毎年、春めいたこの季節になりますと確定申告が始まりますが、決算を間近に控えた会社においても帳簿の整理に余念のないところ。
僕もその例に洩れず休日を返上しての決算作業、途中クルセイダーズの今回のアルバムを聴きながら作業を進めていたのですが、これがなかなか良い。ファンキーなリズムが活性剤となり、思いのほか計算がはかどり、貸借対照表の作成が順調にいくという按配。
とりわけ計算作業に効果覿面なのは、ジョー・サンプルの流れるようなキータッチとウェイン・ヘンダーソンの気だるいまでにゆったりとしたムードで会計ならぬ快計へ手招きする「Blues For Ynayna」、単調な計算作業にメリハリを付けてくれる「Big City」の気持ち昂ぶる活劇ファンク。まるで算盤を弾くような清々しいサンプルの指使い、粘っこい風味を醸し出す2管、そしてフーパーの叩き出すリズムが殊のほか活きが良い活魚ファンクの「This Here」。
クルセイダーズのまったりとした2管編成サウンドの進行が、科目ごとの総計を誤算なくピッタシ感と締めていく速度を助長して、電卓叩いて計上していくのがこれほど心地良いとは、まさにクルセイダーズ・サウンドの思わぬ効用、新発見でしたヨ。
ところでこの貸借対照表はベニスの商人の知恵の結集、その奥義は端的に言って、見えるものの内に見えないものを見るということに尽きると思いますが、さてこそステレオから聴こえる今回のアルバムを、耳に聴こえ、目に見える資産だとすれば、貸方には、見えぬこそすれ炎の魂というファンクの資本がデーンと存在していて、ファンクの魂がサウンド・フローを活性化する仕掛け。これこそ肉体が炎上し、躍動する種明かし。
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