Huanying xinshang Ding Fengzhang de wangye

                            


前赤壁賦
北宋・蘇軾        


壬戌之秋,
七月既望,
蘇子與客泛舟遊於赤壁之下。
清風徐來,
水波不興。
擧酒屬客,
誦『明月』之詩,
歌『窈窕』之章。
少焉,
月出於東山之上,
徘徊於斗牛之間。
白露橫江,
水光接天。
縱一葦之所如,
凌萬頃之茫然。
浩浩乎如馮虚御風,
而不知其所止;
飄飄乎如遺世獨立,
羽化而登仙。

於是飮酒樂甚,
扣舷而歌之。
歌曰:
「桂櫂兮蘭槳,
撃空明兮泝流光。
渺渺兮予懷,
望美人兮天一方。」
客有吹洞簫者,
倚歌而和之。
其聲鳴鳴然,
如怨如慕,
如泣如訴;
餘音嫋嫋,
不絶如縷,
舞幽壑之潛蛟,
泣孤舟之嫠婦。

蘇子愀然,
正襟危坐而問客曰:
「何爲其然也?」
客曰:
「『月明星稀,
烏鵲南飛,』
此非曹孟德之詩乎?
西望夏口,
東望武昌,
山川相繆,
鬱乎蒼蒼,
此非孟德之困於周郞者乎?
方其破荊州,
下江陵,
順流而東也,
舳艫千里,
旌旗蔽空,
釃酒臨江,
橫槊賦詩,
固一世之雄也,
而今安在哉?
況吾與子漁樵於江渚之上,
侶魚蝦而友麋鹿,
駕一葉之輕舟,
擧匏樽以相属;
寄蜉蝣於天地,
渺滄海之一粟。
哀吾生之須臾,
羨長江之無窮。
挾飛仙以遨遊,
抱明月而長終。
知不可乎驟得,
託遺響於悲風。」


蘇子曰:
「客亦知夫水與月乎?
逝者如斯,
而未嘗往也;
盈虚者如彼,
而卒莫消長也。
蓋將自其變者而觀之,
則天地曾不能以一瞬;
自其不變者而觀之,
則物與我皆無盡也。
而又何羨乎!
且夫天地之間,
物各有主,
苟非吾之所有,
雖一毫而莫取。
惟江上之淸風與山間之明月,
耳得之而爲聲,
目遇之而成色。
取之無禁,
用之不竭,
是造物者之無盡藏也,
而吾與子之所共適。」


客喜而笑,
洗盞更酌。
肴核既盡,
杯盤狼藉。
相與枕藉乎舟中,
不知東方之既白。




『古文眞寶』卷一 十一~十三葉『前赤壁賦』(慶安辛卯年(1651年)版)
 
『正文章軌範』卷七 十二、十三葉

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前・赤壁の賦
            
壬戌(じんじゅつ)の秋,
七月既望( き ばう)
蘇子 (かく)と舟を()かべて 赤壁(せきへき)(もと)に遊ぶ。
淸風 (おもむろ)(きた)りて,
水波 (おこ)らず。
酒を()げ 客に(しょく)して,
『明月』の詩を (しょう)し,
窈窕(えうてう)』の章を 歌ふ。
少焉(しばらく)して,
月 東山(とうざん)の上に()で,
斗牛( と ぎう)(かん)徘徊(はいくゎい)す。
白露(はく ろ ) (かう)(よこた)はりて,
水光(すゐくゎう) 天に接す。
()()く所に (したが)ひて,
萬頃(ばんけい)茫然(ばうぜん)たるを (しの)ぐ。
浩浩乎(かうかう こ )として (そら)()りて (かぜ)()り,
()(とど)まる所を 知らざるが如く;
飄飄乎(へうへう こ )として 世を(わす)れて 獨立し,
羽化( う くゎ)して 登仙(とうせん)するが如し。

(ここ)に於て酒を飮みて樂しむこと(はなはだ)しく,
(げん)(たた)きて (これ)を歌ふ。
歌に(いは)く:
桂櫂(けいたう) 蘭槳(らんさう)
空明(くうめい)()ちて 流光(りうくゎう)(さかのぼ)る。
渺渺(べうべう)たる ()(おも)ひ,
美人を 天の一方(いっぱう)に望む」と。
客に 洞簫(どうせう)を吹く者 有り,
歌に()りて (これ)に和す。
()の聲 鳴鳴然(めいめいぜん)として,
(うら)むが如く 慕ふが如く,
泣くが如く (うった)ふるが如し;
餘音 ( よ いん)嫋嫋(でうでう)として,
絶えざること (いと)の如く,
幽壑(いうがく)潛蛟(せんかう)を 舞はしめ,
孤舟の嫠婦(りふ)を 泣かしむ。

蘇子 愀然(せうぜん)として,
(えり)を正し 危坐(きざ)して 客に問ひて(いは)く:
何爲(なんす)れぞ()(しか)るや?」と。
客 曰く:
「『月 明らかに 星 (まれ)に,
烏鵲(うじゃく) 南飛す』,
()曹孟德(さうもうとく)の詩に非ずや?
西のかた 夏口( か こう)を望み,
東のかた 武昌( ぶ しゃう)を望めば,
山川 (さんせん)()(まと)ひて,
鬱乎(うつ こ )として蒼蒼(さうさう)たり,
()孟德(もうとく)周郞(しうらう)(くるし)められし(ところ)に非ずや?
()荊州(けいしう)を 破り,
江陵(かうりょう)(くだ)して,
流れに(したが)ひて 東するに (あた)りてや,
舳艫(ぢく ろ ) 千里,
旌旗(せい き ) 空を(おほ)ひ,
酒を()みて (かう)(のぞ)み,
(ほこ)を横たへて 詩を賦す,
(まこと)に一世の(ゆう)なれども,
而今( じ こん) (いづ)くに在りや?
(いは)んや (われ)()と 江渚(こうしょ)(ほとり)漁樵(ぎょせう)して,
魚蝦(ぎょ か )(とも)として 麋鹿( び ろく)を友とするをや,
一葉(いちえふ)の輕舟に()り,
匏樽(はうそん)()げて (もっ)()(しょく)し;
蜉蝣( ふ いう)を天地に寄す,
(べう)たる滄海(さうかい)一粟(いちぞく)なり。
吾が生の須臾(しゅゆ)たるを 哀しみ,
長江の(きは)まり無きを (うらや)む。
飛仙を(わきばさ)みて 以て遨遊(がういう)し,
明月を(いだ)きて 長終(ちゃうしゅう)せんことを。
(には)かには()べからざるを 知れば,
遺響( ゐ きゃう)を悲風に(たく)せり」
と。

