Huanying xinshang Ding Fengzhang de zhuye




 
 
              
原爆行

             土屋竹雨

怪光一綫下蒼旻,
忽然地震天日昏。
一刹那間陵谷變,
城市臺榭歸灰燼。
此日死者三十萬,
生者被創悲且呻。
生死茫茫不可識,
妻求其夫兒覓親。
阿鼻叫喚動天地,
陌頭血流屍横陳。
殉難殞命非戰士,
被害總是無辜民。
廣陵慘禍未曾有,
胡軍更襲崎陽津。
二都荒涼鷄犬盡,
壞墻墜瓦不見人。
如是殘虐天所怒,
驕暴更過狼虎秦。
君不聞啾啾鬼哭夜達旦,
殘郭雨暗飛靑燐。


******

原爆行
                       
   
怪光 一綫  蒼旻
(さうびん)より 下り,
忽然 地 震ひ  天日 昏
(くら)し。
一刹那
(せつな)の間  陵谷(りょうこく) 變じ,
城市 臺榭
(たいしゃ)  灰燼(くゎいじん)に 歸す。
此の日 死する者  三十萬,
生者は 創
(きず)を 被(かうむ)り  悲しみ 且つ 呻(うめ)く。
生死 茫茫
(ばうばう)  識(し)る 可(べ)からず,
妻は 其の夫を 求め  兒は 親を 覓
(もと)む。
阿鼻叫喚
(あびけうくゎん)  天地を 動(どよ)もし,
陌頭
(はくとう) 血流れて  屍(しかばね) 横陳(わうちん)す。
殉難 命を殞
(おと)すは  戰士に 非ず,
害を 被
(かうむ)るは 總(そう)じて 是(こ)れ  無辜(むこ)の民。
廣陵
(くゎうりょう)の慘禍 未だ曾(かつ)て有らざるに,
胡軍 更に襲ふ  崎陽
(きやう)の津(しん)
二都 荒涼として  鷄犬 盡
(つ)き,
壞墻 墜瓦
(くゎいしゃう つゐぐゎ)  人を 見ず。
(か)くの如き 殘虐は  天の怒(いか)る 所,
驕暴 更に 過ぐ  狼虎
(らうこ)の秦。
君 聞かずや  啾啾
(しうしう)たる 鬼哭(きこく)  夜 旦(あした)に 達し,
殘郭
(ざんくゎく) 雨 暗くして  靑燐を 飛ばすを。

*****************


◎ 私感註釈

※土屋竹雨:明治二十年(1887年)~昭和三十三年(1958年)。名は久泰。字は子健。竹雨は号になる。山形県人。大正、昭和前期に漢詩、漢学方面で、幅広く活躍する。

※原爆行:我が民族の怨念を詠ったもの。『□□行』は楽府題に多い。音楽の様式名。後に、楽府詩形式であることを暗示するものとして使われる。『長歌行』、『短歌行』、『蒿里行』、『兵車行』、『公子行』…。なお、『琵琶行』は少し事情が異なり、『少年行』 は別物になる。杜牧の『山行』は全くの別の義。この『原爆行』について、(内容の深刻さからいえば、適切な表現ではないかもしれないが、)表現技法は流麗で卓抜である。千古の絶唱の一。この作品は、杜甫の『兵車行』、佐原盛純の『白虎隊』の影響を受けているか。

※怪光一綫下蒼旻:あやしげな光が一筋、青空から下ってきて。 ・怪光:あやしげな光。 ・一綫:一筋。一本の糸(のように)。 ・蒼旻:〔さうびん;cang1min2○○〕青空。蒼天。

※忽然地震天日昏:不意に大地を揺るがして、空の太陽が暗く陰った。 ・忽然:ふいに。たちまち。 ・地震:「地」が「震」える。「『地』が『震』えて、『天日』が『昏』くなる」という句中の対。 ・天日:大空の太陽。 ・昏:くらい。日がかげってくらくなること。

