★　第4シーズンへ

最近ティームの中でカップルが続出しており、あまりいい傾向ではないとは思うのですが、第4シーズンの冒頭でオフマンとクロエの関係は一応決着がつきました。オフマンは離婚、妻は癌、クロエはオフマンと同棲する気は無し、ティームは2人の関係を心配という状況でしたが、クロエとオフマンが直接話し、クロエに勧められ、オフマンは取り敢えず病気の元妻と、非行に走る娘の面倒を見ようという気になります。仕事では2人は個人的な付き合いは横っちょにおいて捜査に集中できるようになっています。

★　フレッドに焦点が移る

イポリットとフレッドは視聴者として距離を置いて見ていると相性はいいのですが、本人同士は喧嘩ばかりしています。男っぽく積極的なフレッドと、お祖母さん子のようなやや女性的で敏感なイポリットの間では古典的な男女の役割が逆転していますが、それでも2人は合っている感じがします。

そのフレッドには困った妹ジェシカがいて、第4シリーズの第3話冒頭に登場。魅力的な女性で、フレッドの勤める署に訪ねて来ます。署の男性は彼女に魅了されますが、フレッドはこれまでずっと妹の事は語っておらず、この場でも迷惑そう。

私もこのタイプの女性を知っていますが、普段無責任な暮らし方をしていて、問題が山ほど溜まると姉を頼って来るという人。今回もどこかで金銭問題意を抱え、パリの姉を頼って来ました。そして行く先々で男性を誘惑します。フレッドの所にはトラブルが山積。

こういうタイプの女性に私は日本では会ったことがなく、欧州に来てからは時々目にしました。大体私の時代には周囲の男を片っ端から誘惑してベッドに連れ込む女性なっていうのはほとんどいませんでしたからね。時代が変わったので、現在はいるのかも知れませんが、あまり日本的という感じはしません。

ただ、男関係以外ではトラブルをどんどん作り、挙句に誰かに頼って、そこへトラブルをどっと運び込む人はいました。私もそういう台風娘に20年近く振り回されていました。

フレッドと妹ジェシカは正反対の性格で、まじめ：不真面目、責任を取る：無責任などの点ではっきり分かれています。姉が家族の中で生真面目な役目を引き受けるので、後から生まれて来た妹はそれとは違う役目を引き受けるようになったという説明が可能ですが、成人した女性としては社会に対し一定の責任を負うのが普通で、ジェシカは軌道を外れた人物と言えます。

第4シリーズ第3話のメインの事件では一卵性双生児の片方が犯人なのですが、その2人も正反対の性格。片方は比較的まじめな家庭の人で、事件に振り回される弱い性格。もう1人は殺人もためらわず、非常に積極的。積極的な方は、弱い姉妹を陥れることまでやります。

正反対の性格を持つ2組の姉妹を紹介しながら、事件は解決に向かいますが、最後にフレッドがイポリットを好きだということがはっきりします。ジェシカはパリのフレッドのアパートに転がり込むのですが、勝手に署のスタッフを全部招いてどんちゃん騒ぎ。帰宅したフレッドは怒り心頭。特にジェシカはイポリットを誘惑してベッドインの最中でした。

ジェシカには親が死に掛けている時にフレッドに全部任せて家出してしまったり、フレッドの親友が結婚する当日に夫になる人を誘惑してベッドインしてしまった過去があります。それでいて陽気に笑っているだけ。あたかもフレッドの生活をこういう形で妨害するのがジェシカの趣味のようです。

なので長い間顔を合わせずに済んだフレッドはその間は順調・・・と言いたいところですが、彼女は1度アルコール中毒になり、そこから立ち直り、現在は自助グループのリーダーをしています。人生の何かが彼女の負担にはなっていたのでしょう。妹はそれをパッと外に現わし、フレッドは内に秘めてしまったためアルコールに手を出したのでしょう。

★　イポリットとフレディー出来上がり

第4シーズン第4回には妙な成りすまし事件が起き、クロエが出演しているラジオの人生相談番組に、家庭内暴力事件の被害者と見られる女性カロリンから電話がかかりますが、その場で救うことはできませんでした。警察のティームは本当に事件が起きたかはっきりしないものの捜査にかかります。

イポリットやフレディーも事件に関わりますが、妹のおかげでイポリットと気まずくなってしまったフレディー。妹が作り出すトラブルは熟知しているフレディーですが、イポリットまで妹に引っかかってしまいおかんむりでもあり、失望も。しかし仕事では毎日顔を合わせなければなりません。