蘇子 曰く:
「客も亦 ()の水と月とを 知るか?
()く者は ()くの如くなれども,
未だ(かつ)()かざるなり;
盈虚(えいきょ)する者は(かく)の如くなれども,
(つひ)に 消長する()きなり。
(けだ)し 其の變ずる者より()って (これ)(くゎん)ずれば,
(すなは)ち 天地も(かつ)て 以て一瞬なること(あた)はず;
()の變ぜざる者より (これ)(くゎん)ずれば,
(すなは)ち 物と我と (みな)()くる無きなり。
(しか)るを又 何をか(うらや)まんや!
(かつ)()れ 天地の間,
(おのおの)(しゅ) 有り,
(いやしく)(われ)の有する所に (あら)ずんば,
一毫(いちがう)(いへど)も 取ること()し。
()だ 江上(かうじゃう)の淸風と,
山間(さんかん)の明月とのみは,
耳 (これ)を得て 聲を()し,
目 (これ)()ひて 色を成す,
(これ)を取れども 禁ずる無く,
(これ)(もち)ゐれども ()きず,
()れ 造物者(ざうぶつしゃ)無盡藏(むじんざう)なり,
(しか)して (われ)()との 共に適する所なり」
と。

客 喜びて笑ひ,
(さかづき)を洗ひて 更に()む。
肴核(かうかく) (すで)()きて,
杯盤(はいばん)狼藉(らうぜき)たり。
相ひ(とも)に 舟中に枕藉(ちんしゃ)して,
東方の(すで)(しら)むを 知らず。

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◎ 私感註釈

※蘇軾:北宋の詩人。北宋第一の文化人。政治家。字は子瞻。号は東坡。現・四川省眉山の人。景祐三年(1036年)~建中靖國元年(1101年)。三蘇の一で、父:蘇洵の老蘇、弟:蘇轍の小蘇に対して、大蘇といわれる。

※前赤壁賦:『前・赤壁の詩』。「前」の意は、(二部構成の作ではないが、『後赤壁賦』に対し、)「前篇」の意。この賦(=広義の詩。以下、詩と表記)は元豐五年(1082年)七月に湖北の黄岡県の「文赤壁」で作られたものだが、更にその三ヶ月後の十月に再び『赤壁賦』が作られた。七月作詩のものを『前赤壁賦』、後に(十月に)作られた方を『後赤壁賦』と呼び分ける。
 *句読点、段落は『北宋散文』中国散文宝庫(簡体字版) (高克勤編著 上海書店出版社2000年上海)中の『前赤壁賦』(53~59ページ)に依った。文字(=字体)は、『古文眞寶』卷一 十一~十三葉の『前赤壁賦』(慶安辛卯年(1651年)版 写真:上の上側)と『正文章軌範』(写真:上の下側)に主に(明瞭な誤字以外は)従い、読み下しも主として『古文眞寶』と『正文章軌範』に依った。 ・赤壁:三国時代の赤壁の戦いがあったところ。呉の孫権、周瑜、蜀の劉備、諸葛亮が火攻め(自軍の船に薪や油を積んで火焔船とし、連結させて停泊していた敵船隊の中に突っ込ませるという作戦)で、魏の曹操の軍船を撃ち破った場所。湖北省嘉魚県の東北。長江の南岸。三国時代に呉の周瑜が対岸の烏林で魏の曹操を破ったところ。もっとも、蘇軾たちも勘違いした赤鼻の方で、ここでは、赤鼻磯の方のこと。それ故、今では史実通りの本当の戦闘のあった場所を「武赤壁」、それに対して蘇軾がこの『前赤壁賦』や『赤壁賦』『念奴嬌』(大江東去)を作った場所を「文赤壁」ともいう(下掲地図)。戦闘のあった場所は『中国史稿地図集』上冊(郭沫若主編 中国地図出版社)47ページ「赤壁之戦」に詳しい。また、蘇軾が作詞した場所は湖北省黄黄市黄州区公園路の長江北岸の赤鼻山(文赤壁)(武漢の東南東50キロメートル)。『中国歴史地図集』第六冊 宋・遼・金時期(中国地図出版社)27-28ページ「北宋 荊湖南路 荊湖北路」で、武昌の対岸に黄州、黄岡がある。蘇軾自身の詞・『念奴嬌』「大江東去,浪淘盡、千古風流人物。故壘西邊,人道是、三國周郞赤壁。亂石穿空,驚濤拍岸,卷起千堆雪。江山如畫,一時多少豪傑。遙想公瑾當年,小喬初嫁了,雄姿英發。羽扇綸巾,談笑間、檣櫓灰飛煙滅。故國神遊,多情應笑我,早生華髪。人間如夢,一樽還酹江月。」なお、蘇軾の場所に対しての誤解は晩唐・杜牧の『赤壁』で「折戟沈沙鐵未銷,自將磨洗認前朝。東風不與周郞便,銅雀春深鎖二喬。」から起こる。明の羅貫中は『三國演義』の始めに楊慎の『臨江仙』「滾滾長江東逝水,浪花淘盡英雄。是非成敗轉頭空。靑山依舊在,幾度夕陽紅。白髮漁樵江渚上,慣看秋月春風。一壺濁酒喜相逢。古今多少事,都付談笑中。」を掲げている。
 この賦、『莊子』『楚辭・離騷』の文の影響があるが…(謝榜得、頼山陽(『文章軌範』))という。わたしはどこか東晋・陶淵明の『歸去來兮辭』を聯想する。
 賦の構成は、【1.蘇軾と客が舟に乗る前後の情景。⇒2.客の洞簫の演奏のさま。⇒
3.(蘇軾の質問に答えての)客の演奏時の感情の理由(紫色の部分)。⇒4.(客の説明に対して、)蘇軾の物の見方(宇宙観・生命観)(橙色の部分)。⇒5.賦のまとめ。】となる。
 なお、後世、南宋・張孝祥は『念奴嬌』過洞庭で「洞庭青草,近中秋、更無一點風色。玉鑑瓊田三萬頃,著我扁舟一葉。素月分輝,明河共影,表裏倶澄澈。悠然心會,妙處難與君説。   應念嶺海經年,孤光自照,肝肺皆冰雪。短髮蕭騷襟袖冷,穩泛滄浪空闊。盡吸西江,細斟北斗,萬象爲賓客。扣舷獨笑,不知今夕何夕。」と、この『前赤壁賦』をベースにして詞を作った。

大きな地図で見る
「文赤壁」 蘇軾が作詞したところ

※壬戌之秋:壬戌の年の秋。 *元豐五年(1082年)七月十六日、蘇軾は友人と連れだって、湖北の黄岡県の赤壁で、舟を泛べて遊んだ時の賦。 ・壬戌:〔じんじゅつ;ren2xu1○○〕みづ(ず)のえいぬ。干支(=十干と十二支)で表した歳次で、北宋・神宗・元豐五年(1082年)に該る。蛇足になるが、日本では、平安時代・白河天皇・永保二年。十干と十二支の組み合わせとは、十干⇒「甲乙丙丁戊己庚辛壬癸」のことで、十二支⇒「子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥」のことをいう。 干支は、この十干と十二支の組み合わせによる序列表示をいい、十干のはじめの「甲」と、十二支のはじめの「子」から順次、組み合わせていく。「壬戌」は、「甲子」から始まって59番目。なお、『古文眞寶』や『正文章軌範』の木版本では、写真のとおり「戍」〔じゅ(しゅ);shu4:まも(る)〕となっているがこれは別字で、「戌」(じゅつ=いぬ)が正しい。

