ちょっとした映画通であれば、アルバムタイトルの「the thing」を見ればたちどころにあのハワード・オークス監督の「the thing」を思い浮かべるでしょう。邦題「遊星からの物体X」は1982年に鬼才ジョン・カーペンターによってリメイクされて公開されましたから、大方のSF映画ファンならご存知でしょう。
ハワード・オークスの映画が公開されたのが1951年ですから、クルセイダーズの面々が11から12歳というもっとも多感な少年時代、おそらく彼らは、当時評判になったこのSFホラー映画をこぞって鑑賞したのではないでしょうか。といってもこれはあくまでも勝手な推測にすぎませんがネ。
でもこのアルバムジャケットの何やらんエイリアンみたいなデッサンのデザインをみると、どうしてもそうした思いを禁じえないのでありますヨ。
前置きが長くなりましたが、今回のアルバム、タイトル曲「the thing」は文字通りファンキー、聴いているうちに自然に体が動きだし、ジルバでも踊りたくなってくるような気分。でも何ていいますか、あえて言えば早漏のような、強烈なオルガスムに達する直前で思わず射精してしまうような、突然の虚脱感とでも言いましょうか、そんな感覚を随所に感じるのはウーン僕だけでしょうか。ひょっとしたら、そのふいに訪れる虚脱感こそは、「遊星からの物体X」侵入のひと時なのでもありましょうかネ。
今回好きなのは「Para Mi Esposa」、トロンボーンと低音テナーのコンビネーションが抜群、そこへジョーサンプルのリリカルなピアノが巧妙に味付けされてお見事の一品。
ところでこうやって60年代のクルセイダーズの未知の領域を聴いていく作業って、ひょっとしたらここにはとんでもない傑作が眠っているのではないかといった期待感膨らみ、まるで埋蔵金でも探す楽しみにも似た行為ではないかと、最近思うことしきり。
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