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曉發白河城 |
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宮島誠一郞 | ||
悲歌一曲夜看刀, 風雨燈前雞亂號。 宿酒纔醒驅馬去, 白河秋色曉雲高。 |
悲歌 一曲夜 刀 を看る,
風雨 燈前に雞 亂れ號 く。
宿酒 纔 かに醒 め 馬を驅 りて去る,
白河 の秋色 曉雲 高し。
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◎ 私感註釈
※宮島誠一郎:幕末から明治にかけての米沢藩士。官僚、政治家。天保九年(1838年)~明治四十四年(1911年)は、幼名は熊蔵。諱は吉久。号して栗香。奥羽越列藩同盟の交渉時に、中心的な役割を果たした。
※暁発白河城:朝、白河の街を出発して。 *作者(=宮島誠一郎)が奥州・白河で、緊急事態に遭遇し(=水戸の天狗党の蹶起を聞いて)、(仙台に向かって)旅立った。 ・暁発-:朝に…を出発する。北魏の『木蘭詩』に「旦辭爺孃去,暮宿黄河邊。不聞爺孃喚女聲,但聞黄河流水鳴濺濺。旦辭黄河去,暮至黑山頭。不聞爺孃喚女聲,但聞燕山胡騎鳴啾啾。」とあり、梁詩・『隴頭歌辭』に「朝發欣城,暮宿隴頭。寒不能語,舌卷入喉。」
とあり、盛唐・李白の『早發白帝城』「朝辭白帝彩雲間,千里江陵一日還。兩岸猿聲啼不住,輕舟已過萬重山。」
や、『峨眉山月歌』「峨眉山月半輪秋,影入平羌江水流。夜發清溪向三峽,思君不見下渝州。」
とある。≒「朝發-」。 ・白河城:白河の街。白河は現・福島県中通り南部に位置し、白河の関が置かれた、陸奥(みちのく)の玄関口。
※悲歌一曲夜看刀:悲しげにうたい、(世を憤り嘆いた)詩を一度吟じて、夜に刀をながめ。 ・悲歌:悲しみをうたった歌。また、悲しげに歌う。ここは、「悲歌忼慨」(かなしげにうたい、世を憤り嘆く)の意で使う。晋・陸機の『短歌行』に「置酒高堂,悲歌臨觴。人壽幾何,逝如朝霜。時無重至,華不再陽。蘋以春暉,蘭以秋芳。來日苦短,去日苦長。今我不樂,蟋蟀在房。樂以會興,悲以別章。豈曰無感,憂爲子忘。我酒既旨,我肴既臧。短歌有詠,長夜無荒。」とあり、南宋・陸游の『樓上醉歌』に「我遊四方不得意,陽狂施藥成都市。大瓢滿貯隨所求,聊爲疲民起憔悴。瓢空夜静上高樓,買酒捲簾邀月醉。醉中拂劍光射月,往往悲歌獨流涕。剗却君山湘水平,斫却桂樹月更明。丈夫有志苦難成,修名未立華髪生。」
とある。 ・看:(物を)臨みみる。ながめる。意識的にみる。
※風雨灯前鶏乱号:あらしのような風まじりの雨の降るところの灯(は危険が迫っていて今にも滅びそうなさまで、)鶏はみだれ鳴いている。=ただならぬ雰囲気である。 ・風雨:風と雨と。風まじりの雨。あらし。厳しい情況を謂う。藤井竹外の『風雨望寧樂』に「半空涌出兩浮圖,更有伽藍俯九衢。十二帝陵低不見,黑風白雨滿南都。」とある。「風前の灯火(ともしび)」(危険が迫っていて、今にも滅びそうなことの喩え)。 ・乱号:みだれ鳴く。
※宿酒纔醒駆馬去:前夜来の飲酒も、ようやく(酔いから)さめて、馬を走らせて行(けば)。 ・宿酒:前夜からの飲酒、の意。 ・纔:やっと。ようやく。やや。はじめて。今しがた。わずかに。 ・醒:(酒の酔いから)さめる。 ・駆馬:馬を走らす。 ・去:行く。去る。
※白河秋色暁雲高:白河の秋の気配は、明け方の雲が高い。 ・秋色:秋の気配。秋の景色。 ・高:(秋空が)高く(天気が爽やかである)=「秋高」。
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◎ 構成について
韻式は、「AAA」。韻脚は「刀號高」で、平水韻。この作品の平仄は、次の通り。
○○●●●◎○,(韻)
○●○○○●○。(韻)
●●○○○●●,
●○○●●○○。(韻)
平成29.5.31 6. 1 |
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