※一刹那間陵谷變:ほんの極めて短い時間の間に、山河の様子が変わってしまった。 ・一刹那間:ほんの極めて短い時間。ちょっとの間。 ・刹那:極めて短い時間。ちょっとの間。 ・陵谷:丘と谷。孟浩然の『傷山雲表觀主』「歸來一登眺,陵谷尚依然。」では、山や谷といった自然の風光の意で使われているが、白居易の『宿清源寺』では、「虚空走日月,世界遷陵谷。」と、天上に対しての「地上」の意で使われている。

※城市臺榭歸灰燼:都市の建築物は灰燼に帰してしまった。 ・城市:都市。街。 ・臺榭:うてなと高殿。ここでは、「亭臺樓榭」の意で、高殿、御殿、建物群の意使われている。李白の『江上吟』「屈平詞賦懸日月,楚王
臺榭空山丘。興酣落筆搖五嶽,詩成笑傲凌滄洲。功名富貴若長在,漢水亦應西北流。」の用法に同じ。 ・歸灰燼:丸焼けになる。跡形もなく消え失せる。 ・灰燼:〔くゎいじん;hui1jin4○●〕灰と燃え残り。

※此日死者三十萬:この日の死者は、三十万人になる。 ・此日:この日。昭和二十年八月六日。広島に原爆が投下された日。 ・死者三十萬:死者は、三十万人になる。「死者三十萬」は名詞句ではなく、これだけで、文を構成している。

※生者被創悲且呻:生き残った者は、けがをさせられて、悲しみ、同時に呻いていた。 ・生者:生き残った者。 ・被創:けがをさせられる。創傷を負う。 ・悲:かなしむ。動詞の用法になる。 ・且:同時に。かつ。〔A(動詞)+且+B(動詞)〕。 ・呻:うめく。

※生死茫茫不可識:生死は、広くてぼんやりとして、見わけて知ることができない。 ・生死:生きていることと死んでいること。 ・茫茫:広くてぼんやりとしているさま。 ・不可識:認め悟って把握することができない。みわけて知ることができない。

※妻求其夫兒覓親:妻は夫を捜し求めて、子どもは親を捜し求めている。 ・妻:つま。後出「夫」に対応している。 ・求:もとめる。後出の「覓」に、その義は同じ。平仄は異なるが。前者が
で後者が。 ・其:〔き;qi2○〕その。「妻求其夫」「兒覓親」という句中の対があり、「妻求夫」と「兒覓親」の語調を整え、節奏をあわせるために用いている。 ・夫:おっと。 ・兒:こども。 ・覓:もとめる。

※阿鼻叫喚動天地:非常な惨苦のあまり、泣き叫んでの救いを求める(声)は、天地を震わせている。 ・阿鼻叫喚:〔あびけうくゎん;e1bi2jiao4huan4◎●●●〕死後に絶え間なく刀山剣林などで苦しみを受ける地獄のこと。阿鼻叫喚地獄。 ・阿鼻:梵語。不断の責め苦を受ける。八大地獄の一。 ・叫喚:さけびよぶ。どなる。 ・動:どよもす。うごかす。白居易の『長恨歌』に「漁陽鼙鼓
動地,驚破霓裳羽衣曲。九重城闕煙塵生,千乘萬騎西南行。翠華搖搖行復止,西出都門百餘里。六軍不發無奈何,宛轉蛾眉馬前死。」とある。

※陌頭血流屍横陳:街頭には、血を流した屍体が横たわり並べられ。 ・陌頭:〔はくとう;mo4tou2●○〕:東西に通ずる道の上で。街頭で。 ・血流:血を流した…。血の流れた。 ・屍:しかばね。屍体。死体。 ・横陳:横に並べる。横たわり寝る。

※殉難殞命非戰士:国難に際して、生命を落としたのは、戦士ではなくて。 ・殉難:国難に際し生命を捨てて国のために尽くす。 ・殞命:〔ゐんめい;yun3ming4●●〕命をおとす。死ぬ。『終戰の詔勅』「帝國臣民ニシテ 戰陣ニ死シ 職域ニ殉シ(じ) 非命ニ斃レタル者 及(および)其ノ遺族ニ想ヲ致セハ(ば) 五内 爲ニ裂ク」を受けていよう。 ・非:…ではない。

