最も、颯樹(さき)本人には寺を継ぐ意志が全く無いことから、
この訓練は無駄になったと言えるのかもしれないが。 そして、颯樹(さき)は重樹(しげき)にとって驚くべき発言をした。 「パパが行くことはないわ。私が行く(そんな楽しそうなことパパにやらせるわけにはいかないわよ)。」 「ば、ばか!!これから私がやろうとしていることは、町の中でチンピラ相手に 喧嘩するのとはわけが違うんだぞ!!」 「そんなこと分かってるわよ。でも、そんな(楽しそうな)ことパパにやらせるわけにはいかないもの。」 重樹(しげき)は、何か勘違いしたのか、凄く嬉しそうな様子を一瞬見せたが、 次の瞬間にはまた深刻そうな表情にもどった。 「しかし、どうしたものか……お前にこんなことをさせるわけにはいかないし……。」 その時の重樹(しげき)は寂しそうでもあり、また苦痛に耐えているようにも見える複雑な表情を見せた。 「そんな事気にしなくていいわよ。パパはお寺の仕事が忙しいんだから。 それに、パパはもう引退したんだから、無茶できないだろうし。やっぱり、私が行くべきよ。」 「うむ……うむむ………。確かにそうだが………。」 「なら決まりね!!やっぱり私が行くわ!!」 確かに、颯樹(さき)の意見には一理ある。しかしそんなことでは納得できないのが 親の心理というものである。子供が自ら死地に飛び込んでいこうというのだから、 当然のことといえば当然のことだ。 「しかし………。」 「しかし、なに?」 「………考え直してくれ………颯樹(さき)………。私は、お前を危険な目に遭わせたくないんだ。」 「大丈夫!!私の力はパパも知ってるでしょう?」 「……………………。」 うめくような重樹(しげき)の懇願も、血気にはやる颯樹(さき)の耳には届かなかった。 まあ、それが若さというものであろう。 「颯樹(さき)、一晩考えさせてくれないか?」 「ま、まあいいけど……。」 「さあ、今日はもう遅いから、ご飯にしよう。」 ふと颯樹が気付くとあたりはすっかり暗くなっていた。 「でも、その話が本当だったら、そんな悠長なこと言ってられないんじゃないの?今もう世界のどこかで、その剣の 犠牲者が出てるかもしれないのに。」 |
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