えっ?!
こんなところに仏教語!


  

 拙著「仏教の言葉」がこの度、文庫化されました。
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 文庫の定価は648円(+税)です。
 合掌。


第 229 回

仏陀とイエスが、東京の立川のアパートで同居して過ごすという、ふざけた不敬なコミックがあります。初版は2008年だそうです。そんなころ、「こういうコミックがあって、面白いですよ」という紹介を何人からもされました。知っている人も多いと思いますが、そのコミックの題名は「聖☆おにいさん」ですね。
で、人から勧められる、そのたびに私は、
「聖者を笑いのもととする行為は、どうもねぇ、受け入れられないよね」
と答えていました。ところが……。
ここ何日かの間に、来られる方が「聖☆おにいさん」の話をしていくのですよ。最近は、「あぁ、知ってます。読まないですけどね」と答えていました。当然、その話をした方も「そりゃ、読まないですよね」と言います。でも、そんな時に、
「まあ、堅く考えないで、読んでみたら」
という声が聞こえてきたのですよ。幻聴かも知れませんが。
が、私は素直なので(笑)、「聖☆おにいさん」読んでみました。これが、結構面白いんですよ。なるほど、一般の人は、そう捉えているのか、あぁここは正しいな、これは説明が必要だな、といった事が分かるんですね。結構、参考になります。素直に読んでみてよかったですね。まだ、初めのほうだけですが。
でも、確かに、ふざけていることはふざけています。間違っている・誤解している部分も、なきにしもあらず、ですが……。いや、でも、作者はよく勉強していますよ、と思いました。

で、今回は、その「聖☆おにいさん」にちなみ、「聖」についえてお話します。

「聖」というと、何となくキリスト教っぽい感じがしますが、佛教にも「聖」はあります。ただし、佛教では「聖」を「せい」と読むことは滅多にありません。「聖者・聖人」くらいでしょうか。でも「聖者」は「せいじゃ」ではなく「しょうじゃ」ですしね。「聖人」という言葉は本来はないのですが、日蓮聖人とも言いますし、この場合も「しょうにん」です。つまり、仏教では「聖」は、「しょう」と読みます。「聖観音」も「せいかんのん」ではなく、「しょうかんのん」が正しい読み方ですね。その点、ご注意ください。

さて、「聖」の意味をおさえておきましょう。まあ、なんとなく分かるとは思いますが、一応ね。お馴染みの新明解国語辞典によりますと

①(儒教で)知徳がすぐれ、すべての人から指導者と仰がれる人。「聖人・聖賢・大聖」
②(キリスト教で)高徳の人、または信仰の対象とされることを表わす。「聖母・聖像・聖書・聖夜・聖ヨハネ・聖家族」
③天皇に関する表現に添える。「聖上・聖業・聖徳・列聖」
④神聖。「聖域・聖火・聖地」
⑤それぞれの専門の分野で最高の評価を受けている人の称。「歌聖・楽聖・詩聖・棋聖」

とあります。儒教が最初に出ていたのには驚きましたが、こうしてみると、普段我々が使っている「聖」は、やはりキリスト教に多いように感じますな。儒教的な言い方は少ないし、天皇に関しては、庶民には関わりが無いところでしょう。⑤なんぞは、たまに見かけますよね。特に「棋聖」は、その趣味があればご存じの言葉でしょう。
これが現在使われている「聖」とその意味ですな。

では、佛教の「聖」はどうでしょうか? こちらもお馴染みの仏教語大辞典によりますと、

①高貴な人。立派な人。もとアーリア人に由来することと考えられていた。
②正の意味。正道を証したことをいう。
③聖者。凡夫の対。
④特に釈尊のこと。
⑤無漏(けがれなき)なる人。
⑥鈍根の聖者たること。
⑦仙人。
⑧聖人のこと。
⑨信頼されるべき人。
⑩往昔の師。

とあります。①は、当時の(古代の)ネイティブなインド人にとっては、アーリア人は高貴に見えたのでしょう。アーリア人は、眼が碧く、西洋系の姿形をしていましたし、文明も発展していましたから、高貴な人に見えたのだと思います。まあ、しかし、この意味では「聖」は使いません。
主に使われるのは②③④ですね。⑤⑥は、②~④と同じ意味です。⑧もそうですね。かろうじて⑦も②~④に含まれますな。⑨⑩に至っては、現在の⑤とほぼ同じですね。
現在も佛教語も、「聖」は、尊い人に使う言葉が中心のようですな。

