★　狂い始めたクロエ

主人公を発狂させるのだとしたらユニークな番組です。

このところメインのストーリーはパクリが増え、ティームの方は裏話ばかりになって来たので、ネタ切れかと行く末を案じていました。

確かに末期的症状を示し始めたのですが、ここへ来てユニークな展開になりそうです。

この番組はマシューとクロエという主人公がメインと思って見ていたのですが、第2シーズンの終わりでマシューを死なせてしまう展開になり、びっくりしました。クロエはその後1年ほど表舞台から姿を消し、ブルターニアで静養しつつ世捨て人のようになっているという設定でした。

新しいシーズンになり、パリで難解な事件が起きたため、マシューの後任のトマがクロエを探し出し、事件解決に復帰させるという風になって行きました。

その後クロエの家族の問題も解決し、養子ももらえ、ルイーズが再登場してもその問題も解決し、あとは幸せな生活があるのみになっていました。それで暇つぶしにトマ、フレッド、イポリットのエピソードを次々に盛り込んで行ったのです。私は少しやり過ぎではないかと思い始めていました。

しかしクロエの発狂はさすがに私も思いつきませんでした。

第5シーズンの9回目あたりからでしょうか、クロエはそこに人がいないのに、自分ではいるように思い込んで話をするようになります。最初はトマと話しているつもり、次はリリーと話しているつもり。

間もなくトマにクロエの様子がおかしいことを感づかれます。クロエは隠していません。リリーの時は暫く話をしてから自分自身でリリーがそこにいないことに気づいた様子。

恐らくは幻覚、幻想、幻聴を伴う何かしらの精神疾患なのでしょう。クロエは心理学の教授なので、自分で診断も下せるのではないかと思います。

その後精神病院を兼ねる刑務所に入っている父親も幻覚に登場。クロエは父親の病気が自分に遺伝しているのではないかと思い、1人で悩みます。

クロエの母親殺しの罪で服役、精神を病んでいるというので入院していたはずのミシェルですが、母親が生還しているので殺人罪は無かったことになっているはず。恐らく今は普通の精神病院に入院しているのでしょう。

★　メインの事件

最近多数の男性と性関係を持ったと思われる女性が発見されます。彼女からは証言が得られず、身元は不明。話を聞こうとしても混乱していて意味を成しません。強制的に暴行を受けたのか、自由意志だったのか。警察は捜査を開始するかどうかを決めなければいけないので大いに左右されるのですが、今のところどちらか分かりません。

事件現場と思しき城へ署のティームが出かけて行き現場検証。その場にクロエの父親の幻覚が現れます。

検証中に犯人側のクリーナーとして証拠隠滅作業中の男2人とクロエ、トマが出くわしますが、取り逃がしてしまいます。クリーナーが仕事をしていた場所には大量の血の痕が残っていたので、死者が出たものと推測できます。首の辺りの血管が切られて大量出血したのではないかというのが警察の見解。

間もなく城は放火され、証拠が失われます。クリーナーから報告を受けた犯人側の誰かがやったのではないかと推測されます。

血痕を残した女性はクリステルというフリーランスの（＝　ひもを使わない）娼婦。彼女のアパートに署のティームが出向くと人の気配。フェリという名前の小学生ぐらいの年齢の子供発見。

サンドラとクリステルが友達で、このアパートにクリステルの娘フェリと3人で同居していたとのこと。城の血痕の量から推測してクリステルはすでに死亡していると思われます。警察に保護され、入院中の女性はサンドラだろうということになります。

サンドラは病室で暴れ出し、報告を受けたクロエたちはフェリを連れて病院に駆けつけます。その後フェリの祖母と連絡がつき、フェリは引き取られます。

どうやら娼婦を集めて城でサド・マゾごっこをしていた団体があるようなのです。変な衣装を身に着け、仮面を被り、妙な儀式を行っていたのですが、ゲストの1人がとち狂ってクリステルを殺してしまったとか。サンドラは仮面を描写することはできますが、出席者皆が仮面を被っているので素顔を描写することはできません。

