要注意：　ネタばれあり！

★　背景の話と前の話がさらにメビウスの帯のように・・・

☆　トマの妻の事件

トマは妻の死亡に重大な責任のある、スイスに逃げられた外交特権を持った男をあきらめきれず、1人で時間外に事件を追っていました。しかしその男に美人豪腕女弁護士バーバラ・クルゼルがついていて、手も足も出ません。調査だけは続けて、何か手は無いかと考えながら、切れるカードが無いために一旦は手を引きます。彼女、私好みの美人とは違うタイプですが、完璧なメイクをし、全く隙の無いうら若い女性です。

ところがそのバーバラが依頼主に首を切られたということでトマの前に現われ、今度はトマの側に立って事件を手伝うと言い出します。私はこの時から「この女は蠍か毒蛇だからやめておけ」と思ったのですが、トマは彼女の話に乗ってしまいます。

バーバラの働きでスイスに逃げた男の裁判はやり直しとなります。彼女は積極的にトマを誘惑し、2人はできてしまいます。フランス男は誘惑に弱いんだ、長くドイツにいて忘れていた・・・。

それ以来トマの近くにいる彼女はちょくちょくトマが扱っている他の事件について身近で情報を得られる立場。トマがその件に口を閉ざしても、行動である程度見当がついてしまいます。

☆　グレゴワの不倫が利用される

第3シリーズの最後の2回に差し掛かっていますが、そんなある日、組織犯罪担当刑事が自宅で死体で発見されます。クロエの恩人で父親代わりのグレゴワがその刑事と不倫をしており、事件現場の刑事のアパートに事件直前までグレゴワがいたことが発覚。グレゴワのスタッフは暫くこの件を隠していますが内部調査担当者にばれてしまいます。グレゴワはとっ捕まり、スタッフはこの件からはずされ、休暇を勧められます。

一同非常にショックを受け、しょぼん。とは言うものの事件を担当する上司の目を盗んで自分で調査をする者が1人、2人、3人・・・。結局グレゴワのスタッフは手分けをして犯人を非公式に捜し始めます。

グレゴワは言い訳をせず拘留されます。妻はカンカン。何も知らなかったクロエも怒りと失望でショック。そこへグレゴワの弁護士をやると名乗り出たのが蠍毒蛇のバーバラ。しかし事は思ったように進みません。

グレゴワの部下たちはもしグレゴワが組織犯罪の刑事を殺していないとしたら誰が犯人だろうかという可能性を探り始めます。アンダーカバーで組織に潜り込んでいる、本名がはっきりしないスケラ刑事の協力もあり、少しずつ核心に近づいて行きます。

クロエとトマは手がかりを追ってある夜車を走らせていましたが、そこへ急に横から別な車が飛び出して来て、2人は意識不明の大怪我。クロエはやっと携帯で通報したもののそのまままた意識を失います。

その後はずっとクロエが出るシーンは目を覚ますまでの夢になります（またメルヘン・スタイル）。

☆　グレゴワの昔の事件の裏側

19年前の教師夫婦殺人事件が捜査線上に浮かんで来ます。その時犯人とされた少年シュリアンは刑務所に入り、最近出所。その時の担当刑事がグレゴワでした。グレゴワは事件をほとんど覚えていません。

当時の彼の解釈では教師夫婦の家に押し込み強盗として入ったシュリアンが、まず夫に出くわし3発撃って射殺。夫を撃つ銃声に驚き浴室へ逃げて中から鍵をかけたけれど、結局妻も1発撃たれて死亡。その強盗がシュリアンだったということで、シュリアンの自供もあり、一件落着。

ところが実際にはこの事件には2人の犯人がおり、未成年のシュリアン少年が全部罪をかぶって服役していました。庇われたもう1人の犯人は女性。それが蠍毒蛇だったのです。彼女は教師夫妻の娘で本名はレティシア、シュリアンはレティシアのボーイフレンド。

