「Aqua Dulce」。パーカションの鳴動と、それに続く2管編成の轟きとともに亜熱帯の密林奥深く分け入っていくような気分。まるで地を這うアナコンダにも似た沼地を蛇行するサックスサウンド。そこへ熱帯樹林を縫って射し入る木洩れ日のごとくヒューバートローズのフルートの音色が神秘的に鳴り渡り、色彩鮮やかなアゲハ蝶が無数に飛翔するのを目の当たりにするよう。
実際今回のアルバムでは、なんといってもヒューバートローズのフルートが、いつものクルセイダーズ調とは一味違う雰囲気を醸し出しています。
ジャケットを飾る「CHILE CON」すなはち唐辛子を、表面一杯に配したデザインこそは、このアルバムの特徴を端的に物語っているようです。つまりピリリと辛いラテン風味の味付けで、額に汗して南方情緒纏綿たる雰囲気を満喫して下さいヨということでしょうかネ。
「Aqua Dulce」も良いですが、今回は特に「Ontem A Note」が好きですネ。
熱帯密林での褐色の肌の少年、少女の恋物語を彷彿とさせるこの曲は、さながらクルセイダーズ版「黒いオルフェ」のように切なく、フルートのセンシティブな音色は一種崇高な印象をさえ感じます。
「Tough Talk」が、お馴染みのクルセイダーズ節ってことはもう言わずもがなのことでしょう。
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