題雲脚集 |
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高杉晉作 | ||
脱却雙刀去, 超然出俗群。 雲奴與雲衲, 游跡似浮雲。 |
雙刀 を 脱却し去り,
超然 俗群を出 づ。
雲奴 と雲衲 と,
游跡 浮雲 に似たり。
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◎ 私感註釈
※高杉晋作:幕末の尊皇攘夷運動の志士。長州藩士。天保十年(1839)〜慶應三年(1867)。病歿。
※題雲脚集:雲脚集(の初めを飾って)。 *『高杉東行詩文集』(67/146コマ 国立国会図書館『高杉東行詩文集』)(大正七年刊)に「『雲脚集』…今將游海南名其稿曰雲脚集…」とある。(この詩は68コマ目/146コマ)。元治二年(1865年)の四国・道後温泉等の逃避行の時期の詩集の初めを飾る詩。≒四国での詩 ≒逃避行の詩。≒「おうの(後の谷梅処)の詩」ということを韜晦したか。(以下二行、wikipedia「高杉晋作」より要旨抜粋:)高杉晋作は、元治二年(1865年)三月に、俗論派の首魁・椋梨藤太らを排斥して藩の実権を握る。元治二年(1865年)四月には、下関開港を推し進めたことにより、攘夷・俗論両派に命を狙われたため、愛妾・おうのとともに四国へ逃れた。 ・題-:…を詩題にしてを詩を作る。 ・雲脚集:高杉晋作の自作漢詩集四部作の一の名称。四国・道後温泉等の逃避行の時期の詩集。 ・雲脚:雲の流れ動くさま。
※脱却双刀去:(武士が差す大刀と小刀の)両刀からすっかり抜け出して。 ・脱却:すっかり抜け出る。抜け出す。ぬぎすてる。ここでは長州からの脱出を謂う。 ・双刀:両刀。武士が差した大刀と小刀。 ・去:取り除く。
※超然出俗群:(長州藩の)「俗論派」にかかわらないで逃げだした。 ・超然:俗世間にかかわらないさま。失意のさま。*幕末の長州藩内の抗争である「正義派」「俗論派」等の党派争いを乗り越え逃げ出して。 ・俗群:長州藩の「俗論派」を指す。
※雲奴与雲衲:愛妾・おうのと雲水の僧(=高杉晋作)と。 ・雲奴:高杉晋作の愛人「(うんぬ」=「(お)うの」のことか。なお、この作は作者が道後温泉へ脱出した時のもので、愛人の おうの を連れての逃避行だった。おうのを詠った詩に高杉晉作の『數日來鶯鳴檐前不去 賦此贈鶯』に「一朝檐角破殘夢,二朝窗前亦吟弄。三朝四朝又朝朝,日日來慰吾病痛。君於吾非有舊親,又無才恩及君身。君何於我如此厚,吾素人間不容人。故人責吾以詭智,同族目我以放恣。同族故人尚不容,而君容吾果何意。君勿去老梅之枝,君可憩荒溪之湄。寒香淡月我所欲,爲君執鞭了生涯。」がある。 ・与:と。and。【A與B】:読み下しは「AとBと」。 ・雲衲:衲衣 (のうえ) を着けて修行に励む禅僧。=雲水。
※游跡似浮雲:(二人の)さまよった旅路は、空中に浮かび漂う雲に似ている。 ・游跡:さまよったあとの意。 ・游:さまよう。旅行する。 ・浮雲:空中に浮かび漂う雲。明・王陽明(王守仁)の『泛海』に「險夷原不滯胸中,何異浮雲過太空。夜靜海濤三萬里,月明飛錫下天風。」とある。
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◎ 構成について
韻式は、「AA」。韻脚は「群雲」で、平水韻上平十二文。この作品の平仄は、次の通り。
●●○○●,
○○●●○。(韻)
○○●○●,
○●●○○。(韻)
平成29.8.26 8.27 8.28 8.30 8.31 9. 1 9. 4 9. 5 |
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