★　全部をご紹介はしませんが・・・

今後暫く再放送が続くようです。私たちは第1シーズンの途中から見ていたので、今後全部をご紹介するつもりはありませんが、時々話題があればご紹介と思っています。現在は第3話まで来ていますが、ここでは第2話を取り扱ってみたいと思います。

クロエの参加を好ましく思っていないティーム。穏やかな性格でコンピューターオタクのイポリット1人がこれといった対立姿勢を示していないだけで、他のメンバーはあからさまに文句を言ったり、クロエに「君は我々の一員ではないんだぞ」と示したりしています。なので勤務の環境としてはクロエには居心地のいい場所ではありません。

グレゴワはまだ誰にもクロエとの本当のつながりを話しておらず、クロエもそういう話はしていません。ただ、やや浮世離れしているクロエにグレゴワは「もう少し振る舞いを変えては」と第3話の途中で忠告し、クロエは自分でケーキを焼いて職場に持って行こうと思い立ちます。しかし元々不器用なクロエの台所は小麦粉だらけになってしまいます。

意を決して近くのケーキ屋に行きますが、時間が悪く、全て売り切れ。しかしお祝い事に使われるはずで売れ残ってしまったケーキが残っていて、それを買って事務所へ出勤。皆はクロエが気を使ってケーキを振舞ったことは無視して、早速つまみ食い。おいしかったと見え、瞬く間になくなりそう。

☆　お祝いのケーキ

欧州には今でも古い伝統や習慣が残っていて、時々お祝い事があるとそういう物が登場します。結婚するときにウェディング・ケーキが出て来るのがその典型。この習慣は欧米のみならず世界に広がりました。

びっくりのケーキはバームクーヘン。名前がいかにもドイツ語風なのでドイツの伝統だろうと思っていたのですが、私はドイツではほとんど見たことがなく、たまに見ても小さな、1人用か家族用サイズ。

私が見たのはルクセンブルクで行われた結婚式でした。まずびっくりなのはこの結婚式が夜を徹して翌日まで続いたこと。出席者はいかにも当然という形ですばらしく着飾って（一部の欧州の王族に近い服装）、パーティーは大きな会場の庭で行われました。そのあたりまではまあ、欧州ではこんな事をするんだろうと初めての経験ながら納得しかけていました。

そこに登場したのが巨大なバウムクーヘン。腰ぐらいの高さのテーブルに乗せると、私の頭より高くなります。チョコレートが塗ってあり、外から見るとバウムクーヘンかどうか分からなかったのですが、持って来た人と話していてこれがバウムクーヘンだと分かりました。下は大きく、上に行くにつれて細くなっていました。結婚祝いなので、皆で小さくカットしたものを食べるのだろうと思っていました。

ところが・・・。

その、王族のように着飾った女性がいきなり手づかみでクーヘン（バウム　＝　木、クーヘン　＝　ケーキ）をちぎり始めたのです。腕半分ぐらいを突っ込み、チョコレートだらけになりながら手でクーヘンを1人分ぐらいの大きさに分けていたのです。私は目の前で起きていることが信じられず、唖然として見ていましたが、周囲のほかの人は当然といった顔でそこを通り過ぎたり、見ていたりします。

結婚したのは私の知人のドイツ人で、夫になる人がルクセンブルク人。かなりのお金持ちだったようで、ぞろぞろ来ていた着飾ったゲストはどうもご主人の知り合いのようでした。私は花嫁の知り合いとして地味な姿で来ていましたが、誰も身分の違いは気にしておらず、私も惨めな思いをせずにいられましたが、ドイツのすぐ隣で、言葉も似ているルクセンブルクの文化の違いに唖然としました。ドイツにもベルリンと違う文化はありますが、唖然とするほどの違いはありません。（ミュンヘンに代表される）バイエルンと（ベルリンに代表される）プロイセンでは食べる物、ビールから伝統の衣装まで違いますが、それでも唖然としたことはありません。

★　誰が誰をパクったか

第1シーズン第2話の事件は癌治療専門の医師親子殺人と殺人未遂事件。息子は殺されてしまい、父親も危うい所でした。当初浮かんだ容疑者や犯罪動機は消えて行き、終盤に真実が表に出て来ます。

当初は医者と自然療法の治療師のライバル関係なども取り沙汰されますが、関係者のアリバイや主張が証明され、容疑者リストから外れて行きます。

最後に残ったのは意外な人物。

★　世話好きが嵩じて

殺された息子医師の治療を受けていた若い女性がいました。余命いくばくもなく・・・という状況だったはずなのですが、医師の死後カルテを調べて見ると「完治している」と書かれていました。

彼女を献身的に世話していた姉によると妹はあとどれぐらい生きられるか分からないとのこと。この矛盾に行き当たった捜査チームが真相を解明します。

妹が治ってしまうと姉の存在理由がなくなるために、嘘をついてまで妹を病人に仕立てていたのです。いよいよ真実がばれそうになると姉が妹に毒を注射して殺そうとします。心中をするつもりのようです。捜査チームが踏み込み暫く押し問答。最後姉は自分に毒を注射。

★　スペインの作品

これとよく似た構造の姉妹映画がファンタに出ていました。ネストというタイトルで日本でも公開されたようです。芸達者な女優マカレナ・ゴメスが姉の役を演じています。

1950年代のスペイン。両親がおらず、年長の姉がこれから成人する妹の面倒をずっと見ていました。姉は注文服を作る仕事で2人の生活を支えていました。妹は姉から自立したがる年頃。姉は家の外に出られない人。とは言っても所謂引きこもりと違い、家の中はきれいで、人が尋ねて来るとちゃんと応対できます。

窓から外を見ると、妹にボーイフレンドができそうな気配。姉はそういう事を嫌い、禁止しようとします。洋裁の客の1人は精神分析医の夫人なので、姉の様子を心配し、医者にかかることを進めますが、姉は丁重に断わります。

そんな風に問題の芽が大きくなりつつある中2人の住むアパートに男が転がり込むことになります。階段で足を滑らせ、怪我をした同じアパートの住人が2人の住む部屋の前で助けを求めたのです。いきさつから男を部屋に引っ張り込み、姉は男の世話を始めます。妹にも男の存在はばれます。これまで2人きりだった生活のバランスが妙に変化します。

ネストにはクレアの姉の動機以上に複雑な事情がからんでいますが、骨子となるのは妹を自分の元にとどめて置きたい姉という構造の人間関係。

こういう事ができるのは欧州の生活習慣と建物の構造に理由があると思います。昭和の頃までの日本ですと、アパートの壁は薄い、田舎の家は普段開けっぱなし、そして近所づきあいも多かったので、誰かを家に閉じ込めておくことは無理。病気という口実を使っても、近所の人が気を利かせて他の医者を紹介してくれたり、なかなかクロエの事件やネストのようなわけには行きません。

それにしても近年子供を自分の手元に置こうとしたり、この姉妹のようだったり、家族関係が開放的でなくなったように思います。