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 血気盛んで、自らの剣の腕に自信を持つ颯樹(さき)は、殆ど迷うこと無く、

「飛び出して泥棒を懲らしめる」という選択肢を選んだ。

 颯樹(さき)は、とりあえず本堂の中から飛び出し、柱の影に身を潜めた。

このあたりの彼女の技術は師ゆずりで、恐らく並の冒険者にもその気配を悟らせる事はなかっただろう。

 ただ、この場にいた者達が「並の冒険者」とははるかにかけ離れた存在であるとは、

さすがの颯樹(さき)にも分からなかった。
 

「シルフィード!!今こそ世界誕生以来のながきにわたる我らの戦いに終止符を打つ時のようだな!!

 手加減はせんぞ!!シルフィード!!」

「手加減したら負けるのはサラマンダーの方よ!!」

「ええーい!!お前達、いい加減にやめないか!!お前達2人が勝手に相討ちになるだけならわしは

 別に止めはしないが、世界を道連れにするのはやめろ!!」

 ますますヒートアップするサラマンダーとシルフィードにつられたのかどうかは知らないが、重樹(しげき)

までもが怒り出した。毛のない頭に血管がぴくぴくと浮いている。

「……やっぱり、私達って仲良くなれないんでしょうか……。(解説1)」

 ノームが、その愛らしい顔一面に悲しみの表情をたたえたままぼそっと呟くが、

もちろん誰もそんな事は聞いていない。

 と、その時だった。

「誰だ!?そこに隠れているのはっ!?」

 全く脈絡なくサラマンダーは叫んだ。

「(み、見つかった!?)」

 隠れていたのは言うまでもなく颯樹(さき)であるが、そんなこととは知らないサラマンダーは、

迷うことなく気配のする方に手をかざした。その手からは目もくらむばかりの

眩しい輝きを放つ炎が生まれた。

 その炎は、火球と化して、颯樹(さき)の隠れている柱を直撃した。

 耳をつんざく轟音。煙。炎。その後には……。

 もはや颯樹(さき)の死体すらも残っていなかった。

世界で最も温度の高い炎を操る事ができる彼女の火球の攻撃を受けてはその死体すらも残らない……

と考えるのが普通だろう(解説2)。

「ふっ……。口ほどにもない……。」

「って、今のは一体誰だったのかしら??」

 シルフィードが一人呟くが、その問いに答えられるものはこの場にはいなかった。

それはそうだ。死体そのものが完全に吹き飛んでしまっているのだから。

「あの……でも、なにもいきなり吹き飛ばしちゃう事はないと思うんですけど……。」

  ノームの冷静なツッコミが薄暗い寺の中にうつろに響く……。

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