フレディーをモノにしたいイポリットはフレディーの知り合いで時々付き合っているらしいジャーナリストのユーゴをフレディーの目の前で追い払います。カッカするフレディーにイポリットはキスで応えます。

★　トマのロマンス墜落

恋人と思っていた弁護士バーバラを逮捕する羽目になり失意のトマ。その後署内の組織暴力関係の刑事サラと付き合っているつもりだったのですが、グレゴワから個人的な情報を得ます。グレゴワが彼女と同じ課の刑事と話している時に彼女の事を聞いたら、その人は全く知らなかったのです。それでグレゴワが調査をしたら、彼女は内部調査担当だったそうです。つまりトマを探っていたのです。

トマはグレゴワの行動をおせっかいとは取らず、彼女には三行半。私はトマにはクロエの方が合うと思うのですが、クロエに再びアタックするのはスケラ。

★　スケラも墜落

本当にアンダーカバーとして組織暴力の世界に潜り込んでいるスケラですが、神出鬼没。時々クロエの前に現われ、時にはトマに追い払われたりします。この日は真夜中にスケラがクロエのアパートに押しかけて来ます。私はフランス人はほとんど知らないのですが、確かにロマンスに関してはしつこいとか、押しが強いという話は聞いています。

80年代には知り合いの女性が、日本人の間では有名になっていた白髪のフランス人詐欺師に引っかかったのではないかという事件まであり、私はあまりフランスの方向には向かないようにしていました。その人物については当時日本でよく売れていた旅行ガイドに警告が掲載されていました。まさかとは思うのですが、ドイツで有名な、外国人が入る語学学校に在籍していたその日本人女性にくっついていた人が容姿、特徴共にそっくり。今でもまさかとは思うのですが、当時はとても心配しました。たしか癌で余命・・・ってな話をその女性は聞かされていたように記憶しています。ま、詐欺師でも癌になることはありますからとやかく言いませんが。

クロエはフランス人なのでフランス男の手管は承知しているのでしょう。押しかけて来たスケラとキスはしますが、自分に向いていないと気づいているクロエははっきり断わります。この程度でめげるスケラではありませんが、この日は退散。

★　クロエ墜落

男運の悪いクロエは子供運には恵まれているのかと希望を持ち始めます。まずトマの子供との関係がうまく行き、その後の事件で知り合った少女リリーの里親になろうかと真剣に考え始めます。現在は施設に保護されていて、リリーが熱を出した時は所長がクロエに連絡して来ます。リリーは麻薬事件で母親が死んだ後、クロエを母親のように慕っているようです。

ところがいよいよ里親になるために公式に手続きに入ろうとした時、子供の実父が現われ、子供を引き取ると言い出します。クロエの目からは大粒の涙が。

この番組は夜に放映される昼ドラなのです。あくまでもクロエちゃんは幸せになれない・・・。

★　女性の問題を女性が起こす

巷には本当に女性に暴力を振るう困った男性がたくさんいます。ただ、その問題に取り組む時にいんちきをしては行けないというのがこの日の内容。

クロエのラジオの人生相談番組に緊急避難的に電話して来たカロリンが大怪我をした状態で発見され、警察は行方不明だった夫を見つけ事情聴取をします。

カロリンはまず入院して手当てを受け、その足で女性暴力被害者保護団体の公開インタビューに登場。世間の注目を浴びます。団体のリーダーの女性が話をし、カロリンは怪我をした酷い格好をカメラの前で見せるのが役目。

ところが被害者であるはずのカロリンの証言と行動には矛盾が続出。事情聴取を受けている夫はどうやら彼女に手をかけてはいない様子。世間には暴力を振るう夫として知られてしまいます。

最初からこの事件に巻き込まれていたクロエはカロリンを観察して自分でカロリンが怪しいという結論に達し、その事をカロリン本人や女性暴力被害者保護団体のリーダーの女性にも言います。

警察はカロリンの偽証の捜査に成功し、あとは立件するかを決めるだけの問題になります。自称カロリンは実は郵便配達員のマリアンヌでした。ところが偽証の件でフレディーがマリアンヌを連行すべくアパートを訪ねると、マリアンヌは殴り殺されていました。検死の結果妊娠したことがあるはずのマリアンヌはまだ妊娠したことが無く、病的な虚言癖があることが分かって来ます。

実はマリアンヌは郵便配達の仕事中見かけた、夫から暴力を受けてボコボコにされているカロリンのアイデンティティーをパクっていたのです。フレディーの知り合いのジャーナリスト、ユーゴが死の直前のマリアンヌを監視しており、女性暴力被害者保護団体のリーダーがマリアンヌを訪ねたところを目撃していました。リーダーはその時マリアンヌの公式な謝罪文を取っており、偽証事件を自分なりに解決している最中でした。なので彼女は白。

