてきてしまったことに気づいた。 とっさに取り返しに行こうとしかけたが、さっきの二の舞は演じたくなかったし、あんな醜態をみせた後の気まずさも手伝って、ベジータは仕方なく自分の部屋へ戻った。 投げ出すようにベッドに腰をかけた。が、胸の動悸はなかなかおさまらない。振り払っても振り払っても、網膜にはブルマの裸体が強く焼き付いてしまい、いつまでも彼を悩ませた。 |
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(icon作成:みなみさん)
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