※七月既望:陰暦・七月十六日(太陽暦の八月下旬頃)の(午後六時頃(「月出於東山之上」)からの情景)。 ・七月:陰暦七月は、初秋。 ・既望:陰暦の毎月十六日の称。望月(=満月:十五夜)を過ぎた翌日十六夜。 ・望:(=満月:十五夜)

※蘇子与客泛舟遊於赤壁之下:蘇軾と客は、赤壁のもとで舟を浮かべて遊んだ。 ・蘇子:蘇軾のこと。 ・泛舟:〔はんしう;fan4zhou1●○〕舟を浮かべる。 ・泛:〔はん;fan4●〕浮かべる。

※清風徐来:清々(すがすが)しい風がゆっくりと吹いてきた(が)。 *「清風徐來,水波不興。」として、使われるようになっている。 ・徐:ゆっくりと。おもむろに。

※水波不興:波も立たない。

※挙酒属客:酒杯を挙げて、客に勧め。 ・属:〔しょく(ぞく)(音「視」);zhu3●〕勧める。すすめる。

※誦『明月』之詩:『明月』の詩をとなえて。 *『詩經・(國風)・陳風・月出』に「
月出皎兮佼人僚兮。舒糾兮,勞心悄兮。  月出皓兮,佼人懰兮。舒懮受兮,勞心慅兮。  月出照兮,佼人燎兮。舒夭紹兮,勞心慘兮。」とある。また、魏・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。  慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。  青青子衿,悠悠我心。但爲君故,沈吟至今。  呦呦鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。  明明如月,何時可輟。憂從中來,不可斷絶。  越陌度阡,枉用相存。契闊談讌,心念舊恩。  月明星稀,烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依。  山不厭高,水不厭深。周公吐哺,天下歸心。」とある。 ・誦:〔しょう;song4●〕となえる。大きな声で読む。(節をつけて)読む。

※歌『窈窕』之章:『窈窕』(えうてう=ようちょう)の詩を歌う。 *前出・『詩經・(國風)・陳風・月出』の青字部分参照。また『詩經・(國風)・周南・關雎』に「關關雎鳩,在河之洲。
窈窕淑女,君子好逑。  參差荇菜,左右流之。窈窕淑女,寤寐求之。  求之不得,寤寐思服。悠哉悠哉,輾轉反側。  參差荇菜,左右采之。窈窕淑女,琴瑟友之。  參差荇菜,左右芼之。窈窕淑女,鐘鼓樂之。」とある。

※少焉:しばらくして。 ・少焉〔せうえん;shao3yan1●○〕しばらくして。しばらくあって。また、しばらく。しばし。≒頃焉。

※月出於東山之上:月が東山の上に出た。(午後六時頃になる)。

※徘徊於斗牛之間:南斗星と牽牛星の間(=東南)(或いは、斗宿と牛宿の間=東北)をぶらぶらと歩けば。 ・徘徊:〔はいくゎい;pai2huai2○○〕さまよう。ぶらぶら歩く。 ・斗牛:〔
ぎう;dou3niu2●○〕斗宿と牛宿の意で、北東の方位。斗、牛は、二十八宿の星宿名で、斗宿と牛宿。二十八宿を二十八方位に当てはめて、方位を表す。また、北斗星と牽牛星。また、南斗星(ひつきぼし)と牽牛星。ここでは、南斗星と牽牛星と見るのが、月との関係では自然。東南の方位。『晋書・巻三十六・張華傳』に「斗牛之間常有紫氣,(道術者皆以呉方強盛,未可圖也,惟華以爲不然。)…。華…乃要煥宿,…。煥曰:「僕察之久矣,惟斗牛之間頗有異氣。」とある。後世、辛棄疾『水龍吟』「夜深長見,斗牛光焔。」、李清照『菩薩蠻』「角聲催曉漏,曙色回牛斗。」、南宋・岳飛『題新淦蕭寺壁(題青泥市寺壁)』「雄氣堂堂貫斗牛,誓將直節報君讐。斬除頑惡還車駕,不問登壇萬戸侯。」、秋瑾『寶劍歌』「君不見劍氣斗牛。」などがある。

※白露横江:きらきらと光る露(つゆ)(≒霧・水蒸気)が長江に横たわって。 ・白露:きらきらと光る露(つゆ)。露の美称。秋の気配を感じさせるもの。

※水光接天:水面の輝きは、(水平線の彼方で)空に接している。 ・水光:水面の輝き。

※縦一葦之所如:一艘の小舟の(流れ)往(ゆ)くところに従って。 ・縦:したがう。ほしいまま(にする)。『北宋散文』『前赤壁賦』の高克勤は「従う」ととり、『古文眞寶』『前赤壁賦』(慶安辛卯年版)は「縦(たて)にする」ととる。 ・一葦:一艘の小舟。 ・葦:〔ゐ;wei3●〕こぶね。小さい舟。本来の意はアシ。ヨシ。 ・所如:往(ゆ)くところ。「往(ゆ)く」の名詞化。 ・如:往(ゆ)く。いたる。

※凌万頃之茫然:(わたしたちの乗った小舟は)果てしなく広々として、ぼうっとしてとりとめのない(際限を)越えて(行けば)。 ・凌:〔りょう;ling2○〕越える。しのぐ。 ・万頃:〔ばんけい;wan4qing3●●〕広々としたさま。面積が広いさま。一万頃≒約67,000ヘクタール。1頃≒6ヘクタール。 ・茫然:〔ばうぜん;mang2ran2○○〕ぼうっとしてとりとめのないさま。気が抜けてぼんやりするさま。

※浩浩乎如馮虚御風:(水面が天に連なっているので、)広々とした大きなさまは、大空によって風に乗って…。 ・浩浩乎:広々とした。大きな。 ・浩浩:〔かうかう;hao4hao4●●〕広々とした。 ・-乎:〔こ;hu1○〕形容詞の接尾字で、強く状態を示す。 ・馮:〔ひょう;ping2○〕依(よ)る。よりかかる。もたれる。恃(たの)む。頼る。 ・虚:〔きょ;xu1○〕そら。おおぞら。 ・御風:雲に乗る。 ・御:〔ぎょ;yu4●〕御(ぎよ)する。統(す)べる。

※而不知其所止:(わたしたちの小舟は、大空によって風に乗り、)止(とど)まるところを知らない(で進んでいく)かのようである。

※飄飄乎如遺世独立:風に吹かれて舞い上がるさまは、俗世間のことを忘れて俗世間の外にあって。 ・飄飄:〔へうへう;piao1piao1○○〕風に吹かれて軽く上がるさま。ひるがえるさま。世間離れしてつかまえどころが無いさま。 ・-乎:〔こ;hu1○〕形容詞の接尾字。 ・如-:「〔飄飄乎〕如〔遺世独立,羽化而登仙〕」という構成。 ・遺世:〔ゐせい;yi2shi4○●〕世間のことを忘れる。 ・遺:〔ゐ;yi2○〕忘れる。棄てる。 ・独立:俗世間の外にあること。

