メモ：　段落と副題の整理

ドイツ語のタイトルは「犠牲」。ここで言う犠牲は宗教などで動物が犠牲にされるのと似たニュアンスです。ネタバレ・タイトルではありますが、それほどひどいネタバレではありません。説明は終わり頃に出て来ます。

★　監督

第4シーズンの第9話から助監督として参加、第5シーズンの第4話（学生が大学内で銃を乱射後、図書館の司書に殺されるエピソード）からは本監督として参加し、現在までに11本撮っています。今回の作品は6本目。本監督としての経験はこのシリーズが初で、その後別なテレビ・シリーズの監督もやっています。

★　イポリットの解毒作戦は成功

前のエピソードの最後にクロエとエマに救われ入院もしたイポリットはこの週では職場に復帰しています。周囲は気を使い過ぎ、イポリットにはそれが不満。しかし署は彼の復帰を喜んでいます。

★　メインの事件にアデルが登場

シェパード犬を連れて、1人署を去ったアデル。当時の彼女はまだ人の情けを正面から受け入れるほど世間に溶け込んでいませんでした。それまでずっと自宅に閉じこもって暮らしていたためです。

やがて彼女の能力も捜査に役立つということでクロエの働いている署に採用されましたが、クロエとは違う意味で社会に溶け込むことに困難を感じ、結局皆と仲良くなったにもかかわらず署を去って行きました。行方不明になっている妹の手がかりが全然つかめないことも彼女の悩みを大きくしていました。

トマ、クロエ、署員が行き詰っていた事件でアデルと再会します。

★　クロエの戸惑い

クロエは精神分裂症の発病後御難続きでしたが、本人の努力、母親、署員のサポートで遂に元の仕事に復帰がかないます。それを家庭裁判所も肯定的に取ったため、一時停止されていた親権が戻るだろうと連絡を受けます。

最初は素直に喜んだクロエですが、落ち着いて来ると「本当に大丈夫だろうか」と不安になります。自分に自信が持てていません。

★　メインの事件

冒頭久しぶりにアデルが登場。バレーの練習中。子供の頃は妹も練習場にいたらしく、当時の事を思い出しています。

☆　串刺しで発見された写真家

場面は変わり、クロエと検死医が事件現場に。被害者ミシェル・レヴェアの死に方はロミー・シュナイダーの息子にそっくりですが、クロエはもっと前のドラキュラの伝説の元になった貴族の話に遡ります。具体的に言うと、被害者は上の階から転落し、鉄柵に串刺し状態。被害者は偶然転落したのではなく、頭を殴られ放り出されています。検死医は処刑だという結論（本当の検死医は医学的な報告を出すだけで、殺し方に言及しないものと思われます。このシーンはフィクション）。

被害者は高級住宅に住む写真家。自分が使うためのドラッグ購入という犯罪記録が残っていますが、大悪党ではありませんでした。クロエがショックを受けたのは、彼がつい最近、死の直前に撮影した写真のモデルがアデルだったこと。強度の鬱のため2度入院歴がありました。

☆　慈善事業

エマとイポリットがレヴェアについて別々の調査をしている時に共通して浮かんで来たのが、人生で失敗した若者に第2の人生、第2のチャンスを与えるために寄付金で設立された団体。主催者は男爵の未亡人シャネア。

団体の建物に事情聴取に行き、シャネアの秘書をしているラセールから話を聞きます。レヴェアはこのかなり大きな施設に1年ほど住んでいましたが、あまり規則を守らず、ラセールからはいい話は出ません。トマは彼を容疑者扱い。アリバイの証明ができず、挙動不審。

クロエはシャネアと話してみます。金にだらしないレヴェアでしたが、シャネアはそれを分かった上で彼を支援していました。シャネア自身は母親を早く亡くし、父親が家庭内暴力兼アル中という恵まれない家庭に生まれ、子供だけで農家を運営しなければなりませんでした。彼女と弟は結局施設へ。彼女はある日男爵と知り合い、結婚。子供に恵まれなかったこともあり、この施設を設立。

☆　アデルが嗅ぎ回っている

トマが施設に収容されている少年たちの事情聴取を終えた所へアデルが登場。偽名シャーロット・メリユーを使っており、この施設への就職が決まっている様子。

アデルは1年前から私立探偵の事務所を開業。数日前行方不明の少女アナイース・ベルジェーを探す依頼を受けて施設に出入りしていました。アデル、レヴェア、アナイースの接点がこの施設。

彼が死ぬ直前、アデルはレヴェアにバーで接触。彼のアパートで会話を盗み撮りしていました。それをトマ、クロエに見せますが、話の意味が良く分かりません。彼はシャネアから特別な待遇を受けて高級アパートに写真家として暮らしていますが、自分に才能が無いことははっきり自覚しています。そしてアデルに「ネズミ捕りの役目を果たすのはうんざりだ、君には危害を加えない、君は注文に合わないし」と言います。彼は喧嘩腰でアデルをアパートから追い出しますが、実はそのためにアデルは命が助かっています。翌日彼は串刺しに。

