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「パパ!!ただいま!」

  颯樹(さき)は元気よく玄関を開けた。そして、家の中に入る。

すると、中から、錯乱状態の父親が飛び出してきた。

「うあああああっ!!どうしたらいいんだあああああっ!!」

「ど、どうしたの、パパ?また、物無くしたの?」

「今度のは!ちょっとばかり洒落にならないんだ!!」

「今度の………って?」

「ちょっとこっちへ来なさい。」

「?」

  颯樹(さき)は、父に促されるまま、家の宝物庫……父がかつて冒険者だった頃、

手に入れた数々の思い出の品が納められているらしい……に向かった。

「ここって、何があるの?」

  実は、颯樹(さき)自身はここに何が保管されているか知らないのだ。

「前にも言ったかも知れんが、私は昔冒険者だった。お前のお母さんもな。

その時の大事な思い出の品がここには納められている。」

  父は、少し寂しそうにそう言った。颯樹(さき)は、自分の母親が

どうなったか知っているので、とても悲しくなった。

「私はある時偶然、恐ろしい剣を手に入れてしまったのだ。その剣がこの世界に出回らぬよう、

硬く封印をしておいたのだが………。」

「封印が解けた!?」

「うむ。どうも鼠にかじられたらしい。」

「鼠にかじられるぐらいで解ける封印のどこが『硬い封印』なのよおおおっ!!」

  その瞬間、颯樹(さき)は、目の前にいるのが自分の父だということも忘れ、思いっきり蹴りを加えていた。

  ゴキッ!!

「あぶろれりゃぁ!?」

  父親ははたから見ていて気持ちいいぐらい景気よく吹っ飛んだ。

「と、それでどうしたの?」

「な、何でもいいが颯樹(さき)、それ他人にやるなよ………。」

  ぼろぼろになった父重樹(しげき)はこう続けた。

「その剣が、何者かに盗まれてしまったのだ。」

「ところで、その『剣』って、どういう風に恐ろしいの?」

「あの剣は、人の生き血をすする剣だ。」

「人の生き血を!?剣が吸うの?」

「うむ。あの剣は血を吸えば吸うほど強力になる魔剣だ。しかも……」

(2)

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