※羽化而登仙:羽が生えて、天に上って仙人となったかのようである。 ・羽化:羽が生えた者になる。 ・登仙:天に上って仙人になる。=昇仙。≒羽化登仙。

※於是飲酒楽甚:それで、酒を飲んで楽しむことがはなはだしくなった。 ・於是:それで。そこで。ここにおいて。 ・甚:〔しん(じん);shen4●〕はなはだしい。激しい。

※扣舷而歌之:ふなべりをたたいて(歌の拍子をとり)。 ・扣舷:〔こうげん;kou4xian2●○〕ふなべりをたたく。 *歌のリズムをたたいてとること。 ・扣:〔こう;kou4●〕たたく。うつ。 ・舷:〔げん(けん);xian2○〕ふなべり。ふなばた。船の側面。

※歌曰:(以下の「桂櫂兮蘭槳,撃空明兮泝流光。渺渺兮予懷,望美人兮天一方。」と大きな声に出して)歌った。

※「桂櫂兮蘭槳:かつらの木でできたかいに 木蘭(モクレン)でできたかい。 ・桂櫂:〔けいたう;gui4zhao4●〕美事な舟のかい。かつらの木でできたかい。「桂-」は美称。舟を表す一種の詞語で、必ずしもかつらの木でできたかいや木蘭(モクレン)でできたかいとは限らない。李白の『江上吟』「木蘭之枻沙棠舟,玉簫金管坐兩頭。美酒尊中置千斛,載妓隨波任去留。仙人有待乘黄鶴,海客無心隨白鴎。屈平詞賦懸日月,楚王臺空山丘。興酣落筆搖五嶽,詩成笑傲凌滄洲。功名富貴若長在,漢水亦應西北流。」や、劉綺莊の『揚州送人』に「桂楫木蘭舟,楓江竹箭流。故人從此去,望遠不勝愁。落日低帆影,歸風引櫂謳。思君折楊柳涙盡武昌樓。北宋・柳永の『雨霖鈴』「寒蝉淒切,對長亭晩,驟雨初歇。都門帳飮無緒,留戀處,蘭舟催發。執手相看涙眼,竟無語凝噎。念去去千里煙波,暮靄沈沈楚天闊。   多情自古傷離別,更那堪、冷落清秋節。今宵酒醒何處?楊柳岸、曉風殘月。此去經年,應是良辰好景虚設。便縱有千種風情,更與何人説。」や、両宋・李清照の『一翦梅』に「紅藕香殘玉簟秋。輕解羅裳,獨上蘭舟。雲中誰寄錦書來,雁字回時,月滿西樓。   花自飄零水自流。一種相思,兩處閑愁。此情無計可消除,才下眉頭,却上心頭。」と使う。楚・屈原の『楚辭・離騷』に「衆皆競進以貪婪兮,憑不厭乎求索。羌内恕己以量人兮,各興心而嫉妬。忽馳以追逐兮,非余心之所急。老冉冉其將至兮,恐脩名之不立。朝飮木蘭之墜露兮,夕餐秋菊之落英。苟余情其信以練要兮,長頷亦何傷。」とある。 ・蘭槳:〔らんさう;lan2jiang3●〕美事な舟のかい。木蘭(モクレン)でできたかい舟に固定してこぐ短いかい。「蘭-」は美称。 ・櫂:〔たう;zhao4●〕(舟の)かい。 ・兮:〔けい;xi1○〕上代詩に多く見られる語調を整えるための言葉。「□□□兮□□□」、「□□□兮…」といった使われ方が多い。 ・槳:〔さう;jiang3●〕(舟の)かい。舟に固定してこぐ短いかい。櫓(ろ)。

※撃空明兮泝流光:水に映った月影を櫂(かい)で(漕いだために)打って、水波に揺れる月光の中ををさかのぼった。 ・空明:水に映った月影。 ・流光:水波に揺れる月光。また、流れ来る光や移り行く光陰。ここは、前者の意。 ・泝:〔そ;su4●〕さかのぼる。(流れを)のぼる。=溯:〔そ;su4●〕。

※渺渺兮予懐:遠く果てしなく、わたしの思い(は広がり)…。 渺渺:〔べうべう;miao3miao3●●〕遠くかすかなさま。遥かで遠い。また、広くはてしないさま。水のはてしなくけむるさま。宋・蘇軾の『水調歌頭』快哉亭作に「落日繍簾卷,亭下水連空。知君爲我、新作窗戸濕靑紅。長記平山堂上,欹枕江南煙雨,渺渺沒孤鴻。認得醉翁語,山色有無中。」とあり、北宋・晏幾道の『鷓鴣天』に「醉拍春衫惜舊香,天將離恨惱疏狂。年年陌上生秋草,日日樓中到夕陽。   渺渺,水茫茫。征人歸路許多長。相思本是無憑語,莫向花箋費涙行。」とある。

※望美人兮天一方」:天空の一方(にある)の“美人(=月)”を望み見る。 ・美人:賢人。君子。ここでは月を謂うか。不詳。漢・烏孫公主・劉細君の『悲愁歌』に「吾家嫁我兮
天一方,遠託異國兮烏孫王。穹盧爲室兮氈爲牆,以肉爲食兮酪爲漿。居常土思兮心内傷,願爲黄鵠兮歸故鄕。」とある。

※客有吹洞簫者:客に、洞簫(どうしょう)を吹く者がおり。 ・洞簫:〔どうせう;dong4xiao1●○〕簫(しょう)の笛。尺八に似て、底に突き抜けた(=洞)管楽器。

※倚歌而和之:歌に合わせて、(洞簫(どうしょう)で)伴奏す(れば)。 ・倚歌:歌に合わせる。 ・和:伴奏する。

※其声鳴鳴然:その音色(ねいろ)は、ボーボーと。 ・鳴鳴然:(洞簫の演奏の擬声語で、)ボーボーと。擬声語。この句から数句(「如怨如慕,如泣如訴」)は白居易の『琵琶行』「錚錚然」をはじめとした表現を踏んでいる。

※如怨如慕:怨むようであり、また、慕うようでもあり。

※如泣如訴:泣くようであり、また、訴えかけてくるかのようである。

※餘音嫋嫋:余韻がか細く長く響いて。 ・嫋嫋:〔でうでう;niao3niao3●●〕か細く弱々しいさましなやかなさま漢・卓文君の『白頭吟』に「淒淒復淒淒,嫁娶不須啼。願得一心人,白頭不相離。竹竿何嫋嫋,魚尾何。」とあり、盛唐・楊貴妃の『阿那曲』に「羅袖動香香不已,
紅蕖嫋嫋秋煙裏。輕雲嶺上乍揺風,嫩柳池塘初拂水。」とあり、中唐・白居易の『楊柳枝』其三に「依依嫋嫋復青青,勾引清風無限情。白雪花繁空撲地,綠絲條弱不勝鶯。」とあり、晩唐・杜牧の『贈別二首』其一に「娉娉嫋嫋十三餘,荳蔻梢頭二月初。春風十里揚州路,卷上珠簾總不如。」とある。