トマとアデルは彼の言葉から人身売買を疑います。彼は誰かのために若い孤独な女性を探しているように見えます。見つけると施設に引き渡しています。施設は偽装のために使われており、客の趣味に合う子供はこの後失踪するのだろうという解釈。施設にはしょっちゅう新しい人が来て、現在は40人住んでおり、80年代から3000人がこの施設に収容されていましたので、捜査は簡単ではありません。

アデルは行方不明になった人を探すことを専門とする探偵事務所を開いており、妹の捜査を同時進行させています。いつもつれていたシェパードは死んだ様子。いつも犬と一緒に座っていたソファーはまだ彼女の元にあります。署員は彼女の再登場を喜び、彼女にシェパードと同じぐらい大きな犬をプレゼント。いい知り合いもできたようで、彼女の生活は落ち着いています。

アデルは正式に施設の青少年専門の精神分析医として雇われます。仕事の後彼女は施設の主催者の事務所を嗅ぎ回ります。イポリットがアナイーズの車の停車位置を発見。施設内ではラセールがアデルを疑いの目でみています。アデルは自分の車に入ったところで誘拐されてしまいます。

☆　秘書が怪しい

トマとクロエはマルセル・ラセールが経営していたレストランを調査。マルセルの息子がジレ・ラセール。施設の経営者の秘書です。廃屋であるはずのレストランから光が見えます。

レストランではエリースという少女が発見されます。彼女も施設の住人。彼女はラセールから「きれいに着飾って待て」という連絡を受けていました。ここまでの様子では人身売買が疑われます。

アデルはどこかの農家に人質に取られており、同じ場所にもう1人捕まっている少女がいました。それが捜査を依頼されていたアナイーズ。

ラセールは事情聴取へ。彼の携帯から出たと思われるメイルについてラセールは何も知りませんでした。ラセールは絵が上手く、趣味で暴力を描いていました。本人は小心者。絵に出て来る首を吊っている女性や暴力の犠牲になっている女性は彼の母親。彼はゲイだったのですが、母親はそのことを許していませんでした。彼の物置からはいくつかの少女の衣類、ケーキの缶が発見されます。

ラセールは真犯人に利用されていました。証拠はシャネアが用意した物。クロエの意見だと、レヴェアはシャネアのために働いており、ラセールは周囲の目をくらますための囮。

☆　分からない時は原点へ　−　施設創立から見直し

クロエはシャネアの子供時代の出来事をおさらい。母親の死後父親は暴力で子供たちを苦しめ、農家の仕事をさせていました。姉はその仕事中に事故死。警察が入り、残った子供たちは施設に預けられます。施設収容はシャネアにとっては人生をやり直すチャンス。それで後に少年に2度目のチャンスを与えるための施設を開設。彼女の解釈では姉が死んでくれたために自分に2度目のチャンスが来たとなります。

アデルの知り合いの老人トリスタンからトマに「アデルが行方不明になった」と連絡が入ります。最初の出会いではトリスタンはトマの車を壊したので喧嘩になりますが、アデルとは仲のいい人物。

☆　ショーダウンが近い

所変わって、どこかの農家に豚に肉の餌をやっている男がいます。アナイーズは性的にも暴力的にも被害は受けておらず、鎖で納屋に繋がれていました。物を言わない大男がうろつきまわっているとか。

警察ではシャネアの事情聴取。最初は彼女は証人ということで、ラセールについて聞かれていると考えていますが、クロエが核心に触れる質問をします。シャネアに取って重要な出来事があるたびに施設から誰かが行方不明になっていました。夫の男爵との出会い、夫の会社の株の暴落、重要な心臓手術等など、合計12人が消えています。

エマは男爵夫人の携帯を盗んでしまいます。

☆　ばれた過去

最後に明らかになったのは消えた子供たちが人身売買の犠牲になったのではなく、豚の餌にされていたという話です。シャネアの死んだ姉は、疲れていても休憩が許されず、疲労困憊のまま豚の飼育場に転落し、豚に食べられてしまったのです。結婚して金持ちになってからシャネアは重要な出来事のたびに少女を豚に食べさせていました。

農家の男がアナイーズを豚の餌にしようとした時、アデルが「代わりに自分を餌にしろ」と言います。同時にアデルはこの男がシャネアの弟のギーだと見破ります。アデルに同意し、豚の餌はアデルに決まりますが、アデルは抵抗。そこへトマが現われてギーを射って一件落着。

トマはアデルに秋田犬のような白い犬をプレゼントします。

シャネアは逮捕されますが高齢のため刑務所には行かないで済みます。ギーは入院。

人を1ダースも殺しておいて高齢だから刑務所に行かないでいい、本人は大金持ちということは、ギーもかなりの高齢なので、退院しても共犯者として書類送検だけになるのでしょう。となると2人は元の生活を続けることができる！？時々世の中は不条理だと思います。