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 もし、この精霊達が、完全な自由意志を得て、自分の好き勝手に力を振るったとしたら、

恐らく、世界は一日とたたないうちにどんな生物も住めない死の世界と化すであろう。

  精霊達の力というのは、それぐらい強力なのである。

「ふむ、確かにおまえたちの言う通りだ……。颯樹(さき)に、おまえたちを従えるだけの力が

あるかどうか、確かめねばなるまい。」

「えー!?まさか、颯樹(さき)ちゃんと戦えって言うの??あたしは嫌よ。そんなことできないわ!!」

「痴れ者が!主たる重樹(しげき)様の命令は絶対!従わぬ、などと言うことは許されんぞ!」

「なによ!!いくら重樹(しげき)の命令だからって、あたしは絶対に颯樹(さき)ちゃんとは

戦わないんだから!!」

「二人とも……止めて……。」

「ノームは黙ってなさい!!だいたいね、サラマンダー!!あなた、ちょっとぐらい重樹(しげき)と

馬が合うからって、何でもかんでも言うことを聞くなんて、あなたには優しさって物が無いの!?」

「……我らの使命は、4つの元素の力を正しく導くことだ!そのためなら、非情に徹することも

やむを得ないだろう!!大体、お前は、何かにつけてちゃらんぽらんなところが、

前から気に食わなかったんだ!!」

「誰がちゃらんぽらんですってー!!」

「うー……。お願い……止めて……。」

「はあ……何でこいつら、すぐ喧嘩してしまうんだろうか……?私の技量不足かな……。」

  ノーム……とにかく目立たない西洋風の衣服とどこかとろそうな雰囲気を持つ麗人

(美人であることに変わりはない)……の懇願と、重樹(しげき)の嘆息をよそに、どんどんヒートアップする

サラマンダーとシルフィード。精霊達が本気で喧嘩する、となると、実は世界崩壊の危機のような気も

するが、実際そうである……。
 

  そのころ、颯樹(さき)は物陰に身を潜めて外の様子をうかがっていたが、

表の様子が普段の幽霊騒ぎとは全く様子が違うことに気付いた。

「(間違いなく誰かがいる!?)」

  この寺には、たしかに大した金品はないが、お金では計り知れない価値を持つものが

大量に収蔵されている……例えば、神像や、経典など……ので、それらを狙う者達が現れる可能性も

否定できない。最も、これまでそういった被害には一度も遭ったことはないのだが。

  颯樹(さき)は、このままここに隠れているか、それとも飛び出して泥棒達を懲らしめるか、

どちらかの選択肢が残されていた。

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