☆　クロエは意識不明のまま事件解決に向かう　−　その間もスタッフは調査を続ける

スタッフはクロエとトマが追突された車を追いますが手がかりが見つかりません。ちょうどその時組織に潜り込んでいるアンダーカバーのスケラ刑事から最近出所したシュリアンの居所を教えてもらいます。フレディーとトマは行った先で追突した車を発見。しかしシュリアンを誤って射殺してしまいます。2人とも肩を撃ったはずなのですが、死んでしまいました。（ちょくちょくスケラ刑事が登場し、行き詰っていた捜査ティームに耳寄りな情報を持って来るのですが、それが無いと事件が進展せず、スケラ刑事の使い方はやや推理物としてはルール違反の印象を持ちました。）

グレゴワの事件がはっきりするまで死体を隠そうとするトマと、そういう事はだめと考えるフレディーの間で揉め事。検視官も協力し、フレディーの負担を減らすために、トマの撃った弾が死因とすることで話がまとまります。検視官は数日シュリアンの死体をジョン・ドー（身元不詳男性）として冷蔵庫保存し、スタッフが事件を解決するまでの時間稼ぎに協力します。その代わりに後でトマと食事に行く約束。

クロエは夢の中でシュリアンには暴力を好む傾向が無いと考えます。彼がやったとされている殺人を他の人がやったのではないかという疑いを抱き始めます。グレゴワは主犯でないシュリアンを単独犯として刑務所に送っています。

グレゴワはシュリアンが1人で当時夫婦の家に押し込み強盗として入ろうとしたと判断。クロエは押し込みは偽装で、そこに住む夫婦を殺すことが本当の目的と判断。となると殺人の動機が問われます。

状況はと言うと、殺されたゴースは厳格な教師。シュリアンが撃っていますが、シュリアンはパニックに陥り、3発撃ってようやく殺します。夫人の方は落ち着いた犯人が浴室の鍵の置き場所も知った上で、浴室のドアを開け、冷静に頭に1発撃ち込んで仕留めています。家の事情を知った人間という事で、娘のレティシアが浮かびます。

このレティシアが後の弁護士バーバラ。

☆　視聴者を誘導

内部調査官が厳しくグレゴワのスタッフを尋問しますが、皆すっとぼけていい加減な答えをします。

昏睡状態の中事件の真相に迫るクロエは興奮して血圧が狂ったような反応を示します。その後彼女のベッドが空になっているシーンが映るので、視聴者はクロエが死んだのではないかと思い始めます。

実はスタッフはスタッフで結構いい線まで迫っており、こん睡状態から覚めたクロエも重要な情報を提供した様子。しかしそのシーンはありません。

そしてこの2話のショーダウンは、トマの自宅でトマとバーバラことレティシアが交わす会話の録音。恋人シュリアンと連絡がつかないので焦ったレティシアが蠍毒蛇の正体を現わし、トマに迫るのですが、ばっちりそこを録音。いいタイミングで刑事が飛び込んで来てレティシアを逮捕。

★　ちょっとやり過ぎではないか

・・・とまあ、トマの妻の事件と、グレゴワの事件がこのシーズンの最後に解決するのですが、ちょっと19年も前の話で引っ張るのは無理があるのではないかと思います。トマに取って非常に重要な妻の死の原因を作った男に絡んでレティシアがトマの前に現われ、トマを誘惑して愛人になり、その全てが、19年前にシュリアンを刑務所に送ったグレゴワへの復讐のためだったというのは、ちょっと強引と感じます。特にシュリアンはそうやってしつこく恨み続ける男に描かれておらず、初恋のレティシアのために自分を犠牲にし、その結果に納得しているように描かれています。

他方レティシアはしつこく恨むタイプに描かれており、蛇のようにしつこい、蠍のように危険なタイプに描かれています。恐らく両親を殺そうと提案したのもレティシアでしょう・・・ってな印象を振りまきます。その上目的のためにはトマを誘惑して愛人になってしまうような人で、その彼女が19年間シュリアンを思い続けていたとは考えにくいです。

ちょっとプロットが人工的でした。しかし事件は解決し、スタッフは皆無罪放免。めでたしめでたし。