★　かわいそうなクロエちゃん

☆　署のティームワークは順調

マシューの死を何とか受け入れ、新しい主任とも徐々に信頼関係ができ、他のメンバーはクロエの復帰に大喜びしていました。第3シーズンの3話の最後には裁判官のオフマン（ドイツ系の名前で、ドイツならホフマン）という恋人までできました。

ただ、私はこの男はクロエに向かないなあと思いました。3話の最後の方で、2人が寝るようなシーンが出て来たので、必死に（ではありませんが）「クロエちゃん、ダメよ〜ダメダメ」と言いましたが、当然私の声は届きません。このシーンはとっくの昔に撮影されていたのですよ。

いくつか理由がありますが、描かれている性格ではこの男、クロエを理解しようという気が見えず、クロエを支配するようなタイプ。自由を誰よりも愛するクロエには全然合いません。石頭が2人ぶつかる時、相手に支配欲が強いとだめ、ガチンコの後お互い半分ずつ譲り、相手を理解しようとするタイプなら後は友情でも愛情でも大丈夫です（ベルリン型）。マシューやトマは最初クロエと衝突しましたが、その後相手を理解する方向に行き、しっくり行きました。

マシューは妻の不倫騒動で失意の夜、クロエを訪ねあわや深い関係に入るかというところまで行き、クロエの理性で止まりました。その後マシューと妻はよりを戻したため、クロエはシングルのままでした。それでも信頼関係はより強くなったと言えます。

トマともマシューと似て最初はうまく行きませんでしたが、第3話までには徐々に打ち解けていました。第4話では未亡夫のトマの息子が学校で参観日に「お母さんが来る」と先生に口を滑らせてしまったのですが、クロエがトマに頼まれてお母さんのふりをして出席。そういう個人的な事をクロエに頼むほどの信頼関係ができました。

☆　俺たちはデカだ

そのクロエに新しい愛人が出来たことはあっという間に署ではばれてしまいました。皆デカをやっているだけあって、勘がいいのです。最初はお父さん代わりのグレゴワがクロエに話しかけ、「15年以上知っている仲じゃないか、水臭い」と言われます。ま、グレゴワなら仕方ないと思ったクロエですが、物語が進むにつれ、イポリットにもばれていることが分かり、イポリットが知っているとなるとフレディーも知っているわけで、そうなると署中にばれていることになります。皆祝福のスタンス。クロエの幸せを祈っているのです。

☆　ところがクロエは

人生に大きく裏切られること3度。1度目は父親に母親を殺され、2度目は妹だと信じていたルイーズが妹でも何でも無かったことが分かり、3度目はその直後に兄妹のような関係になっていたマシューをルイーズに殺されてしまいます。

これ以上深い失望を味わいたくないクロエは1度寝はしたものの、オフマンと恋人として付き合う気になりません。私は感じ悪い男だなあと思いましたが、私の好みでクロエが動くわけではありません。しかしながら、第4話で何度もオフマンから電話が入っても無視しているクロエに「いいぞ、その調子、無視しろ」と思っていました。

☆　周囲に促されて

クロエに起きた不幸な出来事を知っているスタッフはクロエに恋人ができることに好意的な目を向けています。デートをためらうクロエに「行け行け」と勧めます。色々考えた末クロエは直接判事に会いに行きます。思い切って「あなたとの関係を大切にしようと思う」的な言葉を吐いた直後に・・・。

☆　クロエ墜落

なんと判事の妻のような女性が現われるのです。判事はクロエをその女性に「仕事で付き合っている人」と紹介します。女性は家に帰るだの、息子がどうのと言うので、十中八九2人は夫婦関係にあるだけではなく、現在も家族として暮らしているのでしょう。

クロエは鈍感ではないので、そのあたりをすぐ察し、修羅場を演じずにそこを去りますが、非常に深く傷ついています。視聴者はクロエを応援するような立場に置かれるので、とてもかわいそうに思えてしまいます。それを演じる女優も役をよく理解していて、視聴者の同情を集めます。私も本当にかわいそうに思いました。

次の週、判事がどういう言い訳をするのか、この関係をためらったクロエはやっぱり正しかったけれど、署の仲間にどういう説明をするのか、それともデカ仲間だから判事が妻帯者で、家族関係は良好だってな事を探り出すのか、また署と判事が揉めたらどうするのかなど宿題が残りました。最悪の場合だと、判事と署が揉めた時、クロエを篭絡してあれば判事が話を通しやすくなるので、作戦として彼女を誘惑したのかも知れません。どうも私はこの男が好きになれない・・・。

★　クロエちゃんの親衛隊

クロエちゃんは聞かれた時に失恋したことを隠さなかったので、署内では事情が知れ渡ります。今でも仕事では時々揉めるトマを含め署内の全員が彼女に同情。しかし判事に妻子がいるのではどうしようもありません。クロエちゃんはストイックに胸を張り、「１回切りの遊びだったんだからこれでいいんだ」と言います。

しかし心が深く傷ついていることは視聴者にも署内のティームにも一目瞭然。皆がいたわりの気持ちを抱き、判事に対しては「あん畜生、俺たちの大事なクロエを傷つけやがって」という気分。そういう同僚に囲まれて彼女も仕事に専念しようと努力しますが、１人になるとどうしようもなく悲しんでいます。

役では３０歳代の教授ということになっていますが、自分に起きた事件の影響で、精神の一部分はティーンの時のまま時計が止まっています。なので傷つき方もティーン・エイジャーが初恋をして破れた時と似ている一方、家族が殺人事件、父親の投獄という形でずたずたになってしまい、本当なら世界で1番か2番目に信頼できるはずの関係が見事に崩壊。そのため、彼女は人を信頼することに強い警戒心を抱いていました。そんな中15年ぶりぐらいで恋愛に踏み切った結果がこの有様。ティームもそのあたりを正しく推測しているため、彼女に対して思いやりを示しています。

★　女性の視点で作られた作品

主人公はクロエというやや世間ずれした女性で、コミカルさも出していますが、毎回扱われる事件は残酷だったり悲惨だったりします。登場人物の設定を変えたりはしているだろうけれど、実際にあったとしてもおかしくない事件が多いです。

警察のスタッフは完璧な人たちではなく、アル中から立ち直った強気の女刑事、全然彼女ができない内勤の青年、妻に不倫されてしまった主任などです。現在主演に近いトマも、妻を殺され、その事件が未解決の未亡夫、シングル・ファザーです。

これまでの事件では女性が殺される話が多いですが、それだけではなく、女性が自分より弱い立場の人間に対して支配欲を持ち、弱い側がそこから脱しようとして事件に発展したり、１度被害者になった女性が自らの手でおとしまいをつけようとして事件になったりと、女性を中心にして被害者だけでなく加害者のドラマも構築されています。女性の視点を他の番組より大切にしています。

脚本家は現在までに合計14人。うち3人が2桁の数書いており、特に2人は40本以上書いています。私はフランス語はからっきしだめなのですが、どうやらかなりの数の脚本家が女性のよう。

それにしてもかわいそうなクロエちゃん・・・。