気がつけば Fall in Love
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第17章
爆竹が続けざまにけたたましく鳴った。荒っぽい祝福にブルマは悲鳴のような歓声をあげる。 教会の石段を上がったところで待ち構えていた学生時代の悪友たちに囲まれて、おめでとうのキスや握手や抱擁を受けながら、彼女は頬を上気させて笑った。 遠くから消防車のサイレンが近づいてくる。 「やだ、ここへ来るんじゃない?」と、悪友のひとりが心配そうにつぶやいた。 「派手にやりすぎたかな」 「叱られるわよ、きっと」 口々に囁きあう彼らの横を何台もの消防車が素通りして行き、その場に居合わせた人々は、みな胸をなでおろして見送った。 かなり大きな火事なのだろう。いくつものサイレンの音は、錯綜しながらかなたへと消えて行った。 ブルマは父親の腕を取った。教会のドアが開き、結婚行進曲が流れ出す中、新婦とその父は列席者の称賛のため息と囁きに囲まれて、ヴァージンロードを静かに歩いてゆく。 祭壇の前では年配の牧師とやや照れた表情の新郎が彼女を待っていた。 父親から花婿の手へと引き継がれ、ブルマは祭壇の前でヤムチャと並んで立った。低く柔らかな牧師の声がこぢんまりした教会の中に響き渡る。 「汝は病める時も健やかなる時も――――」 永遠の愛を誓うかと問われてヤムチャが力強く答える。 「はい、誓います」 続いてブルマの番だった。 「―――誓いますか」 顔を上げた彼女の目に窓の外の景色が飛び込んできた。 (え―――!?) カプセルコーポが燃えている。 はるかかなた、街なかでひときわ高く (ベジータ!!) とたんに世界のすべてが色褪せた。目に見える何もかもがジグソーパズルのピースのようにバラバラに砕け散り、意味を失ってゆく。 (あたし……あたしはこんなところで何をしているの……) 「誓いますか」 新婦の返事のないのを緊張のためと見てとったのか、穏やかな笑みを浮かべて牧師が重ねて訊いた。教会にいる者はブルマ以外誰ひとりとしてカプセルコーポの惨状に気づいてはいない。 ブルマは血の気のない顔をようやく上げた。 その時、静まり返った教会の中にドアの開く音が大きく響いた。 「ベジータ……」 入り口に現れた男の姿を認めるや、ブルマは信じられないというようにつぶやいた。 男の胸を覆っていたはずのプロテクターは壊れ、枠組みだけになって肩からぶらさがり、アンダースーツはボロボロに破れて両膝が抜け、左腕がむき出しになっている。体の中で戦闘服に覆われていないところは傷だらけだった。 |