![]() |
![]() |
|
![]() |
||
櫻花 | ||
草場船山 |
||
西土牡丹徒自誇, 不知東海有名葩。 徐生當日求仙處, 看做祥雲是此花。 |
![]() |
西土の牡丹 徒 らに自ら誇り,
知らず 東海に名葩 有るを。
徐生 當日 仙 を求めし處,
看て祥雲 と做 せるは是 れ此 の花。
*****************
◎ 私感註釈
※草場船山:幕末~明治時代の漢学者。文政二年(1819年)~明治二十年(1887年)。草場佩川の子。肥前(現・佐賀県)多久の人。名は廉。字は立大。古賀侗庵、篠崎小竹に学ぶ。藩校で教え、後、伊万里に学舎を設立した。
※桜花:サクラの花。敷島の大和心の象徴である日本の国の花。
※西土牡丹徒自誇:西の国・中国は牡丹(ぼたん)の花をいたずらに自慢する(が)。 ・西土:日本にとって西に位置する国で、ここでは、中国を指す。≒漢土。唐土。一般には:西方の地。西周の国。長安。蜀。インド。西洋。 ・牡丹:ボタン。古来、中国で貴ばれた花。 ・徒:〔と;tu2○〕むだに。いたずらに。 ・自誇:〔zi4kua1●●〕自慢する。誇る。
※不知東海有名葩:東海の日本に、名花(サクラ)があることを知らないようだ。 ・不知:知らない。わからない。…かもしれない。…だろうか。初唐・張若虚の『春江花月夜』に「春江潮水連海平,海上明月共潮生。灩灩隨波千萬里,何處春江無月明。江流宛轉遶芳甸,月照花林皆似霰。空裏流霜不覺飛,汀上白沙看不見。江天一色無纖塵,皎皎空中孤月輪。江畔何人初見月,江月何年初照人。人生代代無窮已,江月年年祗相似。不知江月待何人,但見長江送流水。白雲一片去悠悠,青楓浦上不勝愁。誰家今夜扁舟子,何處相思明月樓。可憐樓上月裴回,應照離人妝鏡臺。玉戸簾中卷不去,擣衣砧上拂還來。此時相望不相聞,願逐月華流照君。鴻雁長飛光不度,魚龍潛躍水成文。昨夜閒潭夢落花,可憐春半不還家。江水流春去欲盡,江潭落月復西斜。斜月沈沈藏海霧,碣石瀟湘無限路。不知乘月幾人歸,落月搖情滿江樹。」とあり、晩唐・杜牧の『泊秦淮』「煙籠寒水月籠沙,夜泊秦淮近酒家。商女不知亡國恨,隔江猶唱後庭花。」
とある。 ・東海:東方の海。東方大海の中の仙山。日本を指す。清・康有爲の『戊戌八月國變紀事』に「歴歴維新夢,分明百日中。莊嚴對宣室,哀痛起桐宮。禍水滔中夏,堯臺悼聖躬。小臣東海涙,望帝杜鵑紅。」
とある。 ・葩:〔は;pa1○〕花。
※徐生当日求仙処:徐福が当時、仙薬を尋ね歩いたところ(に)。 *この句、明・朱元璋(大明太祖高皇帝)の『御製賜和』中の「當年徐福求僊(求遷≒求仙)藥」を踏まえたか。 ・徐生:徐さん。徐福(=徐巿(じょふつ)のこと。秦・始皇帝の時代の人物。秦・始皇帝のために東海の仙島(ここでは日本)から不老不死の霊薬を持ち帰ろうとした人物。徐巿(じょふつ=徐福)は始皇帝に上書して皇帝のために東海の仙島に渡り、不死の薬を求めてきて献上するとして、援助を得、少年少女(や技術者、五穀の種子)を積んで出かけた。『史記・秦始皇本義』「二十八年」(秦・始皇帝二十八年:紀元前219年:孝霊天皇七十二年)に「齊人徐巿【徐巿(じょふつ)=徐福(じょふく)。なお「巿(
)」〔ふつ;fu4●:4劃〕と「市(
)」〔し;shi4●:5劃〕とは別字】等上書,言海中有三神山,名曰蓬莱、方丈、瀛洲,仙人居之。請得齋戒,與童男女求之。於是遣徐巿發童男女數千人,入海求仙人。」とあり、その古註に「正義括地誌云:『亶洲在東海中,秦始皇使徐福將童男女入海求仙人,止在此州,共數萬家。』」とある。また、『史記・淮南衝山列伝』によると、秦の始皇帝に、「東方の三神山に不老不死の霊薬がある」と上書し、始皇帝の命を受け、三千人の童男童女と、それをたすけるために、五穀の種子と諸々(もろもろ)の技術者を携えてでかけた。徐福は、平野と湿地帯を得て、その地にとどまって王となり、戻らなかった。『史記・淮南衡山列伝』に「秦皇帝大説,遣振(振:幼童)男女三千人,資之五穀種種百工而行。徐福得平原廣澤,止王不來。」とある。北宋・歐陽脩の『日本刀歌』に「昆夷道遠不復通,世傳切玉誰能窮。寶刀近出日本國,越賈得之滄海東。魚皮裝貼香木鞘,黄白閒雜鍮與銅。百金傳入好事手,佩服可以禳妖凶。傳聞其國居大島,土壤沃饒風俗好。其先徐福詐秦民,採藥淹留丱童老。百工五種與之居,至今器玩皆精巧。前朝貢獻屢往來,士人往往工詞藻。徐福行時書未焚,逸書百篇今尚存。令嚴不許傳中國,舉世無人識古文。先王大典藏夷貊,蒼波浩蕩無通津。令人感激坐流涕,鏽澀短刀何足云。」
とあり、明・朱元璋(大明太祖高皇帝)の『御製賜和』に「熊野峰高血食祠,松根琥珀也應肥。當年徐福求僊藥,直到如今更不歸。」
とあり、日本・絶海中津の『應制賦三山』に「熊野峰前徐福祠,滿山藥草雨餘肥。只今海上波濤穩,萬里好風須早歸。」
とある。 ・当日:〔たうじつ;dang1ri4○●〕当時。その時。その頃、と昔を指す。なお、〔たうじつ;dang4ri4●●〕は:その日。当日。の意となる。ここは、前者の意。 ・求仙:不老不死の薬や吉凶等を神に尋ね求める。
※看做祥雲是此花:吉祥の雲(が立ち籠めているか)のように見えたのは、この花(=桜)(の雲なすさま)であった。 ・看做:〔kan4zuo4●●〕(…と)見なす。(…と)考える。 ・祥雲:めでたい雲。吉祥の雲。 ・…是此■:「…は、この■である」。 ・是:…は…である。これ。これ(…なり)。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。中唐・白居易の『春題湖上』に「湖上春來似畫圖,亂峯圍繞水平舖。松排山面千重翠,月點波心一顆珠。碧毯線頭抽早稻,青羅裙帶展新蒲。未能抛得杭州去,一半勾留是此湖。」とある。
***********
◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「誇葩花」で、平水韻下平六麻。この作品の平仄は、次の通り。
○●●○○●○,(韻)
●○○●●○○。(韻)
○○○●○○●,
●●○○●●○。(韻)
令和元.10.30 |
![]() トップ |