広瀬旭荘小園　詩詞世界　碇豊長の詩詞：漢詩


小園

	廣瀨旭莊
花香成暖霧，苔氣吹涼露。日午寂無人，一蟬吟綠樹。

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　小園(せうゑん)　　　　　　　　

花香(くゎかう)　　暖霧(だんむ)と成り，
苔氣(たいき)　　涼露(りゃうろ)を吹く。
日午(にちご )　　寂(せき)として人無し，
一蟬(いっせん)　　綠樹に吟(ぎん)ず。

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◎　私感註釈

※広瀬旭荘：江戸後期の儒者・漢詩人。豊後国（大分県）の人。名は謙。字は吉甫。号して旭莊。広瀬（廣瀨）淡窓の弟。兄・淡窓の没後、代わって家塾の咸宜園を継ぐ。文化四年（１８０７年）～文久三年（１８６３年）。

※小園：小さな庭で。小さな畑で。＊作者の庭か。なお、小苑は、皇帝の御苑名。南宋・呂祖謙の『野歩』に「石梁俯清流，苔髮明可數。茅簷春晝長，寂寂亭陰午。鳥啼花徑深，風絮浩無主。幽人不可覿，棊聲時出戸。」とある。

※花香成暖霧：花の香りが暖かい霧となって。　・暖霧：暖かな霧。＊起句と承句は対にしており、「暖霧」「涼露」は対になっている。

※苔気吹涼露：苔の醸（かも）す匂いや湿気が涼しげな露となって吹きつける。　・苔気：苔の醸（かも）す匂いや湿気か。　・吹：吹きつける。

※日午寂無人：真昼（なのに）人がいなくて、寂しく静かで。　・日午：〔にちご；ri4wu3●●〕真昼。正午。≒亭午：昼に至る。昼になる。真昼。正午。　・寂：〔せき；ji4●〕さびしいさま。静かなさま。晩唐？・朱慶餘の『宮中詞』に「寂寂花時閉院門，美人相並立瓊軒。含情欲説宮中事，鸚鵡前頭不敢言。」とある。　・寂無-：静かで、…が無い、意。しんとして、…が無い、意。盛唐・王維の『辛夷塢』に「木末芙蓉花，山中發紅萼。澗戸寂無人，紛紛開且落。」とある。

※一蝉吟緑樹：一匹のセミ（だけ）が、緑の木で鳴いている。　・吟：〔ぎん；yin2○〕鳴（な）く。詩歌を口ずさむ。

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◎　構成について

韻式は、「ａａａ」。韻脚は「霧露樹」で、平水韻去声七遇。この作品の平仄は、次の通り。

○○○●●，（韻）
○●○○●。（韻）
●●●○○，
●○○●●。（韻）