尊い人=聖者。こうした人になるのは、ほど遠いと皆さん思われるでしょう。まあ、簡単なことではないですよね。少なくとも、専門分野で、トップを取らないといけません。将棋や碁ならば最高のタイトルを。研究分野ならばノーベル賞を。音楽にしても、バレイにしても、芸術にしても、「聖者」的な扱いをされたいならば、その分野で最高峰の立場に立たねばなりません。
宗教で言えば、悟りの境地に至った者か、仙人のように過ごしている者か、ですよね。悟りの境地に至るのも仙人の暮らしをするのも、まあ、確かにほど遠いですな。偽物はいっぱいいますが、本物はいませんね。
でも、「聖☆おにいさん」の表紙の大きなタイトルを見て、私はふと閃きました。そう「聖」の字をよく見て閃いたのです。
「聖」の字は、「耳」と「口」と「王」でできています。つまり、「耳」と「口」の「王」となれば、「聖」になるのですよ。「耳」と「口」の「王」とは、いったいどういうことでしょうか。

「王」とは「支配者」のことですね。自由自在に支配することです。ということは、耳と口を自由自在に支配できれば、聖者になれるのですよ。具体的にいいますと、
1、耳で聞くことを正しく理解する。他人の言うことや、世の中で流れているすべての音について、何を言っているのか、何を表現しているのか、正しく理解すること。決して自分の感情をはさまず、絶対的客観の立場で音を聞き、理解すること。
2、正しく理解した音に対して、正しく答えを持つこと。他人の言葉ならば、何が言いたいのかをよく理解し、それに対して正しい言葉で導くことです。その他の音に関して言えば、正しく評価すること、ですね。あるいは、何を意味しているのか正しく理解し、それを伝えることです。

なんだ、そんなの難しいじゃないか、と思ったかたは、正解です。はい、すべてクリアしようと思えば、それは至難の業でしょう。でも、他人の言葉に耳を傾け、何を言っているのか理解し、的確な言葉で導く、事くらいは、なんとかできそうじゃないですか? 実際、会社内で、そのようなことができる人は、社員から尊敬されているのではありませんか? そういう人がいる会社もあるのではないですか?
尊敬できる人って、多くは、よく話を聞いてくれるし、よく理解してくれるし、的確なアドバイスをしてくれる人じゃないですか?
そういう人って、たまにかも知れませんが、いますよね。聖者みたいな人。と言うことは、聖者はいますし、なろうと思えば、誰でも聖者になることができるのですよ。
本来、それは宗教者がやるべき事なのですけどね。今の宗教者は、金の亡者のようになっていますから、聖者からはほど遠いですな。

人の弱みにつけ込んで言いように苦しんでいる人をコントロールし、金を出させる。これが、新興宗教のイメージですよね。多くの方がそう思っているのではないでしょうか。
確かに、彼らは、苦しんでいる人の言葉を聞き、理解してくれるし、その人の心にしみるような言葉もかけてくれるでしょう。そこまでは聖者と言ってもいいかもしれません。ですが、その後が悪魔なのですよ。金品を要求するのです。そこが、新興宗教のダメなところですな。

聖者は、最後まで正しくなければなりません。正しく聞き、正しく理解してあげ、正しい言葉で、正しい道を示す、それが聖者でしょう。
もはや、そうした聖者のような宗教者が期待できない今現在、その代わりをあなたがしてもいいのではないでしょうか?
本来聖者であるべき宗教者を蹴散らし、一般の人が聖者になってもいいのですよ。それほど、今の宗教者は、ダメダメなんですよね。

私とともに、聖者を目指しましょう。腐った欲まみれの宗教者・偽聖者に欺されないように、自分自身が聖者を目指せばいいのです。その方が、苦からも逃れられるのですよ。
まずは、正しく聞く「耳」を持つことです。それから、口に進んでいきましょう。そして、最後は、耳と口を支配するのです。難しいことではありません。日頃、心がけていれば誰にでもできることです。
今日からあなたも、聖者にチャレンジです。
合掌。


今までに紹介した日常に生きる仏教語
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