※不絶如縷:ひと筋の糸のように、切れることなく。 ・縷:〔る;lǚ〕糸。いとすじ。

※舞幽壑之潜蛟:奥深い谷にひそんでいる蛟(みずち)を舞わせて。 ・幽壑:〔いうがく;you1he4○●〕奥深い谷。 ・壑:〔がく;he4●〕谷。みぞ。 ・潜蛟:〔せんかう;qian2jiao1○○〕ひそんでいるみずち。 ・蛟:〔かう;jiao1○〕 みずち。龍の一種。四足で一本の角がある蛇に似た龍で、洪水をおこすという。また、龍の雌。

※泣孤舟之嫠婦:一人だけになった(『琵琶行』の)やもめを泣かせて(いる)。 ・嫠婦:〔りふ;li2fu4○●〕やもめ。後家。寡婦。夫をなくした女。白居易の『琵琶行』の女主人公(夫に捨てられた女性)を指す。『琵琶行』の序に「元和十年,予左遷九江郡司馬。明年秋,送客湓浦口,聞舟
船中夜彈琵琶者。聽其音,錚錚然有京都聲。問其人,本長安倡女,嘗學琵琶於穆・曹二善才,年長色衰,委身爲賈人婦。遂命酒,使快彈數曲。曲罷,憫默。自敍少小時歡樂事,今漂淪憔悴,轉徙於江湖間。予出官二年,恬然自安,感斯人言,是夕始覺有遷謫意。因爲長句,歌以贈之。凡六百一十二言,命曰琵琶行。」とあり、寡婦であることを詠っているのは「沈吟放撥插絃中,整頓衣裳起斂容。自言本是京城女,家在蝦蟆陵下住。十三學得琵琶成,名屬敎坊第一部。曲罷曾教善才伏,妝成毎被秋娘妬。五陵少年爭纏頭,一曲紅綃不知數。鈿頭雲篦撃節碎,血色羅裙翻酒汚。今年歡笑復明年,秋月春風等閒度。弟走從軍阿姨死,暮去朝來顏色故。門前冷落鞍馬稀,老大嫁作商人婦。商人重利輕別離前月浮梁買茶。去來江口守空船,遶船明月江水寒。夜深忽夢少年事,夢啼妝涙紅闌干。」

※蘇子愀然:蘇軾は態度を改め。 ・愀然:〔せうぜん;qiao3ran2●○〕態度や顔色を変えるさま。また、憂えるさま。≒悄然(しょうぜん)〔せうぜん;qiao3ran2●○〕。ここは、前者の意。

※正襟危坐而問客曰:襟(えり)を正して、正坐して、客に問いかけることには。 ・正襟:乱れた衣服や姿勢を整え改めて、気持ちを引き締めることを謂う。「襟を正す」の典拠の元。 ・:危坐:きちんと坐(すわ)る。正坐(ざ)する。

「何為其然也」:「どうして、それが、そのようになっているのですか?」「どうして、それ(=洞簫(どうしょう)の音色)がそのよう(哀婉極まりない感情表現=「其聲鳴鳴然,如怨如慕,如泣如訴;餘音嫋嫋,不絶如縷,舞幽壑之潛蛟,泣孤舟之嫠婦」となっている)のですか?」 *蘇軾が洞簫を吹く客に哀婉極まりない音色になる理由を問い質(ただ)し、「客曰」以下の二十九句がその返答となる展開。 ・何為:〔かゐ;hewei○○〕 どうして…なのか。何ゆえ。なんすれぞ。反語の形式。また、何を…とするか。何が…であるか。疑問の表現。ここは、前者の意。 ・〔否定/疑問〕+其然:そうなのだろうか。 ・其:それ。その。ここでは(洞簫(どうしょう)の音色(ねいろ)。 ・然:このように。そのように。しか。しかく。ここでは「其聲鳴鳴然,如怨如慕,如泣如訴;餘音嫋嫋,不絶如縷,舞幽壑之潛蛟,泣孤舟之嫠婦。」を指して謂う。

※客曰:客が言うには。 *以下の二十九句が蘇軾の質問に答えての客の返答。

「月明星稀-:(以下、客の言)「月は(満月状で)明るいが、星はあまり出ていなくて…。 *(曹操の『短歌行』の中の句)。前出・曹操の『短歌行』に「對酒當歌,人生幾何。譬如朝露,去日苦多。  慨當以慷,憂思難忘。何以解憂,唯有杜康。  青青子衿,悠悠我心。但爲君故,沈吟至今。  呦呦鹿鳴,食野之苹。我有嘉賓,鼓瑟吹笙。  明明如月,何時可輟。憂從中來,不可斷絶。  越陌度阡,枉用相存。契闊談讌,心念舊恩。  月明星稀烏鵲南飛。繞樹三匝,何枝可依。  山不厭高,水不厭深。周公吐哺,天下歸心。」とある。

※-烏鵲南飛」:…カササギが南の方に飛んで行く」という詩は。 ・烏鵲:〔うじゃく;wu1que4○●〕カササギ。

※此非曹孟徳之詩乎:これ(「月明星稀,烏鵲南飛」)は、曹操(そうそう)の詩でしたね。 ・曹孟徳:〔さうもうとく;Cao2Meng4de2○●●〕曹操のこと。孟徳は曹操の字。前出・『短歌行』の作者。 ・非…乎:…ではなかったか。(…に)あらずや。詠嘆・疑問を表す。ここでは詠嘆を表す。

※西望夏口:西の方には、(孫権・劉備軍の赤壁に向けての進発の地である)夏口(現・武漢)を望み。 ・夏口:〔かこう;Xia4kou3●●〕地名。現・湖北省の武漢。孫権・劉備軍の赤壁に向けての進発の地。『中国史稿地図集』上冊(郭沫若主編 中国地図出版社)47ページ「赤壁之戦」にあり、『中国歴史地図集』第三冊 三国・西晋時期(中国地図出版社)28-29ページ「三国 呉 荊州」にある。武赤壁(本当の戦跡の)の東北50キロメートルのところ。

※東望武昌:東の方には、武昌を望む(ところですね)。 ・武昌:〔ぶしゃう;Wu3chang1●○〕地名。現・湖北省の鄂城県。夏口(現・武漢)の東50キロメートル。赤壁の東北50キロメートルのところ。(『中国歴史地図集』第三冊 三国・西晋時期(中国地図出版社)28-29ページ「三国 呉 荊州」)。

※山川相繆:山と川がまつわりあって。 ・繆:〔れう;
liao3〕まつわる。=繚〔れう;liao2◎〕。 *蛇足になるが、繆〔びう;mou2○〕からまる。まとわりつく。まとう。

