「で、結局あたしは『精霊使い』になれたの?」
「うーん、まあ、あたしの術を跳ね返したんだから、確かに凄いわよね。普通だったらとっくに 意志を破壊されてあたしの操り人形になってるはずだからね。」 自分が実はとんでもない危機に立たされていた事をシルフィードに限りなくナチュラルに 告げられた颯樹(さき)は、やはりシルフィードの感性にはついていけないと思い知った。 「あたしは颯樹(さき)ちゃんの事が大好きだし、あたしの術に耐え切ったんだから、 あたしの新しい主人になるには十分よね。」 「大好き」というフレーズに何故か危険を感じつつ、颯樹(さき)は尋ねた。 「じゃあ、これであたしは風の『精霊使い』ってわけ?」 「颯樹(さき)殿、そなたの力はいまだ我を従えるには足りぬ。だが、そなたの内に秘められた力、 確かに見せてもらった。力を貸すことは出来ぬが、そなたと共に旅に出る事ぐらいなら問題あるまい。」 「じゃあ、仮の炎の『精霊使い』って事になるのかしら??」 「そういうことになるな。」 「仮っていうのが少し気に食わないけど、まあいいわ。とにかく一緒に来てくれるって言うんなら。」 「先に言った通り、我は力を貸すことは出来ぬ。とにかく自分の身は自分で護ることだ。」 サラマンダーはそう言い放った。 「まあ、最初っからそのつもりだったんだからそれは別にいいわ。ちょっと残念だけど。」 颯樹(さき)は本当に残念そうな表情を浮かべている。 「で、最後に残ってるノーム、だっけ?はどうするの?」 突然話を振られたノームは少し慌てた様子だ。 「え……?わ、私は……颯樹(さき)様におつかえします……。」 「あらら?なんかサラマンダーやシルフィードみたいに『力を試す』みたいなことを 言ってくるんじゃないの?」 「ああ、この子、そういうのって嫌いなのよ。ね?ノーム?」 「ええ……。」 シルフィードのフォローにあくまで控えめにうなずくノーム。 「って、さっき好き嫌いは関係ないって言ってなかった?」 「ああ、彼女は特別なのよ。羨ましいわ。面倒なことしなくてもすむんだから。」 何故ノームが特別扱いなのか、颯樹(さき)には全く分からなかったが、颯樹(さき)は 細かい所にはこだわらない人間だった。 「じゃあ、とりあえずあたしが新しい『精霊使い』になったわけね?」 これまで重く口を閉ざしていた重樹(しげき)が口を開いた。 「うむ。だが、これに奢ることなく己を常に磨くんだぞ。」 (17) |
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