招待客はフランスの超上層部のお歴々。警察などの力では逮捕どころか捜査をすることもできません。サンドラは直後に病院でショック死してしまいます。

警察内でもこの事件は解決できないだろうとの悲観論が広がります。フェリと同じぐらいの娘を持つようになったクロエは母親を失ったばかりのフェリを思いやって事件を追い続けますが、あからさまな横槍が入り、公式には捜査は中止となります。署内では誰も喜んでいません。グレゴワ以下皆が秘密裏に捜査を続けることで暗黙の合意に達します。

幻覚を見るようになって不安定なクロエですが、いい事を思いつきます。これまで何度か登場した、クロエに気のあるメディア王のヴァンサンに上流階級とコネを作ってくれるように頼みに行きます。

「クロエの態度はずるいなあ、でもフランスならあるよなあ」と思うのです。彼女は1人でヴァンサンを訪ね、彼がクロエに気があるところを知り尽くし、しかも自分にはヴァンサンに全然気が無いことを自覚しつつ無理難題を頼み込むのですよ。

ヴァンサンはフランス版マードックと言えるようなメディア王なので、彼の所にもサド・マゾごっこの招待状が届いたことがあり、どんな様子か1度見に行ったことがあります。しかし彼の趣味でなかったのでこれまでに1度行っただけ。しかしクロエに頼み込まれてヴァンサンはコネを作ってあげます。フランス女性の身勝手さを一応見聞きしている私はこれまで「お邪魔虫」と呼んで嫌っていたヴァンサンにここではすっかり同情してしまいました。

ヴァンサンはこの団体の社会的地位を知っており、クロエが娼婦のふりをして入り込むことの危険をよく承知しているので、これまでのややふざけた態度が消え、マジに心配しています。このシーンではロン・レンツィックはいい演技を見せます。

決め手になる証拠はこれまで挙がっておらず、検察は全ての捜査を中止。クリステルの死体はあがっておらず、発見された証拠が署内から消えたりもします。捜査ティームは長期戦の構え。

クロエはヴァンサンの他には誰にも言わずにパーティーに潜入しますが、招待状を事務所に置いていったのでトマは彼女の行き先を知ります。

★　その間に署でも一騒動

これまでの流れではフレディーとイポリットの関係は相性がいいにも関わらず、うまく行っていませんでした。自堕落、ちゃらんぽらんで亭主（フランスなので事実婚状態と推測される）持ち、フレディーの妹のジェシカが、女性関係では初心なイポリットとパーティーのドンチャン騒ぎの間に関係。9ヵ月後にはシドニーと名づけられた息子が誕生。育児放棄を決心したジェシカがイポリットの事務所に子供をを置き去りにしていました。それまで自分に子供ができたことなど一切知らず、いきなり子供を突きつけられたお人好しのイポリット。しかし彼が責任を取る覚悟をしたこともあり、フレッドはイポリットを諦める気になっているところ。

現在のジェシカは前の夫ヌーヌース（英語名：　テディーベア）との関係がきっちり切れておらず、イポリットの前にはほとんど現われていませんでしたが、ジェシカを手放す気のないテディー・ベアはイポリットを殴りに来ます。暴力行為の現行犯でテディー・ベアは取りあえずは豚箱入り。

釈放が決まった時、イポリットはテディー・ベアを事務所に呼び「自分がジェシカと結婚するのだ（＝　お前は邪魔だ）」と宣言。そしてテディー・ベアを骨の髄まで脅します。

あの女性的で弱々しい上、世間知らずのイポリットがどうやって暴力的なテディー・ベアを脅せたのか。　−　イポリットの専門は IT。彼はテディー・ベアのデジタル・データを画面に呼び出し、次々と消して行きます。銀行口座、健康保険、自動車の免許書等など、彼の名義のデーターを全部消してしまいます。お金はいつもニコニコ現金払い、無病息災、マラソン選手ほどのの体力が無いと暮せない・・・と画面を見せながら脅しておき、後でデーターを元に戻します。「今後2度とジェシカと自分に近づくな」と普段のイポリットと違いはっきり言い渡します。