※鬱乎蒼蒼:草木が青々と茂っています。 ・鬱乎:〔うつこ;yu4hu1●○〕草木の茂るさま。物事の盛んなさま。

※此非孟徳之困於周郎者乎:ここは、曹操が周瑜に苦しめられたところ(=赤壁)ですね。 *「此非【(孟徳)之〔(困於周郎)者〕】乎」。 ・困:くるしむ。こまる。 ・(困)於-:……より(苦しめられる)。 *原因や動作の起点を示す。 ・周郎:呉の周瑜。 ・非…乎:(前出)…ではなかったか。(…に)あらずや。詠嘆。 ・者:ところ。もの。 *所・人物・事物を指していう。

※方其破荊州:(曹操は)荊州を破って(…ときは)。 *曹操が建安十三年(208年)秋に大軍を率いて南下、荊州を破り、江陵を占領したことを指す。『中国史稿地図集』上冊(郭沫若主編 中国地図出版社)47ページ「赤壁之戦」の地図での曹操軍の行軍状況は、【1.曹操軍の南下 → 2.荊州(襄陽) → 3.江陵 =(ここより長江を下る)= 4.赤壁(決戦場) → (陸路、江陵(襄陽)に戻る) → 5.江陵(襄陽) → 6.荊州 → 7.魏の本国へ北上】となっている。 ・荊州:〔けいしう;Jing1zhou1○○〕地名。現・湖北省の襄陽。(『中国歴史地図集』第三冊 三国・西晋時期(中国地図出版社)28-29ページ「三国 呉 荊州」) ・方:あたる。『古文眞寶』『前赤壁賦』(慶安辛卯年版)は「荊州を破るに『方』(あたっ)ては」と読み、『文章軌範』では頼山陽は「荊州を破り、江陵に下り、流れに順って東するに『方』(あたっ)ては」と読む。頼山陽の読みの方が展開上詩意がスムーズであり、妥当。「
方〔其破荊州下江陵順流而東〕也」となる。

※下江陵:(続いて、曹操は)江陵を下(くだ)し。 ・下:降参させる。くだす。動詞。 ・江陵:〔かうりょう;Jiang1ling2○○〕地名。現・湖北省の江陵。赤壁の西150キロメートルのところ。『中国史稿地図集』上冊(郭沫若主編 中国地図出版社)47ページ「赤壁之戦」にあり、『中国歴史地図集』第三冊 三国・西晋時期(中国地図出版社)28-29ページ「三国 呉 荊州」にある。

※順流而東也,…:(曹操軍は)流れに沿(そ)って東に進むにあたっては、…。 *二句前の「方」はこの句までかかる。 ・順流:川の流れにしたがって。 ・順:したがう。同方向に向かう。…に沿(そ)う。 ・東:東の方へ行く。東す。*動詞。 ・-也-:…ときには。…は。…のは。…や…。指示・提示。蛇足になるが、文末の断定・説明の「なり」ではない。後の句へ続く。

※舳艫千里:(曹操の艦隊は)遥か彼方まで、縦隊になって繋がっているかのように航行し。 ・舳艫:〔ぢくろ;zhu2lu2●○〕船尾と船首。「舳艫千里」で、多くの船が縦一列に繋がっているように航行しているさま。船の船尾に次の船の船首が繋がるように続き、その船の船尾には次の船の船首が…という景が遥か彼方まで続いているさま。蛇足になるが、横並びは「舷舷相摩」になろうか。

※旌旗蔽空:(曹操の艦隊の)大小の旗は、空を蔽(おお)いかくすように翻(ひるがえ)っ(ていました)。 ・蔽:おおう。 ・旌旗:〔せいき;jing1qi2○○〕 旗の総称。

※釃酒臨江:(曹操は心に余裕があるため)酒を酌んで、(決戦場の赤壁のあるところの)江に臨み。 *「釃酒臨江」「横槊賦詩」は、戦場に臨む曹操の余裕ある態度や風雅の心をいう。 ・釃酒:〔
しゅ;shi1jiu3◎●〕酒をくむ。また、酒をしたむ。酒を濾(こ)す。ここは、前者の意。

※横槊賦詩:ほこを構えながらも詩を作っていました。 *「横槊賦詩」とは魏の曹操が戦場で詩を作った故事。英雄は軍中においても、なお風流であることの喩えとなった。 ・横:横にして(武器を)構える。横向けにする。動詞。明・戚繼光の『馬上作』「南北驅馳報主情,江花邊草笑平生。一年三百六十日,都是
馬上行。」とあり、現代・毛沢東の『給彭德懷同志』に「山高路遠坑深,大軍縱橫馳奔。誰敢立馬?惟我彭大將軍!」とある。蛇足になるが、武器を使用しないで、平和主義に徹する意は「(戈)」。 ・槊:〔さく;shuo4●〕ほこ。武器の名。柄の長いほこ。

※固一世之雄也:まことに(曹操は)一つの時代の英雄であります(が)。 ・固:まことに。かたく。もとより。しばらく。ここは、前者の意。 ・一世:一つの時代。一時代。 ・雄:かしら(頭)。おさ(長)。

※而今安在哉:今は一体、どこにいるのでしょうか。(もう、いなくなりましたね)。 ・而今:いま。『古文眞寶』『前赤壁賦』(慶安辛卯年版)は「而今」(じこん)ととる。 ・安在:どこにいるのか。駱賓王(らくひんなう;luo4bin1wang2)は、檄で「一抔之土未乾,六尺之孤何托(安在)。」とした。盛唐・李白の『襄陽歌』に「落日欲沒峴山西,倒著接花下迷。襄陽小兒齊拍手,攔街爭唱白銅鞮。傍人借問笑何事,笑殺山公醉似泥。鸕鶿杓,鸚鵡杯。百年三萬六千日,一日須傾三百杯。遙看漢水鴨頭綠,恰似葡萄初醗醅。此江若變作春酒,壘麹便築糟丘臺。千金駿馬換小妾,笑坐雕鞍歌落梅。車旁側挂一壺酒,鳳笙龍管行相催。咸陽市中歎黄犬,何如月下傾金罍。君不見晉朝羊公一片石,龜頭剥落生莓苔。涙亦不能爲之墮,心亦不能爲之哀。清風朗月不用一錢買,玉山自倒非人推。舒州杓,力士鐺。李白與爾同死生,襄王雲雨今安在,江水東流猿夜聲。」とある。 ・安:どこに…か。いづこ(に)。いづく(にか)。疑問の形式。また、どうして…だろうか。いづくんぞ(…ならんや)。反語の形式。

※況吾与子漁樵於江渚之上:(曹操は魏の国の王でしたが)ましてや、わたし(=「客」=洞簫の演奏者)とあなた(=蘇軾)とは、(半仙である漁夫ときこりのように)名利を離れて民間に暮らす人であって。 ・況:〔きゃう;kuang4●〕まして。いわんや。いはんや…をや。「況」は「吾与子漁樵於江渚之上,侶魚蝦而友麋鹿,」までかかる。 ・吾与子:わたしとあなた。「吾」は、この賦中で「客」と表現されている人物=洞簫の演奏者で、「子」は蘇軾。 ・漁樵:〔ぎょせう;yu2qiao2○○〕名利を離れて民間に暮らす(人)。本来の意は、魚をとることと、木を切ること。漁夫ときこり。 ・江渚:〔かうしょ;jiang1zhu3○●〕大きい川のみぎわ。