※被害總是無辜民:被害は、いつも罪のない民である。 ・被害:害をこうむる。害を受ける。 ・總是:いつも。いつでも。前記の意で「そうじて これ」と読むべきところ。「すべて これ」と読むよりも、より適切になろう。 ・無辜:〔むこ;wu2gu1○○〕罪のないこと。転じて、罪のない人を巻き添えにする。 ・無辜民:罪のない人。前出『終戦の詔勅』に「加之(しかのみならず) 敵ハ新(あらた)ニ
殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ 頻(しきり)ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ(ぶ)所 眞ニ 測ルヘ(べ)カラサ(ざ)ルニ 至ル」というのを受けている。

※廣陵慘禍未曾有:広島の惨禍は未曾有のことであり。 ・廣陵:広島のこと。 ・慘禍:いたましい災害。 ・未曾有:〔みぞう;wei4ceng2you3●○●〕これまでにまだ一度もなかったこと。

※胡軍更襲崎陽津:外国軍は、さらに、長崎(の港)を襲った。 ・胡軍:えびすの軍。外国軍を貶めて謂う。ここでは、米軍を指す。本来は「征胡の軍旅」の意。戎昱の『逢隴西故人憶關中舍弟』に「莫話邊庭事,心摧不欲聞。數年家隴地,舍弟歿
胡軍。毎念支離苦,常嗟骨肉分。急離何日見,遙哭隴西雲。」とあり、明治・大正・昭和・徳富蘇峰の『時事感懷』に「進駐胡兵颯爽過,滿都齊唱太平歌。隨波逐浪非吾事,滄海橫流竟奈何。」とある。ここでは、「胡軍」という語彙よりも、「胡賊」や「-寇」等がより相応しいが、当時使えない状況下にあったろう。 ・更:その上。さらに。 ・襲:おそう。襲撃する。ここでは、空襲することになる。 ・崎陽津:長崎の港。 ・津:〔しん;jin1○〕(川などの)渡し場。船着き場。

※二都荒涼鷄犬盡:(広島と長崎)の二つの都は、すさまじく、生き物の気配が絶えてしまい。 ・二都:二つのみやこ。ここでは、広島と長崎を指す。 ・荒涼:すさまじい。荒れ果てて寂しい。 ・鷄犬:鶏と犬。人家の建て込んだところで、人と共に生活している小動物で、鶏や犬とはいうものの、それを通じて庶民の平和な営みを表現する。鶏狗。晉の陶潛の『桃花源記』「晉太元中,武陵人捕魚爲業,縁溪行,忘路之遠近,忽逢桃花林。夾岸數百歩,中無雜樹。芳草鮮美,落英繽紛。漁人甚異之,復前行,欲窮其林。林盡水源,便得一山。山有小口。髣髴若有光。便舎船從口入。初極狹,纔通人。復行數十歩,豁然開朗。土地平曠,屋舍儼然,有良田美池桑竹之屬。阡陌交通,
鷄犬相聞。」。これは、人家の建て込んだようすをいう。  ・盡:つきる。死に絶えること。

※壞墻墜瓦不見人:崩れ落ちた壁に、落ちてしまったカワラの廃墟には、人気(ひとけ)がなくなってしまった。 ・壞墻墜瓦:〔くゎいしゃうつゐぐゎ;huai4qiang2zhui4wa3●○●●〕崩れ落ちた壁に、落ちてしまったカワラ。廃墟となったさま。 ・不見人:人気(ひとけ)がない。人がいない。人を見かけない。

※如是殘虐天所怒:このような残虐は、天の怒るところであり。 ・如是:かくのとおり(である)。このように。 ・殘虐:むごたらしい。そこないしいたげる。前出『終戰の詔勅』の青字部分参照。 ・天所怒:天がいかるところである。 ・【所+〔動詞〕】:単音動詞(一字の動詞)の前について、その動詞を名詞化する。「…するところ」。