クロエはシドニーがいるからと言って、イポリットが必ずしもジェシカと結婚しなければ行けないわけではないという見解。しかし躾の厳しいエリートの家に育ったためか、イポリットは古風な責任の取り方を選択。

★　またメインの事件へ

ヴァンサンの事務所を訪ねたクロエですが、彼の事務所はメディア王としてはかなり質素。家賃の高いパリなので、町の真ん中のビルに事務所を構えるだけでかなりのお金がかかるのでしょう・・・と私は解釈。

さて、ヴァンサンの手引きでまんまと城に忍び込んだクロエ。クロエが相手にする人間がどんな人たちかを良く分かっているヴァンサンはマジで心配をしています。

森でへんてこりんな儀式を行い、その後城に連れられて行きます。城ではセックス騒ぎ。クロエを含む娼婦は赤い衣装、女ボスは緑の衣装。前のエピソードでクロエのお尻が丸見えになるシーンがあったのは、この回への準備だったのでしょうか。

いよいよという時になり、クロエは緑の衣装の女ボスに怪しまれます。ヴァンサンも怪しまれ、パーティーの外へ無理やり連れ出されます。クロエには男が張り付き、ある部屋に強制的に連れて行かれます。

クロエが招待状を事務所に置いて行ったのでトマは行き先を知ることができます。クロエがいよいよ危なくなったところへ都合良くトマが飛び込んで来て助かります。しかし独断で無茶をやったためグレゴワはカンカン。しかしこの出来事のおかげで犯人の見当がつき始めます。

★　あまり納得の行かない結末

パーティー会場の外へ連れ出されたヴァンサンは殴られ、翌朝目を覚ましたら自宅のベッドの上。その直後から彼の会社の株価が急激に下がり、ヴァンサンは破産。後日クロエにさようならと言って悲しそうに微笑ながら去ります。

警察にはテュリエという弁護士が乗り込んで来て、トマを脅します。その後ある男が自分が犯人だとして女弁護士に付き添われて出頭して来ます。興奮し過ぎて起きた過失致死の線を狙っています。犯人側では何かしらの形で犯人を1人差し出して、検察や警察と手打ちという作戦のようです。

犯人について来た弁護士が緑の服を着ていた女ボスだと気づくクロエ。同時に正式に警察のスタッフの1人として尋問に立ち会うクロエがあの夜パーティーに潜り込んでいた娼婦と気づく女弁護士。

問題は端っこのひとかけらが解決しただけ。政界、業界、役所などの上層部が絡んだ大々的なシンジケートがあり、ちょくちょくこの種のパーティーを行っており、時には死人も出る、そのためにクリーナー、用心棒を含む脱法行為、違法行為を請け負うスタッフがいるという所に手を突っ込むには相手が大き過ぎました。

このストーリーはフランスの隣国で起きた事件をヒントに作られたものと推測されます。現実の世界ではクロエたちのように解決に尽力した人たちがいたのか、国ぐるみでもみ消すことだけを考えたのか分かりません。もう大分年月が経っており、時たま以前より詳しい解説が出たりしますが、全貌が表に出るには現在起きているような政治、外交、経済を根底からシャッフルし直すような出来事が完了しないと無理でしょう。当時からクロエの話同様各界のトップが深く関わっているとされていました。ただ現実にはそういった古い体制が今目の前でシャッフルされているので、もしかしたら私が生きている間にこの事件の全貌が明らかにされる日が来るかも知れません。でないと誘拐された多くの少女たちが浮かばれません。

★　署内内輪の問題

クロエはこの週も事件解決に貢献しましたが、父親の幻覚は消えません。徐々に自分が父親と同じ分裂症になって行くことを自覚。幻覚に出て来るお父ちゃんは「クロエは助けを求めるべき」と助言するのですが、クロエは闇のディーラーと連絡し、闇で流れている薬品を買います。

トマはトマで妹の腎臓移植のドナーが見つからず、悩んでいる最中。刑務所にいるある男を訪ねると、男は「刑務所内で死んだ人間がいる」と語ります。

この男は CSI ラスベガスに登場したミニチュアをグリソムに送りつけて来る男と同じぐらいしつこい人間で、トマはトンでもない男と関わってしまいます・・・。