このアルバム、SIDE ONEは瑞々しくも軽快そのもの、まだ青いリンゴを齧った時のシブミが口いっぱいに広がるような、ほろ苦さと清々しさが相混ざったそんな味わい。そしてSIDE TWO、一度聴くなり、これはもう完全に久々の「ハードボイルドだど」と直感しましたネ。
「On Broadway」、「Green-Back Dollar」はサックスの響き高らかに、スティックスフーパーのドラムもすこぶるパッショネート。引いては押し寄せる波動のようないわゆる「HEAT WAVE」。
「Mr.Sandman」にはひと時の倦怠感が漂い、しばらくの間をおいて流れるジョー・サンプルの流麗なピアノの音色がまるで温泉入浴後に飲む冷えた一杯の「まろ茶」の心地よい喉ごし。
SIDE TWOの「Theme From L.Shaped Room」は実にもうカッコ良い。サンプルの、音のこもったようなピアノの旋律。暗黒の旋律。殊のほかスリリングでクルセイダーズ版「死刑台のエレベーター」とでも呼びたいほどモノクロのハードボイルド路線の逸品。ウイルトンフェルダーと組んだ同路線の「Stix March」も、ヌーベルバーグの佳品で、この2作品はまるであの東宝ハードボイルド路線の中で狂い咲いた傑作「野獣都市」、「狙撃」、「ジャガーは走った」などの系列を彷彿とさせる思わぬ拾い物、まさにレボルバーの中の2発のブリットでありました。
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