メディアに登場したマリアンヌが嘘をついていることに始めから気づいていたのは本物のカロリンと彼女に暴力を振るう夫。犯罪動機があるのは夫。それに気づいてカロリンの家に乗り込み、首尾良く夫を逮捕したのですが、それを見たカロリンは窓から飛び降りて自殺に成功。カロリンは暴力を振るう夫に強く依存しており、夫が刑務所に入ると1人では生きて行けなかったのです。たとえ殴られてもこれしか生きる道を知らなかった女性の悲劇が描かれていました。

★　女性解放の出発点と到着点

このシリーズは女性を中心に置いたシナリオが書かれており、他の警察シリーズと比べそこで個性を出しています。最初はそのあたりがはっきり表に出ておらず、女性解放運動の一環であるとかいう印象は受けません。シリーズが進むにつれそこがはっきりして来ました。別にそれが原因で嫌いになるという事ではありませんが、クロエを演じている女優に疲れが見えて来ます。女優として枠を決められてしまったことに疲れたのか、女優本人とクロエの役でイデオロギーにずれがあるのかは分かりません。

例を挙げていたらきりがありませんが、一見同じような生活をしているように見える西洋と東洋、また外国と日本では根本的な所に大きな違いがあるように思います。そのため私は日本的な女性の生き方を今でも探しています。 女性の幸福な道を探しながら男性と折り合いをつけて行く、男性は男性で男性の幸福な道を探しながら女性と折り合いをつけて行く、こういった生き方の方が、勇ましい思想を振りかざした解放運動より結果的にはいいのではないか、時間は長くかかるけれど、急がば回れと言うではないかなどと考えながらクロエ・シリーズを見ています。

★　お邪魔虫のスケラ

第4話でクロエに正面切ってノーと言われたスケラは、次のカードを切って来ます。

アンダーカバーをやっていたスケラは今度は正式な刑事としてクロエの勤めている署に勤め始めます。しかもティームの上に立った感じ。元々スケラとウマの合わないトマも、数日前に彼を拒否したばかりのクロエもうれしくありません。他もメンバーもスケラをあまり好きではありません。

情報で釣るという手を使い、スケラはちょうどクロエが首を突っ込んでいたリリーの件でクロエにいい顔を見せようとします。クロエは自分が里親になろうと思っていたので、リリーを諦め切れず、リリーの実父のアラを探し始めます。尾行したり監視しますが所詮素人。とは言うもののリリーの父親が変な人物と会い、現金と物品を交換しているところを目撃します。

クロエがそんな事をしている様子をプロの警官のスケラが監視しており、スケラはリリーの実父が注射器を使っている写真を見せます。すは麻薬だと思い、クロエはソーシャルワーカーのふりをして父親の家を訪ねます。

話をしている最中に調子が悪くなった父親はトイレに立ちます。注射をしている気配を感じたクロエはドラッグ注射の現場を押さえるつもりでトイレのドアを開けます。確かに注射はしていました。しかしそれはクローン病の薬。体の全消化器に潰瘍が発生する難病です。非常に痛みを伴うので、リリーの父親は恐らく痛み止めを注射していたのでしょう。欧州で使われる痛み止めは日本で麻薬扱いされるものもありますが、どうやらリリーの父親は医者からちゃんと処方された薬を使っている様子。

クロエに注射をしているところを見られても落ち着いている実父。クロエがソーシャルワーカーでないことを見破り、警察を呼ぼうかと実父が言うので、クロエは警察の身分証明書を見せます。

ようやくお互いに率直な話を始めます。リリーの父親は母親と1ヵ月半ぐらいしか付き合っておらず、妊娠したことは全く知らなかったと言います。病気のためにたくさんの薬品を家に置いていて、自分で注射をしている様子（欧州にはこういう患者が多い）。

実父が重病だけれどまじめな人間なら、実父にリリーを引き取らせ、クロエがしょっちゅう訪ねていけばいいのにと思いますが、この週にはそこまでは話が進みません。

クロエに情報を渡したスケラは、そこまで詳しく分かっていたのでしょうか。クロエが注射器を見て麻薬と思い込むことを予想していたのでしょうか。

規定の年数が過ぎたこともあってアンダーカバーを辞め、表の仕事に戻ったスケラ。しかしグレゴワがトマに極秘情報を伝えます。署内で押収したアンフェタミンが大量に消えたのです。そしてグレゴワはスケラを疑っている様子。クロエちゃん、スケラには近づかない方がいいですよ。