★　ファンタの間も番組続行

自身の妊娠を知ったクロエ。最初は堕胎するつもりでしたが、医師や唯一署内で気づいたトマの説得もあり、熟慮の末未婚の母の道を選ぶクロエちゃん。

愉快なのは既婚の父のトマが未亡夫とは言え、亡くなった夫人の妊娠の頃の事を覚えていたのか、クロエの体調を見て妊娠だとすぐ察し、クロエが隠していてもばれてしまうシーン。

かつてのフランスで望まない妊娠をしてしまった未婚の若い女性の苦労を小説などで読んだことがあったので、現代のフランスとの大きな違いには驚きます。50年代、革命前（後に世界に波及した学生運動の元）の60年代のフランスではもぐりの医者を探さなければならず、女性に取っては本人の命の危険すら伴う話でした。

まだ避妊用のピルは出ておらず、男性側も情熱に任せて女性と関係してしまい、避妊の事をよく考えず、女性の妊娠を知っても問題解決を女性に押し付けてしまうような話を小説では読んだことがあります。当時はもしかしてフランスの国教はカソリックだったかもしれず、モラル的にも女性が責められる社会だったように記憶しています。

現代のフランスでは「生まれるかも知れない子供の事を優先して考えよう」という方針に変わり、女性が未婚の母になっても責めない風潮に変わりました。宗教を1つ取り上げて国教にするという考え方も弱まったようです。そして堕胎も法律違反ではなく、諸々の事情があれば合法的にできるようになりました。なので未熟な医者や、無免許の医者のために命を失う危険はなくなります。

「諸々の事情があって子供は産んでも、自分で育てることはできないから子供を人の手に委ねる」という方法も推薦されるようになり、また、諸々の事情があっても無くても産んで自分の元で育てるという人には国が経済的な支援をするように変わりました。

その間に正式な結婚手続きをしない事実婚族が増え、もしかしたら事実婚族の人数が正式婚族を上回りつつあるかも知れません。例えばジョニー・デップとヴァネッサ・パラディーは事実婚族でした。かなり長い間2人はフランスでは夫婦として社会に認知され、子供たちと一緒に家族として暮らしていました。その後2人の間には溝ができ、別々の道を行くことに決定。すると世間も2人が離婚したような受け取り方をしました。現代のフランスの典型的な現象です。

つまり子供を産むか、自分で育てるか、パートナーと事実婚生活を始めるか、今まで通り別な家で暮らすか、パートナーに妊娠について知らせるか、知らせないかなどは全て妊娠したクロエちゃん1人がよ〜〜〜く考えて1人で決めていいという状況にいました。

★　少し迷った末子供は産むぞ

1番最初は妊娠中絶に決め、その手続きに入ったクロエちゃんでしたが、ちょっとしたエピソードの後、1人で産み、1人で育て、オフマンには知らせないでおこうと決心します。

トマはこの間クロエの相談相手になり、外回りの仕事でクロエが危険な状況に陥らないよう目を光らせ、「署のメンバーにもちゃんと知らせろ」とアドバイス。それまではつわりで吐き気を催すと、「ビールス性腸炎」などと言ってごまかすのを手伝うトマ。

自分の事となるとやや優柔不断のクロエは遅ればせながらトマの言う方向に傾いて行きます。「オフマンにもちゃんと知らせた方がいい」などと、トマは物事をはっきりさせるよう忠告をします（クロエはオフマンの経済援助無くやって行けるので、オフマンには現在の生活を大きく変える必要は生じない、それに国が子供手当てをくれる）。

★　本妻登場

色々考えた末、やっぱりオフマンに知らせるべき事は伝えようと決心がついた時、 日本でも古臭い言葉になってしまった本妻がクロエの前に現われます。オフマンに傷つき、心はずたずたのクロエですが、オフマンが妻子と家の前にいるところを見たりしたので、家族を傷つけることはしたくないと思い、クロエにはオフマンと夫婦のように同居する意思は全くありません。

ところが家でオフマンは《心ここにあらず》生活を送っていたらしく、夫人が悩み始めたようです。で、夫人がクロエに詰め寄り、「私の家族を破壊しないでくれ」と強〜い一言。それでクロエは改めて妊娠の事は自分1人で何とかしようと固〜い決心。

★　そういう時に限って運命は予定外の方向に　−　これは昼ドラなのじゃ

オフマンは何かで悩んではいるようで、クロエとコンタクトを取ろうとしたこともありました。いくつかのエピソードを経て、分かって来るのは、オフマンの視点から見ると自分の正式婚は破綻しており、離婚してクロエと一緒になるのがいいと考えているらしいこと。署の人間はオフマンが、既婚者であることをクロエに言わずに関係してしまったのは無責任だという意見で一致しており、オフマンは卑劣漢と見なされています。私も賛成。

トマにせかされて遂に署内では妊娠の事が知れ渡ります。他の署員も彼女が体をいたわるようにという意見で、まあ署員全員で彼女を守ろうというスタンスです。子供扱いされあれこれ周囲が気を使うのでクロエはちょっとおかんむり。とは言え善意での事なので、ちょっとうれしい。

ところが1番最近のエピソードで、犯人逮捕の際クロエと格闘になってしまい、彼女は

流産の知らせを受け、やっとこさ現われるオフマン。

★　悲しみのどん底

まさに昼ドラ。決してクロエを幸せにはしないぞという脚本家チームの固い決心が感じられます。彼女が問題のど真ん中におらず、もう少し年を取っていれば、実は彼女はいい同僚に囲まれて幸せな状況の中で生きていることが分かるのですが、本人はそれどころではありません。十年も経てば署員の思いやりという幸運に恵まれていることが分かりますが、そんなに年を取ってから妊娠したら、流産の危険が増します。

ベルリンでは65歳で4つ子を産んだつわものがちょうど今話題になっています。この女性、相当な確信犯で、今回の妊娠の前すでに9歳から44歳までの子供を13人産んでいました。最後の子供を産んでから約10年経った今年、改めて妊娠し今回は1度に4人誕生。これで合計17人の子供の母親になったわけです。養子は取っていない様子。

結婚していたこともあるようですが、ほとんど子供は自分の手で育てており、所謂古典的な家族の形態は無視。病院総動員で行われる高齢出産。まあ、それほどの情熱があれば科学的には私より年が上でも4つ子を産むことができるようですが、本人にも子供にもリスクの高い行動です。ドイツには時々何かしらの主義を優先し、こういう行動に出る人がいます。

それに比べるとクロエはごく普通の女性です。