※驕暴更過狼虎秦:驕って、あらあらしいさまは、虎狼のような秦以上である。 ・驕暴:おごって、あらあらしい。 ・更過:さらに過ぎる。それ以上である。 ・狼虎秦:『史記・秦始皇本紀・第六』「秦王爲人,蜂準,長目,摯鳥膺,豺聲,少恩而
虎狼心,居約易出人下,得志亦輕食人。」と秦の凶暴さをいう。

※君不聞啾啾鬼哭夜達旦:あなたは分からないのか、夜通しで、朝になるまで続く亡者の忍び泣きを(そして)。 *ここの部分は杜甫の『兵車行』「
君不見青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」を蹈まえている。 ・君不聞:諸君、聞いたことがありませんか。詩をみている人(聞いている人)に対する呼びかけ。樂府体に使われる。「君不見」もある。そこでは詩のリズムが大きく変化する。使用法は、七言が主となる詩では「君不見□□□□□□□」とする場合が多いが、必ずしも一定でない。岑参に「君不聞胡笳聲最悲,紫髯綠眼胡人吹。」、李白「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復回。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如靑絲暮成雪。」 顧況「君不見古來燒水銀,變作北山上塵。藕絲挂身在虚空,欲落不落愁殺人。」李白の『將進酒』「君不見黄河之水天上來,奔流到海不復迴。君不見高堂明鏡悲白髮,朝如青絲暮成雪。人生得意須盡歡,莫使金樽空對月。」 前出・杜甫の『兵車行』「君不見青海頭,古來白骨無人收。新鬼煩冤舊鬼哭,天陰雨濕聲啾啾。」、白居易『新豐折臂翁』「君不聞開元宰相宋開府,不賞邊功防黷武。又不聞天寶宰相楊國忠,欲求恩幸立邊功。邊功未立生人怨,請問新豐折臂翁。」などがある。 ・啾啾:〔しうしう;jiu1jiu1○○〕死者の魂が泣く声。悲しげに泣く声。小声で泣く。しくしく泣く。前出・杜甫の『兵車行』紫字参照。 ・鬼哭:亡霊が(しくしくと)泣く。亡霊がひそやかに泣く。「鬼哭啾啾」。 ・鬼:〔き;gui3●〕幽鬼。亡霊。 ・夜:夜(から)。 ・達:達する。およぶ。とどく。 ・旦:あさ。朝。日の出の時。あした。

※殘郭雨暗飛靑燐:崩れ残った建物に夜雨がしとしとと降って、青白い燐光が飛ぶさまを。 ・殘郭:崩れ残った建物。 ・雨暗:(夜に)雨がしとしとと(降り)。 ・飛:(青い燐光が)飛びはじめる。この構文では他動詞、使役的なものとなる。 ・靑燐:青い燐光。屍体が多く放置されたところでは、青い燐光の発することがあるという。





◎ 構成について

韻式は「AAaAAAAAAAA」。韻脚は「旻昏燼呻親陳民津人秦燐」で、平水韻上平十一真(旻人親陳津秦民呻燐)、上平十三元(昏)、去声十二震(燼)。次の平仄は、この作品のもの。

●○●●●○○,(韻)
●○●●○●○。(韻)
●●●○○●●,
○●○○○○●。(韻)
●●●●○●●,
○●●○○●○。(韻)
●●○○●●●,
○○○○○●○。(韻)
○○●●●○●,
●○●○○○○。(韻)
○○●●○●●,
●●●●○○○。(韻)
●○○●●○●,
○○●●○○○。(韻)
●○○○○●●,
●○●●●●○。(韻)
○●○●○●●,
○●●●○●○。(韻)
○●○○○●●●●●,
○●●●○○○。(韻)
平成16. 4.28
       4.29完
       4.30補
      12. 5
      12.12
平成17.11.12
      11.19
平成23. 2.24
平成27.9.16



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