※侶魚蝦而友麋鹿:魚とエビを伴侶として、トナカイとシカを友として。 *野(や)に在(あ)るものを友としている意。 ・侶:〔りょ;lǚ●〕友とする。同伴する。動詞。 ・魚蝦:〔ぎょか;yu2xia1○○〕魚とエビ。 ・麋鹿:〔びろく;mi2lu4○●〕トナカイとシカ。また、鹿の一種のシフゾウ(四不像(しふぞう:si4bu2xiang4スープーシアン))。「四不像」という名称の由来は、「角(つの)は鹿に似て非であり、蹄(ひずめ)は牛に似て非であり、尾(体)はろばに似て非であり、,首はラクダ(馬)に似て非である、『四種に(似ていながら全体的にはどれにも)似ていない』」という意。

※駕一葉之軽舟:一艘の軽くて速い小舟をあやつり。 ・駕:〔が;jia4◎〕あやつる。御する。 ・輕舟:軽くて速い小舟。「輕舟」は『古文眞寶』(慶安辛卯年)版で。『北宋散文』での『前赤壁賦』(高克勤編著)、『正文章軌範』は「扁舟」〔へんしう;
pian1zhou1○〕(小舟の意)とする。

※挙匏樽以相属:ひさごでつくった酒器で、酒を酌み交わしている(者たちです)。 ・匏:〔はう;pao2○〕ひさご。ふくべ。ひょうたん。 ・匏樽:〔はうそん;pao2zun1○○〕ひさごでつくった酒器。 ・樽(尊):酒器。 ・相属:酒を酌み交わす。

※寄蜉蝣於天地:カゲロウのこの世に身を宿すさま(のようで)。 ・蜉蝣:〔ふいう;fu2you2(3)○?〕(昆虫の)カゲロウ。朝に生まれて、暮には死ぬという。人の儚(はかな)い一生の喩え。 ・寄:身を寄せる。やどる。仮住まいをする。頼る。託す。 ・寄…天地:

※渺滄海之一粟:ひろびろとして果てしがない青い海の中の一粒(つぶ)の粟(あわ)に託した(身なのです)。 *微々たる存在を謂う。 ・渺:〔べう;miao3●〕はるか。水がひろびろとして果てしがないさま。

※哀吾生之須臾:わたし(=客)は、生命が短時間なのを哀しみ。 *この辺りから東晋・陶淵明の『歸去來兮辭』「歸去來兮,田園將蕪胡不歸。既自以心爲形役,奚惆悵而獨悲。悟已往之不諫,知來者之可追。實迷途其未遠,覺今是而昨非。舟遙遙以輕颺,風
飄飄而吹衣。問征夫以前路,恨晨光之熹微。乃瞻衡宇,載欣載奔。僮僕歡迎,稚子候門。三逕就荒,松菊猶存。攜幼入室,有酒盈樽。引壺觴以自酌,眄庭柯以怡顏。倚南窗以寄,審容膝之易安。園日渉以成趣,門雖設而常關。策扶老以憩,時矯首而游。雲無心以出岫,鳥倦飛而知還。景翳翳以將入,撫孤松而盤桓。歸去來兮,請息交以絶。世與我以相遺,復駕言兮焉求。悅親戚之情話,樂琴書以消憂。農人告余以春及,將有事於西疇。或命巾車,或孤舟。既窈窕以尋,亦崎嶇而經丘。木欣欣以向榮,泉涓涓而始流。萬物之得時,感吾生之行休。已矣乎,宇内復幾時。曷不委心任去留,胡爲遑遑欲何之。 富貴非吾願,帝鄕不可期。懷良辰以孤往,或植杖而耘耔。登東皋以舒嘯,臨淸流而賦詩。聊乘化以歸盡,樂夫天命復奚疑。」の後半を聯想する。 ・須臾:〔しゅゆ、すゆ;xu1yu2○○〕たちまちのうちに、短時間で。しばらく、しばし、暫時。白居易の『觀幻』に「有起皆因滅,無睽不暫同。從歡終作慼,轉苦又成空。次第花生眼,須臾燭過風。更無尋覓處,鳥跡印空中。」とあり、唐・劉希夷『白頭吟(代悲白頭翁)』「洛陽城東桃李花,飛來飛去落誰家。洛陽女兒惜顏色,行逢落花長歎息。今年花落顏色改,明年花開復誰在。已見松柏摧爲薪,更聞桑田變成海。古人無復洛城東,今人還對落花風。年年歳歳花相似,歳歳年年人不同。寄言全盛紅顏子,應憐半死白頭翁。此翁白頭眞可憐,伊昔紅顏美少年。公子王孫芳樹下,清歌妙舞落花前。光祿池臺開錦繍,將軍樓閣畫神仙。一朝臥病無人識,三春行樂在誰邊。宛轉蛾眉能幾時,須臾鶴髮亂如絲。但看古來歌舞地,惟有黄昏鳥雀悲。」とある。 

※羨長江之無窮:長江の尽きることのないのを羨(うらや)ましく(思います)。

※挾飛仙以遨遊:天翔(あまがけ)る仙人をわきばさんで、漫遊し。 ・挾:〔けふ;xie2●〕わきばさむ。小脇にかかえる。帯びる。持つ。また、もりたてる。頼みにする。 ・遨遊:〔がういう;ao2you2○○〕あそぶ。漫遊する。

※抱明月而長終:明月を抱(いだ)いて、永久であり(たいものです)。 ・長終:永久。また、死ぬことを謂う。ここは、前者の意。『史記・三王世家』に「悉若心,信執其中,天祿
長終。」とある。中唐・韓愈の『謁衡嶽廟遂宿嶽寺題門樓』に「竄逐蠻荒幸不死,衣食纔足甘長終。侯王將相望久絶,神縱欲福難為功。 夜投佛寺上高閣,星月掩映雲膧朧。猿鳴鐘動不知曙,杲杲寒日生於東。」とある。

※知不可乎驟得:(だからといって、)急にできることではないのを分かっています。 *句の構成は「知〔不可乎・驟得〕…」。 ・驟:〔しう;zhou4●〕にわかに。突然に。急に。また、しばしば(『古文眞寶』)たびたび。

※託遺響於悲風」:(そのような事柄を)悲しげな余韻として託し(表現し)たのです」。 *以上の二十九句が客の言。 ・遺響:余韻。


※蘇子曰:蘇軾が言うことには。 *ここ以降の二十一句は、客の言に対しての蘇軾の見解。

「客亦知夫水与月乎:「客人もまた、あの「水」と「月」との(真相)を御存知だろうか。 *『古文眞寶』(慶安辛卯年版)では、「客亦知…乎」を「…知るや」と読む。 ・夫:〔ふ;fu2○〕それ。あれ。その。あの。発語・指示の助字。また、句末の助字で、感嘆・疑問を表す。『古文眞寶』(慶安版)では「その」と読んでいるが、ここでは句末の助字で疑問を表しているのではないか。

※逝者如斯:流れ去るもの(川の水≒歳月の流れ)はこのよう(に、一度去って再び帰らない)なものだ。『論語・子罕』に「子在川上曰:
逝者如斯夫!不舎昼夜。」(子 川上に在りて曰く:逝く者は斯くの如きか! 昼夜を舎かず)とある。 ・斯:この(水の)よう。かく。「水」を指す。

※而未嘗往也:(だが実際のところ、川は)今まで行ってしまったことがない。(眼前に変わることなく流れがあるではないか)。 ・往:(こちらからあちらへ)ゆく。

※盈虚者如彼:(月の)満ちることと缺けることは、あのようであって(も)。 ・盈虚:〔えいきょ;ying2xu1○○〕満ちることと缺けること。ここでは月の満ち缺けを謂う。

※而卒莫消長也:(見かけの満ち欠けが)あっても、増減することはない。(本質は不変である)。 ・卒:〔そつ;zu2●〕ついに。とうとう。 ・消長:〔せうちゃう;xiao1
zhang3○●〕衰えることと栄えること。盛衰。増減。

※蓋将自其變者而觀之:思うに、彼の(物は)変化するものだということ(=観点)よりこれらを見(れば)。 *この句の構成は「蓋【将〔自(其變者)〕而(觀之)】」となっている。 ・蓋:思うに。けだし。 ・将:…を以て。また、それとも。はた。ここは、前者の意。 ・自:…より。…から。

※則天地曾不能以一瞬:(「物は変化する」という観点から)すれば、天地(のあらゆる物)は一瞬たりとも(「不変」では)いられなかった。 ・則-:もし…ならば。すなわち。(…れば)すなはち。「レバ則」。

※自其不変者而観之:彼の「物が不変である」という(観点)からこれらを見(れば)。 ・観:みる。物をながめみる。そばから物を見物する。

※則物与我皆無尽也:(その観点から)すれば、物(質)もわたし(たち人)も、皆、尽きることはないのだ。

※而又何羨乎:この上、何を羨(うらや)むことがあろうか! ・又:その上。 ・何…乎:なんと…ではないか。感嘆を表す。

※且夫天地之間:さて一方、天地の間(=この世の中)では。 ・且夫:〔しょふ;qie3
fu2●○〕 さて一方。文脈を他に転じる時に用いられる発語の詞。「かつそれ」とは読むものの、日本語の(「かつ」「それ」といった)その意は無い。

※物各有主:物には、それぞれに「主」がある。

※苟非吾之所有:仮にも自分の所有物でないのならば。 ・苟:〔こう;gou3●〕いやしくも。仮にも。もしも。仮定の助字。

※雖一毫而莫取:微小であっても、いささかも取ってはいけない。 ・雖:…であっても。…といえども。) ・一毫:(長さの単位で)一寸の1000分の1で、約0.033mm。微小なものの喩え。 ・毫…莫:いささかも…ない。少しも…ない。 *否定文に用いる。

※惟江上之清風与山間之明月:ただ、大きな川(長江)の畔の清々しい風と、山の間の明月とは(このこととは別であって)。 ・
清風与山間之明月清風と山間の明月。詩の冒頭部分の「清風徐來,水波不興。擧酒屬客,誦『明月』之詩,歌『窈窕』之章。少焉,出於東山之上,徘徊於斗牛之間。」に対応させている。

※耳得之而為声:耳で、これ(=西風の音)を耳にすれば、(すばらしい)音と感じ取り。

※目遇之而成色:目で、これ(=明月の姿や光)に出逢えば(すばらしい)色・形と感じ取る(ことについては)。

※取之無禁:これら(=清風と山間の明月)を取ることは禁じられていない(し)。

※用之不竭:これらを用いても尽きることがない。 ・竭:〔けつ;jie2●〕尽くす。尽きる。

※是造物者之無尽蔵也:(「取之無禁,用之不竭」ということ)は、万物を創造する神の尽きることのない財宝を納める蔵だからなのだ。 ・是:…は…である。これ。主語と述語の間にあって述語の前に附き、述語を明示する働きがある。〔A是B:AはBである〕。 ・造物者:万物を創造する神。天帝。=造物主。 ・無尽蔵:いくらとってもなくなることがないこと。本来は、仏教用語で、尽きることのない財宝を納める蔵。仏教のことをいう。

※而吾与子之所共適。」:わたし(=蘇軾)とあなた(=客)のいっしょに(観賞しに)目指して行くところだ。 *以上二十一句が蘇軾の反論。 ・吾与子:わたしとあなた。前出の「吾与子」とは、指す者が入れ替わり「吾」は蘇軾自身で、「子」は客。 ・所共適:いっしょに(観賞しに目指して)行くところ。 ・適:〔せき(てき);shi4●〕往(ゆ)く。赴(おもむ)く。かなう。気に入る。楽しい。

※客喜而笑:客は、愉しそうに笑い。

※洗盞更酌:さかずきを洗って、更に酒を酌(く)んだ。 ・盞:〔さん(せん);shan3●〕さかずき。小さな酒杯。

※肴核既尽:料理は、既に尽きてしまい。 ・肴核:〔かうかく;yao2he2○●〕酒のさかな。酒のさかなとくだもの。料理。「肴」は獣や魚の肉で、「核」は果物。

※杯盤狼藉:酒宴の後、杯や皿が席上に散乱して。 ・杯盤狼
:〔はいばんらうぜき;bei1pan2lang2ji2○○○●〕 酒宴の後に、杯や皿などが席上に散乱しているさま。

※相与枕藉乎舟中:小舟の中で、おたがいに重なり合うようにして寝て(しまって)。 ・枕
〔ちんしゃ;zhen3jie4(-ji2)●●〕重なり合うようにして寝る。互いに枕にして寄りかかる。(茣蓙(ござ)等を)下に敷いて枕にする。

※不知東方之既白:東の方が、すでに白(しら)んでいるのが分からなかった。 ・白:しらむ。あけなんとする。

               ***********





◎ 構成について

この作品の平仄は、次の通り。


○●○○,
●●●◎,
○●◎●●○○○●●○●。
○○○○,
●○●○。
●●●●,
●○●○○,
○●●○○。
●○,
●●○○○○●,
○○○●○○○。
●●◎○,
●○●○。
◎●●○●○,
○●●○○○。
●●○○○○●○,
○●○○●●;
○○○○◎●●●,
●●○○○。

○●●●●●,
●○○○○。
○●:
“●●○○○,
●○○○●○○。
●●○○○,
◎●○○○●○。”
●●○●○●,
●○○○○。
○○○○○,
○●○●,
○●○●;
○○●●,
●●○○,
●○●○○○,
●○○○○●。

 (以下、略)
2011.11.18
     11.19
     11.20
     11.21
     11.22
     11.23
     11.24
     11.25
     11.26
(銀閣)
     11.27
     11.28
     11.29
     11.30
     12. 1
     12. 2
     12. 3
     12. 6完
     12.17補



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漢訳和歌
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